ウイリアムズの新人フランコ・コラピントがローガン・サージェントの代役としてシーズン中盤から印象的な走りを見せたことで、2025年もグリッドに留まるべきだという声が多く挙がっている。
ただ、ウイリアムズはコラピントがF1デビューのチャンスを掴む前から、来季はアレクサンダー・アルボンとカルロス・サインツJr.というコンビで挑むことを決定しており、コラピントが滑り込む隙はないが、チーム側はコラピントにF1シートを提供するべく支援を行なっている。
■角田裕毅、ようやく得られそうなレッドブルF1テストは「とてもいいチャンス」一方でこれまでのテスト無しには悲しい“慣れ”も
ここ数週間、強まる憶測はレッドブル陣営加入の路線。シニアチームで苦戦が続くセルジオ・ペレスへのプレッシャーが高まる一方で、同陣営の若手ドライバー育成プログラムは混沌としている。
果たしてコラピントのレッドブル陣営加入は実現するのか? motorsport.comのライター陣の見解をお届けする。
フェルスタッペンと組むことだってクレイジーではない- Alex Kalinauckas
コラピントはF1に参戦してまだ3ヵ月も経っていないが、なんという日々を過ごしてきたのだろうか。FIA F2でほぼ無名だったドライバーが、2025年にレッドブルのマックス・フェルスタッペンのチームメイト候補と噂される……レッドブルのドライバーらしいド派手さだが、それほど突飛なことではない。
まず、レッドブル陣営はこのような動きを本気で考えている。レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、ジュニアプログラムのために姉妹チームのRBからリアム・ローソンを昇格させたいと考えている一方、チーム代表のクリスチャン・ホーナーはコラピント獲得を目指している。
以前は勝利をほしいままにしていたレッドブルのマシンは今、見るからに最強とは言えない。ペレスの代わりにコラピントをシニアチームに加えれば、修復の時間を稼ぎ、ローソンがF1で輝くチャンスも残される。
レッドブルがコラピントを獲得する際に乗り越えなければならない大きな問題は、ウイリアムズからの提示額。噂では2000万ドル(約31億円)と言われており、レッドブルはウイリアムズからのレンタル契約には興味がないようだ。
ただ、仮に契約が成立すれば、レッドブルにとってはかなりのプラス要素がある。
今年はペレスが2022年や2023年のようにレースで勝利を掴むことができておらず、フェルスタッペンに肩を並べることができなかったことも大きく作用し、コンストラクターズランキング首位から3番手に転落。既に配当金で2000万ドル(約31億円)減額の打撃を受けると見られる。
コラピントはまた、ウイリアムズが大型スポンサーを獲得したように、ラテンアメリカから大きな関心をF1にもたらしている。メキシコシティGPでは、コラピントが言葉を発するたびに、ラテンアメリカ市場のメディアの記者が列をなしている様子が目撃された。
コラピントの母国であるアルゼンチンでは、グランプリ復活に興味を示している団体もいる。現時点ではフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)にカレンダー枠の可能性について正式に問い合わせるまでに至っていないようだが……。
ローソンもコラピントも、サインツJr.のようにフェルスタッペンと過去の因縁はなく、現在のレッドブルの体制を揺るがせるリスクはない。そして純粋な速さではローソンとコラピントにはほとんど差がないと見られる。
ふたりの現在のチームメイトとの予選タイム差を見てみよう。ドライセッションに限り、どちらかのドライバーがノックアウトされた時点で計測を止めると、アルボンは予選でコラピントより平均0.179秒速く、角田裕毅は同じ指標でローソンを0.034秒上回っている。
現時点では、どちらもペレスを超える速さとは言えない。しかし、ここではドライバーの精神力が重要視されている。レッドブルが角田をRBから昇格させない理由はここにある。絶対的な強さを誇るフェルスタッペンのチームメイトが務まるとは考えられていないのだ。
コラピントはこれまでの6回のグランプリ週末で、ローソンと比べても、より少ない準備期間でも戦えることを証明してきた。
デビュー戦となったイタリアGPではメディアを前に少々萎縮していたコラピントだったが、パドックでは“いい意味で”強気の姿勢だ。サンパウロGPで喫したような、セーフティカー先導中のクラッシュという気まずい状況が、この先もずっと続くわけではない。
実質的に2025年のF1シートが全て埋まっているということを考えると、コラピントにかかるプレッシャーもある程度少ないのだろう。しかしそれでも、F1という“圧力釜”に驚くほど上手く対処している。
これはレッドブルにとってカギとなる要素だ。同陣営に必要なのは、フェルスタッペンに接近し、コラピントとアルボンのような平均的なギャップを保ち、ガレージの反対側からの容赦ないプレッシャーにさらされながらも耐えることができるチームメイトだ。
これまでコラピントがレースで示してきたことを鑑みると、2018年にダニエル・リカルドが離脱して以来、レッドブルが解決できずにいるチームメイト問題に対する答えになり得るだろう。
