現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 山田宏の[タイヤで語るバイクとレース]Vol.62「震災の大混乱の中、成田空港にたどり着くも……」

ここから本文です

山田宏の[タイヤで語るバイクとレース]Vol.62「震災の大混乱の中、成田空港にたどり着くも……」

掲載 1
山田宏の[タイヤで語るバイクとレース]Vol.62「震災の大混乱の中、成田空港にたどり着くも……」

初めて開幕戦の現地入りを果たせず

連載:山田宏の[タイヤで語るバイクとレース]【独占Webコラム】

ブリヂストンがMotoGP(ロードレース世界選手権)でタイヤサプライヤーだった時代に総責任者を務め、2019年7月にブリヂストンを定年退職された山田宏さんが、その当時を振り返ります。2011年3月、ブリヂストンは翌年からさらに3年間のMotoGPオフィシャルサプライヤーを務めることを発表。そして同じ月、日本ではあの東日本大震災が……。

TEXT: Toru TAMIYA

2010年限りでブリヂストンはF1から撤退していた

ブリヂストンタイヤのワンメイクとなって3年目の2011年、MotoGPではシーズンインに向けてバレンティーノ・ロッシ選手のドゥカティワークスチーム移籍と、ケーシー・ストーナー選手のホンダワークスチーム移籍が、最大の話題となっていました。一方でブリヂストンとしては、すでに翌年(2012年)に向けた行動も開始していました。それというのも、ブリヂストンのワンメイクが決定したとき、その契約期間が3年だったから。つまり2011年が最終年となるわけです。当然、MotoGPを運営するドルナスポーツからは、早い段階から2012年以降の継続に対する意思確認がありました。また、2012年にMotoGPの排気量がそれまでの800ccから1000ccに引き上げられることはすでに決定していたので、活動を継続するのであれば、それに対応するタイヤの開発に着手する必要もあります。

ドルナのカルメロ・エスペレータ会長からは「ブリヂストンが継続の意思表示をしてくれるなら、自動的に契約を更新する」と確約されていましたが、ブリヂストン社内では2010年後半から議論が続いていました。世の中の景気回復が遅れ、メーカーにとっては非常に厳しい時代状況。ブリヂストンは、2010年限りでF1へのタイヤ供給を終了することがすでに決まっていました。しかし、F1とMotoGPをほぼ同時期にやめれば、ブリヂストンに対するモータースポーツのイメージが極端に低減。F1は、ブリヂストンのワールドワイドでのブランドイメージ向上にとても大きく貢献し、技術面での収穫も非常に多大でしたが、MotoGPもファンに対するアピール効果は大きく、結果として販売促進に直結します。

たしかにワンメイク化が決定した際には、「コンペティションではないレースでの活動にメリットはあるのか?」と疑問視する声は社内からも上がりました。しかし実際に活動してみて、ワンメイクでも十分にPR効果は得られると確信。我々がオフィシャルサプライヤーとしてMotoGPのイメージをフル活用できるのに対して、市販製品でのライバル他社は一切使うことができず、これは我々にとって大きなメリットになります。さらに技術的にも、当初考えていたよりも得るものが多かったのです。その結果、ブリヂストンは2012年以降も再び3年間の契約で、MotoGPのオフィシャルサプライヤーとして活動することにしました。

通常、社内の年間予算は前年の10~11月に申請して、11月下旬か12月上旬には承認されます。しかしMotoGPの活動は3年間契約が前提ですから、計上される金額は莫大。社長まで承認のための書類が上がります。そのため書類作成にはかなり時間を要したのですが、無事にすべての手続きを2010年内に終えて、その後にドルナスポーツと契約。そして開幕を直前に控えた2011年3月に、2012~2014年のオフィシャルサプライヤー継続が発表されたのでした。

ロッシとの契約は、大変さも別格!

