ホンダスピリッツと聞いて思い浮かべるクルマは何だろうか?歴代タイプR?NSX?それともS2000?多くの人がスポーツモデルを思い浮かべるかもしれない。しかし、スポーツモデルと言われることが少なくても、ホンダスピリッツに溢れた1台がある。それが初代インサイトだ。初代インサイトから感じるホンダスピリッツな部分を紹介していく。
文:西川昇吾╱写真:ベストカー編集部、ホンダ
まさに枠にハマるな!? ホンダのポエムが具現化した尖りすぎたエコカー!! 初代インサイトを解説
■開発目標は「低燃費性能No.1」
令和になっても時代が追いつかない斬新すぎるデザイン
初代インサイトは1999年にホンダ初のハイブリッド車として登場した。その開発目標は極めてシンプルで「低燃費世界No.1」であった。
1997年に「21世紀に間に合いました」のキャッチフレーズで登場した、世界初のハイブリッド車であり、ライバルであるプリウスの28.0km/L(10・15モード)を超えることが最大の目標であったと言えよう。
トヨタにハイブリッドという技術で先行を許してしまったのならば、単純にハイブリッドを販売するだけでなく、それを上回る性能を記録しなければ意味がない。そんなホンダスピリッツが溢れた開発目標とも言える。
■軽量で低フリクションなパワーユニット
IMAは後のCR-ZやFITにつながるハイブリッド技術となった。
低燃費性能のキモとなるのはパワーユニットだ。当然ハイブリッドシステムが採用される訳だが、ここにはエンジン性能も高めたシステムをホンダは導入した。
インサイトに採用された1.0LエンジンはリーンバーンVTECエンジンで、燃焼効率を高めているのはもちろんフリクション低減も徹底的に追及。そして、「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」というホンダのM・M思想から得たノウハウが生きたポイントとして、エンジンを当時世界最軽量のものとしコンパクト化にも成功している。
この当時としては先進的なエンジンに「薄型DCブラシレスモーター」と「Ni-MH(ニッケル水素)バッテリー」で構成されたPCU(パワーコントロールユニット)が組み合わされたのだ。
エンジン負荷が大きい発進や加速時にはモーターが補助し、減速時にエネルギーを回生して燃費性能を高めていた。
■空気抵抗を極限まで減らすことから始まったデザイン
未来感溢れるデザインだ。
また、なるべく抵抗を少なくするために空力性能にも拘った。通常のクルマのデザインであればコンセプトなどを基に、イメージスケッチなどをデザインに起こして、クレイモデルを製作。徐々に実用性や空力性能、冷却性能などを配慮した現実的なデザインになっていくのが一般的だ。
しかし、インサイトは違った。空気抵抗の少ない理想的なフォルムを基にクレイモデルを試作。この試作デザインを繰り返し検証していく、視界やヘッドクリアランスなどの実用性脳を配慮したデザインに仕上げていったのだ。
空気抵抗ありきでスタートしたデザインであり、通常のクルマのデザインとはアプローチが異なるのだ。プリウスが4ドアセダンだったのに対して、初代インサイトが2シータークーペだったのは、空気抵抗を極限まで減らしたいがためだった。
■NSXよりも進んだアルミボディを採用
そして、最もホンダスピリッツに溢れていると感じるポイントが軽量化だ。NSXと同じアルミボディが採用されているのだ。単純にアルミを使用するだけでなく、複雑な断面形状の成型をすることができる押し出し成形材や成形の自由度が高いダイキャスト成形材など複数の成型方法を採用していて、NSXよりも進んだアルミに関する技術が使われている。
このような技術を用いることで、超軽量を実現。当時のシビックよりも曲げ剛性、ねじり剛性共に高く仕上げつつも、820kgと超軽量な車重を実現していたのだ。
様々な部分が「やりすぎ」と感じる初代インサイト。そのすべては低燃費世界No.1のために実施されたことだ。シビックタイプRがニュルブルクリンクでFF車最速を目指すように、初代インサイトは燃費性能で世界一を取るために開発された。その単純明快なコンセプトと目標はスポーツカーに通ずるところがあると言える。まさにホンダスピリッツに溢れた1台なのだ。
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みんなのコメント
燃費だけでなくタイムも出せる、凄い車でした。
シンプルなパラレルハイブリッドに軽量素材をふんだんに使って構築した前投影面積減らしたペッタンコな未来的クーペスタイル
ショーカーなら掃いて捨てるほどある要素ばかりで、実際に売ったのは凄いけども、売ったの偉いってならGMのEV1って存在あったし
むしろエコカーマニアでも見たことないような動力分配装置のシリーズ・パラレルハイブリッドを実用性の高い背高なセダンボディに押し込んで市販した初代プリウスの方が遥かに型破りに思った