コラピントはレッドブル加入の準備ができていない……現時点では– Oleg Karpov
話題というのはおかしなモノだ。多くの扉を開くことができるという点では素晴らしいが、別の話題へ移り変われば、あっという間に閉じてしまう。
コラピントは今、間違いなく時代の寵児だ。レッドブルのチーム代表がこの若手ドライバーを陣営に引き込み、2025年シートの提供を検討しているという事実は、イタリアGPで突然のF1デビューを果たして以来の盛り上がりを物語っている。
なぜなら、F1にやってきたのはコラピントだけではない。ウイリアムズのマシンにはアルゼンチン企業のロゴが貼られ、チームのソーシャルメディアとサンパウロGPにはアルゼンチン人ファンがなだれ込み、アルゼンチンの政治家たちが突然F1について語り出したのだ。政治家も話題に乗らなければ政治家ではない。
コラピントをめぐる絶え間ない大騒ぎは、ウイリアムズにとっても、F1自体にとっても……誰にとっても素晴らしいことだ。2025年に向けて彼と契約を結ぶどのチームにとっても、まだ良いことが沢山ある。
しかしコラピントがレッドブルのシニアチームに加入するというのは、フェルスタッペンと対峙するということ。アルゼンチン企業のロゴがマシンに掲出されるかもしれないが、ファンや政治家たちとは関係がない。それに、コラピントがF1で最も厳しい職務のひとつをこなす準備が整っているという証拠はまだない。
妥当な議論かもしれないが、コラピントがトップチームのマシンに飛び乗るには早すぎるというわけではない。ただ、その仕事をこなせることを証明するだけのデータが十分ではないということだ。
これまでコラピントの走りを見てきた限りでは、サージェントよりもアルボンと相性が良いと言って良いだろう。またウイリアムズとしてもシーズン後半にかけて調子を上げてきたということは考慮すべきだが、コラピントがアゼルバイジャンGPで予選Q3に進出し、F1初ポイントを獲得したことは間違いなく印象的だ。ただ、予選でアルボンを先行したことも話題を盛り上げる要素となったが、チームのミスでアルボンが最終アタックをできなかったという事実もある。
シンガポールGPでの週末はまずまずだったが、アメリカGPでポイントを獲得したことは間違いなく注目に値する。だからといって、コラピントがトップチームのマシンに乗る準備ができているかというと、そうではない。少なくとも現時点では、F1で十分通用することを証明したということだ。
シーズン途中でマシンに飛び乗るというF1デビューの状況は、全体的な印象を良くしているが、ルーキーがF1でいきなり結果を残すというのはコラピントが初めてではない。新世代のドライバーたちがこのような試練にどう対処するかということに驚くのは、もうやめるべきなのだろう。
現代は、時計が全てを語ってくれる。バーレーンでのF1デビュー戦入賞を果たした角田の周りは大騒ぎとなったし、2022年に代役参戦で高いパフォーマンスを見せたニック・デ・フリーズは話題の人となり2023年のF1シートを掴んだ。ただ、そのデ・フリーズは最終的に成績不振でシーズン途中にシートを喪失した。
コラピントには、証明すべきことがまだ沢山残っている。イタリアGPとメキシコシティGPでのアルボンとの予選タイム差は現状、あまり話題に上がらない。クラッシュもそうだ。しかし、それが今日のメディアの本質だ。サージェントがセーフティカー出動中にクラッシュを喫すれば、格好の餌食だっただろうし、F1デビューの“ハネムーン期”にいるコラピントはまだ言い訳ができる。
ホーナー代表がコラピントの起用を検討しているという事実は、コラピントの衝撃的なF1デビューよりもレッドブルのドライバープールの問題の大きさを物語っているのではないだろうか。フェルスタッペンの隣に相応しいと太鼓判を押せる人材がいないのだ。
スポーツ的な理由だけであれば、ホーナー代表はウイリアムズのホスピタリティでジェームス・ボウルズ代表に、サインツJr.やアルボンといった他ドライバーの話をしていることだろう。
というのも、フェルスタッペン陣営がサインツJr.との2015年のトロロッソ(現RB)コンビ再結成という選択肢にどうしても耐えられないのであれば、ホーナー代表がウイリアムズから買い上げるドライバーリスト上位に挙がるべきはアルボンに違いない。
アルボンはレッドブル育成ドライバーとして2019年にトロロッソからデビューを果たし、その年にはシニアチームへ昇格。2020年も同チームで過ごしており、フェルスタッペンのチームメイトがどのようなモノなのか、よく分かっている。
しかし、F1は常にパフォーマンスが重要なわけではない。ホーナー代表がコラピントに注目している理由は他にもあるだろう。メキシコ出身のペレスを解雇した場合でも、レッドブルがラテンアメリカのスポンサーを満足させることができるかもしれないからだ。
コラピントは将来的にスーパースターになるかもしれない。ただ、現時点ではそれを裏付ける証拠がほとんどないのだ。
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みんなのコメント
今週末までにどれぐらいのスポンサーをあ集められるかが勝負だね
最低ラインは30億円ぐらいか?
小林可夢偉はリーマンショック後の厳しい状況で10億円ぐらいのスポンサーを集めて無給でシートを獲得した
角田も頑張って欲しい