この記事をまとめると
■日本には軽自動車をベースとした超小型モビリティというカテゴリーがある
これからのモビリティのハズがたった3年半で消滅! トヨタC+Podが成功しなかった理由
■国内で販売されているのはトヨタC+podのみだったが2024年夏に販売を終了する
■日本の超小型モビリティはスタート地点を誤りその後もボタンのかけ違いが続いている
日本自慢の軽自動車をベースに超小型モビリティを作るも……
EVシフトが勢いを失い、代わりにハイブリッド車が盛り返しつつある現在。そもそも日本では発電のほとんどか火力なので、EVにしてもカーボンニュートラルにならないという主張もある。でもその前に、大事なことを忘れてはいないだろうか。
そもそもクルマは数ある乗り物のなかでも、ひとりあたりのCO2排出量が多い。原因のひとつが、乗用車の平均乗車定員が平均1.3人であること。
トヨタ・プリウスのWLTCモードでのCO2排出量は71~89g/kmなので、間をとって80g/kmとして、1台に1.3人乗っているとすると、ひとりあたりでは61.5g/kmぐらいになる。一方、JR東日本が発表した2020年度の全路線のひとりあたり平均CO2排出量は18g/kmだ。
それならふたりしか乗れない代わりにボディを小さくしたクルマがあればいい。そういう考えは昔からあって、エンジン車ではスマートやスズキ・ツインなどがあった。ただ、小さな乗り物は短距離移動前提なので、航続距離や充電時間などのEVのデメリットが目立たないいため、最近は電動車が主流だ。
そのためのカテゴリーもある。軽自動車をベースとした超小型モビリティがそれで、最初は自治体などがシェアリングとして運用する認定制度として導入され、その後、一般の乗用車と同じ型式指定も認められるようになった。
唯一の超小型モビリティであるトヨタC+podも間もなく終了
ところがこれまで型式指定を取得したのはトヨタC+pod(シーポッド)だけ。そのC+podも、今年の夏に生産を終了するという。せっかく生まれたカテゴリーなのに、一般ユーザーが買えるモデルがゼロになってしまうわけだ。
昨年11月までのC+podの約3年間の累計販売台数は、約2000台だった。売れなかった理由は、軽自動車の存在もあるけれど、超小型モビリティをその軽自動車をベースに考えてしまったことが大きい。
そのため、型式指定を取得するには軽自動車ほどのレベルではないものの、衝突試験をパスしなければならない。しかもボディサイズはミニカー(原付3/4輪)と同じ全長2.5m、全幅1.3m以下と余裕がない。C+podが166万5000円からと高価になったのは、この成り立ちが大きい。
では海外はどうか。日本が制度設計の参考にもした欧州では、L6eとL7eというふたつのカテゴリーがあるが、大事なのはL1e~L5eは2輪車や3輪車であり、ふたつのカテゴリーはバイクの4輪版という位置付けであることだ。代表格といえるシトロエン・アミの販売台数は、C+pod とほぼ同じ期間で4.3万台と、約20倍にもなる。
左右のドアを共用とするなどしてコストダウンを図りつつ。ポップに仕立てたデザインの力は大きいし、家電量販店での取り扱い、カーシェアリングでの展開など、積極的な姿勢のおかげもあるけれど、日本よりおおらかな制度ゆえに実現した7990ユーロからという低価格も効いているはずだ。
残念ながらアミは日本の超小型モビリティの型式指定を取得することはできないし、逆に日本のカテゴリーが軽自動車の小型版である限り、メーカーがどんなに頑張っても、アミのような安くて楽しい乗り物は生まれてこないだろう。おまけに超小型モビリティのルールが改正される気配もない。
電動キックボードのために生まれたと認識している人が多い特定小型原付は、実際は3輪や4輪も認められていて、コンセプトビークルがいくつか出展されている。これが日本では軽自動車より小さな乗り物というカテゴリーを担うことになりそうだ。
いまさらこんなことをいってもしかたないけれど、日本の超小型モビリティはスタート地点を誤り、その後もボタンのかけ違いが続いていまに至っているというのが、このカテゴリーを見続けてきた人間の正直な気持ちだ。
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