日産は2010年に量産電気自動車として初代(先代)リーフを発売して海外でも注目された。2017年には、2代目の現行リーフに一新され、機能をさらに向上させている。
電気自動車は、二酸化炭素の排出量や化石燃料の使用量を抑えるうえで重要な技術とされ、日産はe-POWERと併せて商品展開の中核に据えている。
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この流れを受けて、2020年7月15日に概要を発表したのが日産アリアだ。リーフと同様、エンジンを搭載しない純粋な電気自動車だが、モーター駆動の特徴を運転する楽しさにも生かしている。各種の制御やメカニズムを進化させた。
なおアリアの発売時期は2021年の中盤とされ、現時点で披露されたのはプロトタイプ(試作車)だが、開発者は「ほぼこの状態で市販される」という。
世界の自動車メーカーが電動化に舵を切っているなか、量産EVで扇動する日産の新世代EVのアリアの注目度は絶大だ。そのアリアについて紹介していく。
文:渡辺陽一郎/写真:NISSAN、中里慎一郎、平野学
【画像ギャラリー】コンセプトカーがほぼそのまま市販!! 世界が注目する日産期待の新世代クロスオーバーEVを細部にわたってチェック!!
CX-5に近いサイズのクロスオーバーEV
日産期待の新世代クロスオーバーEVのアリア。イメージカラーは写真の『暁』と呼ばれるカッパー(銅)とブラックのツートーン
こちらが東京モーターショー2019で公開されたアリアコンセプト。完成度の高さが話題になっていたが、細部を除きほぼそのまま市販されるのは驚き
ブランニューカーのアリアは、SUVのカテゴリーに属する。
サイズは全長4595×全幅1850×全高1655mmとされ、既存のSUVならマツダCX-5の4545×1840×1690mmに近い。SUVのミドルサイズに当てはまる大きさで、斜め後方の視界はよくないが、小回り性能などは満足できる。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2775mmだから、全長の割に長く、CX-5の2700mmも上回る。そのためにアリアの外観を横方向から見ると、4輪がボディの四隅に配置されて踏ん張り感も伴う。
全長4595mmのミッドサイズSUVながら、2775mmのロングホイールベースとしたことで居住性の向上と、視覚的に力強さを付加している
フロントマスクには日産車を象徴するVモーショングリルが備わり、精悍な印象だ。
タイヤはSUVらしく大径で、19インチ(235/55R19)と20インチ(255/45R20)をグレードに応じて使い分ける。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は175~185mmで、乗員などの荷重が加わると約150mmまで下がるが、悪路のデコボコや駐車場と車道の段差も乗り越えやすい。
4つのパワートレーンラインナップで幅広いニーズに対応
グレード構成は多彩だ。
駆動方式は、前輪駆動の2WDと、後輪にもモーターを備えた4WDがある。
駆動用リチウムイオン電池の容量は、2WDと4WDのそれぞれに、65kWhと90kWhを用意した。
FF、4WD、容量の違うバッテリーにより、合計4つのスペックのパワーユニットが与えられる。予算、使用状況に合わせてチョイスできるのはうれしい
2WDの65kWh搭載車は、最高出力が160kW(218ps)、最大トルクは300Nm(30.6kgm)だ。
0-100km/h加速は7.5秒で、最高速度は160km/hになる。WLTCモード走行による航続可能距離は最大450kmだ。
リーフにも2種類のリチウムイオン電池が用意され、大きいほうは62kWhになる。この最高出力は160kW(218ps)、最大トルクは340Nm(34.7kgm)だから、後者の数値はリーフが少し上回る。航続可能距離は最大458kmだから同等だ。
リアコンビランプは左右に一直線に走るLEDで視認性の向上と先進性をアピール。最低地上高もたっぷりとあるので、走破性にも期待できる
アリアの車両重量は最も軽い2WDの65kWh搭載車でも約1900kgだから、リーフに62kWhを搭載したe+Gよりも220kg重い。
そのためにアリアのリチウムイオン電池容量は、リーフの62kWhを少し上まわる65kWhだが、航続可能距離は同等だ。
開発者は、「アリアは背の高いSUVながら空力特性に優れ、車両重量の割に電力消費量を抑えられた」という。
*1 航続可能距離は認証前の日産社内測定値であり、今後変更となる可能性がある
新開発モーターの採用で効率アップ
2WDのリチウムイオン電池容量を90kWhに拡大したグレードは、最高出力が178kW(242ps)、最大トルクは300Nm(30.6kgm)になる。
