これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第72弾 新型フェアレディZのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。
新型フェアレディZの開発責任者を務めた山田克夫は、幼い頃からクルマが好きで、大学時代に入部した自動車部で古いクルマを整備してドライブを楽しみ、日産自動車へ就職した。以来、トランスミッションの開発を手掛けてきたが、初めて一台のクルマの開発をまとめるとなり、その車種がフェアレディZと聞いた時、素直に感動したという。クルマを乗り回すのが好きなだけでなく、人一倍負けず嫌いだったため、フェアレディZを世界一のスポーツカーにすることが自分の仕事なのだと考えた。
開発ストーリーダイジェスト:日産・スカイライン「本質だった“走り”の性能を高めなくてはならない」
山田は、「フェアレディZは純粋なスポーツカーとして育てられ、古き良き時代のスポーツカーとしての伝統を受け継いでいる。しかし、いつの間にかスポーツカーとしての本質から外れた部分が増えたのではないか……そんな反省から、今回のモデルに関しては私自身が納得のいくものにすることを主眼にしました」と語る。そんな想いを込めて、新型は「興奮を与えるクルマ」がテーマとして掲げられた。
まず考えたのはスタイリングだったが、薄いフロントノーズに合わせた60度スラントのヘッドランプについて、光軸の問題からボディ設計と電装の担当者は当初「こんなものできっこない」と主張したという。
次に走行性能だ。「フェアレディZを世界一のクルマにする」といったが、それは決してスピードだけに限ったことではない。限界付近の性能は高いが、普通の車速域では帰って運転性が問題になることがある。フェアレディZはスポーツカーといっても日常的な使用はなおざりにしないと考え、バランスの取れたスポーツカーという意味で世界一を追求した。
そして三つ目の興奮が、乗り込んでシートに身を委ねた時、明らかにスポーツカーに乗ったなという感動が盛り上がるような室内の雰囲気だった。
とりわけ、走行性能に対するこだわりは強く、世界中の良質なスポーツカー(ポルシェやフェラーリなど)を買って、テストコースやサーキットで走らせて徹底的な調査を行なった。スポーツカーは、サイズや用途が限定されるクルマと違って制約がない反面、エンジンの置き方をはじめ、駆動方式などどこまで突き詰めればいいのかを見極めるのが難しかったという。
そういった過程を経る中で、フェアレディZには何らかの操縦テクニックが発揮できる場を残したかったとしてFRが選ばれた。また、山田自身、実験に足繁く通い、あらゆる部署の人間にデータによる判断だけでなく、その時人間がどう感じるか?を大切にして修正を加えていったという。その結果、フェアレディZは操縦性を高めるためにボディサイズが先代から小さくなるという従来のモデルチェンジに対する既成観念を壊しただけでなく、エンジンとトランスミッションは既成のものをちょっと手直しするという便宜的な手段は採用されなかった。
エンジンは吸排気系の見直しのほか、ヘッドとピストン、ブロックなどほとんどを設計し直した。「レパードに搭載されているエンジンと型式は同じですが、性能アップのための改良点は数限りない」という。さらに、ドライバーが意のままにコントロールできるようにスカイラインに続いてスーパーHICASと前後マルチリンクサスペンションが採用された。それらについて山田は世界一という高い志に近づくなら問題はないと語る。その代わり、予算は随分オーバーして役員から怒られたそうだ。
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みんなのコメント
これふくめ、32Rやシルビアとかシーマとか当時の日産は乗りたくなる車が多種ありましたね。
内装見るとさすがに時代を感じさせるが、近年のはステアリングやインパネ周り見ても、ロクに使いもしないないスイッチだらけ。
雑然としてるから、これに気を取られてかえって事故になるケースもあると思う。
32はバブル期に出た車だが、重要度の高いポイントに集中的に力を注いでいて、そういう意味では贅沢だが余計な金はかけてないと思われる。
この頃の日産のデザインはどれも良かった。