フロントドアの三角窓を廃止していたのが大きな特徴
2001年にブルーバードシルフィに交代する形で、40年近いモデルライフを終えたブルーバード。かつては日産の基幹モデルとして、トップのトヨタを猛追する原動力となっていました。なかでも中興の祖となったのが、1967年にスタイリングも一新し3代目として登場した510系でした。今回はこの510系を振り返ります。
中古車をベースにニスモが専用チューニング! ブルーバードに用意された「スーパーバージョンS tuned by NISMO」とは
L型エンジンの4気筒版を搭載し4輪独立懸架を採用した期待のモデルとして登場
ブルーバードの初代モデルは、1959年に登場した310系ですが、さらに遡っていくと1955年から1959年まで生産販売されていたダットサン110型セダン/210型セダンがあり、310系はその後継モデルととらえることもできます。
いずれにしても1966年にサニー(10型)が登場するまでダットサンの、そして日産のエントリークラスを担当してきたモデルでした。310系ではラダーフレームにセミモノコックボディを架装するという成り立ちと、そのスタイリングこそ210系の正常進化に留まっていました。ですが、フロントサスペンションが初めて独立懸架となり、エンジンも210型から継承した988cc直4プッシュロッドのC1型に加えて、ストロークを伸ばして1189ccとしたE1型がラインアップに加えられていました。
さらに1963年に登場した2代目ブルーバード(410系)では、搭載エンジンやサスペンションなど各部のメカニズムは踏襲されていましたが、モノコックフレームが初めて採用され、ボディスタイリングも一新。
やがて1200ccモデルにツインキャブでチューンし、最高出力を65psに引き上げた1200SS(スポーツセダン)も登場しました。さらに1600ccエンジンを搭載し、フロントにディスクブレーキを備えた1600SSS(スーパースポーツセダン)も追加投入されています。
その410系が1967年にフルモデルチェンジし、登場したのが3代目のブルーバード(510系)でした。スーパーソニックラインと呼ばれる直線的なデザインに一新されたボディは、ベンチレーターシステムを強化したことでフロントドアの三角窓を廃止していたのが大きな特徴でした。
メカニズムも一新され、エンジンは1965年にセドリックに搭載されてデビューしていた、2L直6OHCのL20エンジンをベースに4気筒化したL13を採用。このL13は、単に直6のL20エンジンから2気筒を切り落としただけでなく、6気筒ながら4ベアリングだったL20に対して、L13は4気筒で5ベアリングとなっており、4気筒化に際しては大幅な改変が加えられていたことが分かります。
このL13は1296cc(83.0mmφ×59.9mm。最高出力72ps)で、同時にストロークを伸ばして1595cc(83.0mmφ×73.7mm)とし、ツインキャブでチューニングしたL16(最高出力はレギュラーガソリン仕様で100ps、有鉛ハイオク仕様で105ps)を搭載した1600SSSも登場しています。
ちなみに、L13を搭載したベースグレードは、その後L14(1428cc=83.0mmφ×59.9mm。最高出力85ps)を搭載した1400シリーズにアップグレード。1600SSSもL18(1770cc=85.0mmφ×78.0mm。最高出力はツインキャブ仕様で110ps)を搭載した1800SSSに移行しています。
シャシーに関してはサスペンションを一新してフロントにマクファーソンストラット式、リヤにセミトレーリングアーム式と、4輪独立懸架を採用していたのが最大のエポックとなっていました。当初は4ドア/2ドアセダンと5ドアのワゴン/バンがラインアップされていましたが、最大のライバルだったトヨペット・コロナ(3代目のRT40系)のラインアップへ1965年に追加された2ドアハードトップに対抗するため、1968年には2ドアクーペも追加。3連リレー式シーケンシャルウインカー=流れるリヤウインカーが大きな話題になりました。
モータースポーツにも積極的に参戦しサファリラリーで総合優勝!
ブルーバードは歴代モデルがモータースポーツで脚光を浴びたクルマとしても知られています。510系の3代目で言うなら、もっとも有名だったのはサファリ・ラリーでの活躍でしょう。1968年には2代目の410系がクラスで1-2フィニッシュを飾って期待が高まるなか、1969年には、これがデビュー戦となる3代目の510系が登場します。
日産のワークスチームだけでなく、地元のプライベートチームも含めて多くのブルーバードが出走し6台が完走。最上位は総合3位でふたたび1600ccクラスを制しています。そして翌1970年、ブルーバードSSSは期待通りの活躍を見せることになりました。
エドガー・ハーマン組とジョギンダ・シン組が見事1-2フィニッシュを飾るとともに、トップ10フィニッシャーの4台を占める安定した力を見せ、総合優勝とクラス優勝、チーム優勝の三冠を果たしたのです。続く1971年には主戦マシンがブルーバードSSSからフェアレディ240Z(参戦車両名は、輸出名のダットサン240Z)に変更されています。
じつはブルーバードSSSとフェアレディ240Zは、ある意味兄弟の関係にあって、ブルーバード1600SSSが搭載していたL16 エンジンとフェアレディ240Zが搭載していたL24エンジンは、ともにボア×ストロークが83.0mmφ×73.7mmで共通しており、ピストンやバルブなどエンジンのチューニングパーツの多くが共用できたのです。
このようにして、主戦マシンとして戦ったのは1969年と1970年の2回のみでしたが、1969年には総合3位/クラス優勝。1970年には総合優勝/クラス優勝と、見事な戦績を残しただけでなく、1971年から主戦マシンとなった240Zにさまざまな技術が継承されていたのです。
国内においても数々のレースで活躍した
ブルーバード1600SSSの活躍はラリーだけに留まることはありませんでした。国内レースでは、1964年に行われた第2回日本グランプリのサポートレース、TIVレースで2代目(410系)の1200SSが上位を独占していましたが、これに続く3代目(510系)の1600SSSも多くのレースで活躍しています。
1968年の8月に鈴鹿で行われた全日本鈴鹿自動車レースでは、トヨタ7やフェアレディ2000と混走となったIIクラスレースにおいて砂子義一選手が総合7位/クラス優勝。また1969年の3月に行われた全日本鈴鹿自動車レースでも、ポルシェ・カレラ6などとの混走レースとなりましたが、黒澤元治選手が総合4位/クラス優勝を飾っています。
ただし日産に吸収合併される前のプリンスにはスカイライン2000GTがあり、トヨタにはツインカムエンジンを搭載した1600GTがあり、と手強いライバルも数多く、その活躍にはやはり限りがありました。さらにプリンスを吸収合併したあとは、新型スカイラインに追加投入されたGT-Rが日産の主戦マシンとなったことから、活躍の場にも限りが出てきたのが実情でした。
* * *
それにしても当時のツーリングカーレースは、ブルーバード1600SSSはもちろんですがスカイライン2000GTやスカイラインGT-R、そしてトヨタ1600GTと“箱形”のレースマシンのオンパレードで、まさにハコ車レースとなっていました。それは激しいバトルの中に長閑さもあった良き時代でした。
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みんなのコメント
「兄貴達の車」って感じです
自分の世代で「買える」のは610か810で、「欲しい」のは910でした