―― #46バレンティーノ・ロッシ選手は開幕戦カタールGP決勝で7位入賞。

この契約更新は、販売部門やブリヂストンヨーロッパなどからの後押しがなければ成立しませんでした。もちろん我々も、そのための根回しをしてきたのですが、とくに欧州ではMotoGPのステータスは高く、一方でブリヂストンの知名度はまだまだ上げていきたいというところでしたから、十分な理解も得られました。そしてブリヂストンヨーロッパは、さらにMotoGPのイメージを利用するため、ロッシ選手と販促に関するアドバイザー契約を結びました。MotoGPの契約でもある程度はライダーのイメージを使えたのですが、さらに商品広告で活用させてもらったり、アドバイスをしてもらったりしようというわけです。ただし、当然のことながらこの契約はMotoGPに関する活動には一切影響せず、ロッシ選手にだけをMotoGPのレースで特別扱いするようなことはありませんでした。このロッシ選手との契約は、さすが別格のレジェンドとあってとても大変だったのですが、そのことはこのコラムの第44回に書いてあります。あのときは「たしか2009~2010年あたり……」と記載したのですが、正確には2011年のことでした。

―― カタールGPでは1位ケーシー・ストーナー選手、2位ホルヘ・ロレンソ選手、3位ダニ・ペドロサ選手が表彰台に。被災して間もない日本へのエールが送られた。

さて、2011年のMotoGPは3月18(金)~20日(日)のカタールGPで開幕したのですが、その直前、日本は大変な災害に見舞われました。そう、東日本大震災です。震災の3日後、3月14日(月)に私はカタールに向けて出発するつもりでフライトを予約していました。前日までの間に、得られる情報を細かくチェックして計画を練り、通常よりかなり早く、早朝5時に都内の自宅を出発。成田空港へと向かったのですが、計画停電の影響による交通麻痺に巻き込まれてしまいました。在来線などを乗り継ぎながら、普通なら2時間以内のところを3~4時間かけてなんとか空港に到着したときには、私が乗るはずだった飛行機はすでに空の上。仕方がないので翌日便を予約しなおして、空港近隣のホテルを確保したのですが、その直後に会社から出張自粛の連絡が入り、私はまた大荷物を抱えて大変な思いをしながら自宅に帰ったのでした。

あれから10年以上が経ち、唯一思い出せないことは、「なぜあのとき、会社から出張自粛指令が出たのか?」ということ。海外に行くぶんには、それほど影響がなかったように思うのですが、あまり動き回ると危ないからということだったのでしょうか……。いずれにしても、私にとってはMotoGPでの活動中に唯一、開幕戦の会場にいない年となったのがこの2011年でした。