0-100km/h加速は7.6秒で、最高速度は160km/hだ。WLTCモードによる航続可能距離は、最大で610kmまで伸びる。駆動用電池の容量、航続可能距離ともに、65kWh仕様の1.4倍だ。
アリアの目玉である4WDはe-4ORCE(イーフォースと読む)と命名された。FFモデルと4WDの外観上の違いはリアに装着されるこのエンブレム程度
4WDの65kWh搭載車では、後輪側のモーターが加わることで最高出力は250kW(340ps)、最大トルクは560Nm(57.1kgm)に向上する。
0-100km/h加速は5.4秒で、最高速度は200km/hだ。後輪側にモーターを加えたことによる加速性能の向上は大きい。航続可能距離は最大430kmだから、同じ65kWhのリチウムイオン電池を搭載する2WDの450kmに比べて20km短い。
それでも大幅に短くならない理由として、永久磁石を使わない誘導モーターを利用した効果が大きい。
アリアは9種類のツートーンと5種類のモノトーンをラインナップし、仕向け地によってチョイスされるもよう。レッドのボディカラーもスポーティでいい
制御方法として、アリアの4WDでは、通常の走行では前輪のみを駆動する。この時に従来の永久磁石を使うモーターでは、エネルギー損失も大きいが、誘導モーターなら2WDとほぼ同じ条件で走行できる。
必要な時だけ4WDの安定性と高出力を得られるわけだ。また減速時の回生充電(モーターが減速エネルギーを使って発電/充電すること)を後輪でも行うから効率が向上した。
トップグレードの動力性能はスポーツカーを凌駕
アリアで最もパワフルなのは、4WDの90kWh搭載車だ。動力性能は4WDの65kWh搭載車以上に高く、最高出力は290kW(394ps)、最大トルクは600Nm(61.2kgm)に達した。
0-100km/h加速は5.1秒に向上して、最高速度は200km/hだ。航続可能距離は最大580kmだから、長距離移動も十分に可能になる。
e-4ORCEはリアにもモーターが搭載される。写真はe-4ORCEのリア部分の下回り。新開発のプラットフォームによる乗り味も楽しみ
0-100km/hの発進加速タイムが5秒台ならスポーツカー並みで、しかもアリアはモーター駆動だから瞬発力が特に高い。
巡航中にアクセルペダルを一気に踏み増した時の駆動力変化は、ガツン!と蹴飛ばされた感覚で、0-100km/hが5.1秒のガソリンエンジンを搭載するスポーツカーを上回るはずだ。
緻密な制御がもたらす無限の可能性
アリアはカーブを曲がる性能も高い。2WDを含めて4輪のブレーキが独立制御され、必要に応じて内側をブレーキングすることにより、車両を積極的に回り込ませる。
クーペルックのクロスオーバーSUVのアリアは、デザインコンシャスながら実用性の高さも大きな魅力で、リアハッチは大きく開き使い勝手に優れている
また4WDはモーターを前後に独立して搭載するから、駆動力の配分も自由自在だ。
例えば峠道などを走る時、後輪の駆動力を高めて前輪は低くすれば、後輪駆動車のような曲がりやすい挙動を作り出せる。
そこにブレーキの4輪独立制御も加えると、ステアリング、アクセル、ブレーキ操作に忠実な走りを行えるわけだ。
前述のようにモーターは機敏に反応するから、エンジンが駆動するクルマとは違う綿密な駆動力制御も可能になった。この度合いは4WDになると一層深まる。
フロントグリルには組子パターンがあしらわれている。この組子パターンは、内装などいろいろな箇所に用いられているアリアの重要なキーワードだ
充電性能も大きく進化
プラットフォームは新開発され、サスペンションは前輪がストラット、後輪はマルチリンクだ。駆動用リチウムイオン電池は床下に搭載されるから、低重心になって走行安定性を確保する上でも有利になった。
アリアをSUVにした背景には、床下に駆動用リチウムイオン電池を搭載しやすい事情もあった。アウトランダーPHEVなども同様だ。
充電の所要時間は、残量がほとんどない場合、普通充電では65kWhが12時間、90kWhは17時間を要する。電池容量が大きいため、充電に要する時間も長い。
ラゲッジ容量は2WDと4WDでは若干違う。リアシートを使用している状態での容量は、2WDが466Lに対し4WDは408Lとなる
急速充電を使うと、30分で375km(WLTCモード)を走行可能な充電が行える。ちなみに以前は、急速充電を繰り返すとリチウムイオン電池の劣化が早まるから、普通充電も併用するよう推奨された。
アリアではこの点が大幅に改善されている。PTC素子ヒーターやヒートポンプシステムを利用して、リチウムイオン電池の温度を常に調節しているから、急速充電に対する耐久性も向上した。
