CKデザイン「仔猿」の新型車は、何と50cc 2気筒車だった!
皆さんは30ccのホンダ製汎用エンジンを使った「仔猿」という超ミニサイズなバイクをご存知だろうか?
日本国内だけではなく海外にもオーナーがいるという、ちょっとカルトで独創的なバイクだ(公道走行可能な原付一種)。何しろエンジン以外、車体からタイヤまでほぼフルオリジナルで作られているのだ。
【画像15点】ホンダ モンキーより小さいのに50ccで2気筒!「仔猿50TT」を写真で解説
この仔猿の製作者は、CKデザインを主宰する佐々木和夫さん。
佐々木さんは過去にホンダの朝霞研究所でレーシングマシンの車体設計を行なっており、ホンダ初の2ストローク125ccファクトリーモトクロッサー「RC125M」や、耐久レーサー「RCB1000」(1978年型)などを手がけている。その後、研究所を退職した佐々木さんは、オリジナルバイクや関連商品を製作するCKデザインを立ち上げ、西ドイツの二輪ブランド・HOREXと共同開発したオリジナルマシン「HOREX644 oska」や、仔猿(Osca Z31A Ko-zaru)を製造・販売してきた。
そもそも仔猿は、その名前や形を見ても分かるように、発想の原点はホンダモンキーへのリスペクトであり、モンキーの弟分という位置付けだ。
しかも「小さくて可愛い」だけではなく、しっかり作り込まれた信頼性のあるモデルになっている。マスプロ化、合理化の一途を辿っているような日本のバイク作りの中で、「手作りの少量部品の塊は小さな会社のあがきであり、いまどきそれも面白い」という、物づくりのへの情熱と反骨精神が旺盛な佐々木さんだからこそ、仔猿を作ることができたのだろう──そして今回の仔猿50TT、またこれが面白い。
「少年の頃より世界のジャーナルで『腕時計のよう』と評されたあのエンジンの小さなピストンやバルブを、手に取ってみたいという想いから開発は始まっています。今になってみたら、その素晴らしい技術が手に⼊るわけです。そう考えたら、いつのまにかそのメカニズムのエンジンコンポーネンツを大切に、仔猿を開発している自分がいました。夢中になっている中で、ひとつの回答になるかと思い挑戦したのですが、それが2気筒の形へたどり着いたのです」と佐々木さんは述べる。
ホンダの60年代RCレーサーから発想
「あの小さなエンジン」とは60年代のホンダRCレーサー、それも125cc5気筒や50cc2気筒のことだ。これらのマシンは1気筒あたり25ccだから、今回の仔猿50TTの25cc×2と言う発想はここから始まっているのだ(使用するのはホンダ製汎用エンジンGX25だが、そのボアはRCレーサーとあまり変わらないともいう)。
こうして仔猿50TT(仮称)は2007年頃から設計試作を始め、3年近くに渡ってテストを繰り返して発表するまでに至ったのである。
何しろ25ccの汎用エンジンを2基、タンデム=直列に並べた50ccだ(正確には50.008ccになると言うから登録は原付二種)。
ふたつのエンジンを積むために、フレームもベースの仔猿から新設計だ。前後タイヤは4インチだ。これを「馬鹿げている」と一笑に付すのは簡単なことだ。しかし、そこには前述のような佐々木さんの夢があり、バイクに対する限りなく自由な精神を感じさせるのである。
極めて小さい車体に、タンデムツインのエンジンレイアウトを実現した事の面白さ、奇抜さ、独創性は、大きな存在感と面白さに満ちているのだ。
今のところ、最高出力は2.2ps/7500回転、車重は23.5kgで、その加速は予想以上に小気味良く、その排気音も2気筒のそれだから、想像以上の仕上がりに思わず笑ってしまう。前後のエンジン駆動はベルト連結で、もともと使用するエンジンには遠心クラッチが内蔵されているので、どちらか1気筒だけでも走ることができる。
仔猿50TTは400~500kmのテスト走行を済ませているという。
「最初は2気筒で元気良く走る感じでしたが、途中で1気筒にしてみたら案外スムーズだったので『これは25ccのツアラーではないか』と思いました。排気音も静かで、『安全と環境』はホンダが古くからテーマとしていることなので、やっぱりそこで学んだことが軸にあるのでしょうね。仔猿は女性がパッと見て『可愛い』と言われることが多いので、バイクに対して優しいイメージを築いていければいいなと。世のお母さんたちが『うちの子供がバイクに乗ってもいいかな』と、考えてくれるようになると良いですね」
現状、仔猿50TTは受注準備中で、購入者が自分で組み立てるキット販売になるそうだ。完成までの時間は、メカに詳しい人で30時間以上だとか。
予定販売価格は税抜で99万9000円(少量生産だからコストがかかる。たくさん売れれば安くなる可能性もあるだろう)。それを高いか安いか判断するのは各々の基準があるだろうが、そこに佐々木さんの夢を感じて同調できるのなら、それは自分に夢に対する投資のようなものではないだろうか。
小さいながらも、メカ好き、バイク好きが「なんだこれは!?」と目を丸くするであろう仔猿50TT。実は、まだたった一台しかないこの試作完成車が、2022年3月25日~27日開催の東京モーターサイクルショー・八重洲出版の出展ブースに展示されるので、興味のある方はぜひ。
■CKデザイン 仔猿50TT 主要諸元
エンジン:空冷4サイクル縦置き2気筒(タンデムツイン)OHC2バルブ
総排気量:50cc
最高出力:2.2ps/7500rpm
クラッチ形式:自動遠心式
燃料タンク:0.75L
始動方式:リコイル式
全長:860mm
全幅:430mm
全高:625mm
ホイールベース:599mm
シート高:450mm
乾燥重量:23.5kg
タイヤサイズ:前後とも90/70-4
価格:予価99万9000円で受注準備中
レポート●関谷守正 写真●関谷守正/上野茂岐 編集●上野茂岐
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みんなのコメント
車両、特にトラックなど大型車両から見えないモノがチョロチョロしてたら危険でしょうが無い。
一時問題になったマリカートと同じ。