※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

216万円! ホンダ「6速MT&ターボ」採用の「N-ONE RS」に反響多し! 「“反転TURBOステッカー”って渋い」「スポーティでカッコイイ」の声も! 運転楽しそうな「軽ハッチ」に熱視線!
216万円! ホンダ「6速MT&ターボ」採用の「N-ONE RS」に反響多し! 「“反転TURBOステッカー”って渋い」「スポーティでカッコイイ」の声も! 運転楽しそうな「軽ハッチ」に熱視線!
くるまのニュース
〈CES2025〉NVIDIA、自動車向けの取り組み発表 トヨタやコンチネンタルと次世代車を開発
〈CES2025〉NVIDIA、自動車向けの取り組み発表 トヨタやコンチネンタルと次世代車を開発
日刊自動車新聞
【MotoGP】バニャイヤ、2024年のパフォーマンスは「2019年のマルケスと同等だった」と自負見せる
【MotoGP】バニャイヤ、2024年のパフォーマンスは「2019年のマルケスと同等だった」と自負見せる
motorsport.com 日本版
信号待ちで無意味に「ジワっと前に寄せる」ナゾ行為にモヤモヤ 「後続みんな動かなきゃじゃん!」 なぜするのか、交通心理士が一刀両断!
信号待ちで無意味に「ジワっと前に寄せる」ナゾ行為にモヤモヤ 「後続みんな動かなきゃじゃん!」 なぜするのか、交通心理士が一刀両断!
乗りものニュース
2/12申込締切 誰も教えてくれないカーシェア法人ユーザー決裁者の本音~市場の40%を占める最重要セグメントを攻略するシナリオ~
2/12申込締切 誰も教えてくれないカーシェア法人ユーザー決裁者の本音~市場の40%を占める最重要セグメントを攻略するシナリオ~
レスポンス
トヨタ車体が斬新「SUVミニバン」公開して反響多数! ありそうで無かった“ちょうどいい”サイズ!  コンセプトだけど開放感スゴイ「ドア」採用した「クロスバン ギア」とは
トヨタ車体が斬新「SUVミニバン」公開して反響多数! ありそうで無かった“ちょうどいい”サイズ! コンセプトだけど開放感スゴイ「ドア」採用した「クロスバン ギア」とは
くるまのニュース
トヨタ新型「クラウン・エステート」に“2025年春に発売”との新情報! 注目モデルは“レジャードライブ”に使える? 荷室は使いやすい?
トヨタ新型「クラウン・エステート」に“2025年春に発売”との新情報! 注目モデルは“レジャードライブ”に使える? 荷室は使いやすい?
VAGUE
2025年 激変する“原付界隈”をホンダ企業広報が回答
2025年 激変する“原付界隈”をホンダ企業広報が回答
バイクのニュース
判断が間違っていたと証明するだけ……角田裕毅、レッドブル昇格を果たせずも自身の成長確信「重要なのはチームが信頼してくれていること」
判断が間違っていたと証明するだけ……角田裕毅、レッドブル昇格を果たせずも自身の成長確信「重要なのはチームが信頼してくれていること」
motorsport.com 日本版
ディフェンダー、ダカールラリーおよびW2RCへの3年間参戦概要を発表・壮大なアドベンチャーの幕開け!
ディフェンダー、ダカールラリーおよびW2RCへの3年間参戦概要を発表・壮大なアドベンチャーの幕開け!
LE VOLANT CARSMEET WEB
〈CES2025〉ソニー・ホンダ、新型EVの量産第1弾モデル「アフィーラ1」を発表 価格は1400万円から
〈CES2025〉ソニー・ホンダ、新型EVの量産第1弾モデル「アフィーラ1」を発表 価格は1400万円から
日刊自動車新聞
【2024写真蔵トップ10】<第1位>「エアー」と「クロスター」の2タイプでデビューした、ホンダ 新型フリード
【2024写真蔵トップ10】<第1位>「エアー」と「クロスター」の2タイプでデビューした、ホンダ 新型フリード
Webモーターマガジン
ダカールラリーはステージ2終えトヨタのラテガンが総合首位。サインツSr.は車両ダメージにより“終戦”
ダカールラリーはステージ2終えトヨタのラテガンが総合首位。サインツSr.は車両ダメージにより“終戦”
motorsport.com 日本版
レッドブル、バイビットとの年間5000万ドルのパートナーシップを終了
レッドブル、バイビットとの年間5000万ドルのパートナーシップを終了
AUTOSPORT web
実用性と多用途性がハイエンドの快適性と装備と融合。新型「フォルクスワーゲン・タイロン SUV」、いよいよ英国で受注開始
実用性と多用途性がハイエンドの快適性と装備と融合。新型「フォルクスワーゲン・タイロン SUV」、いよいよ英国で受注開始
LE VOLANT CARSMEET WEB
マツダ「ロードスター “35周年記念車”」発売! “匠”仕上げの「上質レッド」×オシャレな専用ベージュ内装を採用! 特別仕立ての「ヴィンテージモデル」受注開始
マツダ「ロードスター “35周年記念車”」発売! “匠”仕上げの「上質レッド」×オシャレな専用ベージュ内装を採用! 特別仕立ての「ヴィンテージモデル」受注開始
くるまのニュース
【東京オートサロン2025】ダイハツがモータースポーツや地域貢献をテーマに7台を出展
【東京オートサロン2025】ダイハツがモータースポーツや地域貢献をテーマに7台を出展
@DIME
日産、2024年の英国ベストセラートップ5に2車種以上入った唯一のブランド
日産、2024年の英国ベストセラートップ5に2車種以上入った唯一のブランド
LE VOLANT CARSMEET WEB

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村