日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住むから、現実的には、自宅に普通充電設備を持てないユーザーも多い。
従って集合住宅の入居者が電気自動車を所有すれば、必然的に販売店などの急速充電器に頼ることになる。リチウムイオン電池の温度調節が正確に行われて急速充電器を頻繁に利用しやすくなれば、多くのユーザーが電気自動車を所有できる。
リアシートは分割可倒式となっていて、積載する荷物に合わせて自在にアレンジできる。2列目をすべて倒せばかなりの容量になる
日本の市場では、急速充電の不安を解消するのは大切なことだ。
また従来以上に短い時間で充電を可能にする最大出力150kWの急速充電器も、2021年度には公共性の高い場所に設置されるよう作業を進めているという。
プロパイロット1.0と2.0をラインナップ
装備では運転支援機能が注目される。プロパイロット1.0と、スカイラインが採用した手離し運転も可能なプロパイロット2.0の2種類を用意する。
アリアでは準天頂衛生システムからの高精度測位情報を受信して、自車位置を従来以上に正確に把握することも可能になった。
スカイラインで初搭載されたプロパイロット2.0と1.0の両方をラインナップするのは、ユーザーの選択肢を増やすことと価格を抑えるのが目的
プロパイロット2.0搭載のモデルはルーフエンドのシャークフィンがダブルになる。それに対しプロパイロット1.0はシングル
先進のコネクテッド技術も満載
内装も先進的だ。インパネには左右2つの大型液晶パネルが備わり、多彩な情報を表示する。左側の画面に表示しているカーナビの地図情報を、スワイプ操作で右側(ステアリングホイールの奥側)の液晶パネルに移動させることも可能だ。
通信機能も備わり、スマートフォンで離れた場所から目的地を設定したり、ドアロックなどの確認をすることもできる。
アリアのインパネはコンセプトカーを思わせる先進性がある。この2つの大型のパネルにはさまざまな情報が表示される。最新のコネクテッド技術も満載
電気自動車の使い勝手も改善された。カーナビに目的地までのルートを設定すると、電力消費量も計算され、充電の必要がある時には充電器の設置されたサービスエリアなどを案内してくれる。ルート案内に充電も含めたわけだ。
内装はインパネにステッチを入れるなど、各部を上質に仕上げた。木目調パネルの使い方はシンプルで、リラックスできる雰囲気を感じる。
インテリアは素材、デザインにこだわりを見せる。シートも疲労軽減などドライバー、乗員に優しい設計がされている
2775mmのロングホイールベース採用の恩恵としてリアシートの居住スペースが広くなっている。床下にバッテリーを搭載しているが着座位置など不自然さはない
居住空間は広く、後席の足元空間にも余裕がある。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半から3つ程度の空間を確保した。ホイールベースが長く、有効室内長を長くできたためだ。
センターコンソールにはQi規格対応のワイヤレスチャージャーが搭載されている。最新コネクテッド技術を満載しているだけにスマホは必需品
リーフと大差ない500万円程度からの価格設定が魅力
価格の詳細は未定だが、2WDに65kWhのリチウムイオン電池を搭載する仕様は、500万円少々になるという。
リーフに62kWhを搭載したe+Gが499万8400円だから、新しいプラットフォームを採用して走行安定性、乗り心地、居住性などを引き上げたことも考えれば割安だろう。
世界中の自動車メーカーで最も電気自動車を量産している日産が満を持して登場させる新世代クロスオーバーEVのアリアへの期待感は大きい
内外装の違いは、タイヤに19インチと20インチの2種類があり、4WDではオーナメントが付く程度だ。
前述の情報表示機能も、全車に標準装着されている。内外装を見ただけではグレードの違いがわかりにくく、2WDの65kWh仕様でも高い満足感を得やすい。
最上級の4WDに90kWhのリチウムイオン電池を搭載したグレードは、35万円相当のプロパイロット2.0も含めて、車両価格が700万~750万円になると予想。
上級グレードはこのほかにも複数の快適装備を加えるから、アリアの価格帯は、500万円少々から800万円ということになるだろう。
いよいよ日産の新しいイメージリーダーカーが誕生する。「技術の日産」にも相応しく、日産が元気を取り戻す上でも大切な役割を果たすだろう。
アリアはエクステリアから新たな時代の到来を感じさせてくれる。2021年中盤の正式デビューがアナウンスされているが、さらに開発が進められる
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500万なんてとてもとても
まあとにかくお金貯めよっと