1960年代を駆け抜けたマツダ キャロル360
1962年にマツダは「歓びの歌」という名を持つ軽乗用車「キャロル360」を世に送り出しました。ルーフ後方を大胆に切り落としたクリフカットと呼ばれるスタイルは当時話題を集め、今でもファンが存在します。そんなキャロル360を愛し、複数台所有するオーナーに話を聞きました。
三男はダットサン「510ブルーバード」だけで30台以上所有! 一家全員で合計100台近くの旧車がある瀬尾一家とは…お気に入りの愛車をお見せします!
黎明期の軽自動車を牽引したマツダとスバル
1960年代の軽自動車市場はマツダとスバルの一騎打ちの状態にあり、スバルが「360」をデビューさせると、マツダは「R360クーペ」に続き、「キャロル360」で対抗したという歴史がある。この2台は「高嶺の花」といわれた自動車を身近なものにし、庶民の生活スタイルに大きな影響を与えた。キャロル360がデビューした1962年は2ドアタイプのみ設定されていたが、翌年には使い勝手の良い4ドアタイプを追加。4座席の4枚ドアが人気車種となると2ドアタイプは影が薄くなり、生産台数を伸ばすことなく希少車となった。
今回紹介するキャロル360は、愛媛県在住の瀬尾明弘さんが乗る貴重な2ドアタイプだ。オーナーの瀬尾さんは日本屈指の旧車マニアとして知られる瀬尾一家の長男として生まれた。
「幼い頃から古いクルマに囲まれた生活を過ごし、自然と旧車が好きになりました。後にキャロル360に惹かれ、一番お気に入りのクルマになりました」
と、瀬尾さんは話す。
日本に残っている推定3台のうち2台を所有
瀬尾さんは、キャロル360マニアとして複数台所有しているが、今回紹介する車体は、そんなコレクションの中でもとくに希少なモデルだ。冒頭でも書いたが、初期型の2ドアタイプは希少だ。瀬尾さんいわく、
「おそらく動く車体として日本に残っているのは3台くらい」
とのこと。その3台のうち、2台を瀬尾一家で所有しているそうだ。
この1年しか生産されなかった初期型のフロントマスクなどは前期型と共通だが、エンブレムが筆記体になっていないのが最大の特徴。いわゆる「角エンブレム」と呼ばれる珍しいモデルだ。瀬尾さんのキャロル360は走行距離が1万2000kmと短く、フルオリジナル車となる。内装を確認すると斬新なデザインのシートのコンディションも良く、ドアの内張りやリアシートはビニールがかかった状態であった。
セクシーなボディラインが魅力
「この車体は神戸のマツダ・キャロルオーナーズクラブの方から特別に譲ってもらいました。初めてステアリングを握って運転したときは本当に嬉しく、今でもその時のことをはっきり思い出します」
と瀬尾さん。瀬尾さんにとってキャロル360の魅力は、セクシーなボディラインにあるという。真横から見ると、キャビンがまるで平行四辺形を描くようなシルエットが特徴だ。デザイン面も手間がかかっていて、唯一無二のクルマとしてのキャラクターを巧みな処理によって表現している。また、リアエンジンのレイアウトを活かした高度なデザイン処理が際立つ作り込みも見事である。
瀬尾さんのキャロル360は基本的に内外装ともに当時のままをキープしているが、唯一違う点といえば車高だ。ただ、純正加工によって作り出しているので、すぐにノーマルに戻すことが可能だ。かなり下がっているように見えるが、しっかりショックも効いて乗り心地は悪くないそうだ。今後の予定は、オリジナル状態のまま現状維持。なるべくサビないように状態を保ったまま乗り続けていくとのことだった。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
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