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アリストのレクサス版も時代に勝てず27年で幕  好調なSUVの裏で「GS」が苦戦した理由

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アリストのレクサス版も時代に勝てず27年で幕  好調なSUVの裏で「GS」が苦戦した理由

■2020年8月にレクサス「GS」が生産終了へ

 レクサス「GS」が、2020年8月に生産終了という発表がありました。これとあわせて特別仕様車「エターナルツーリング」が同年6月1日に発売されますが、これは事実上のファイナルエディションといっていいでしょう。

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 2005年から国内展開を開始したレクサスですが、2019年は初の6万台超えを達成しています。

 その内訳をみると、クロスオーバーSUV好調の裏では、セダンは軒並み不調だったのは紛れもない事実。そのなかでも、「LS」と「IS」のあいだに挟まれたGSは、もっとも苦戦していたモデルでした。

 加えてクロスオーバーSUV人気にセダン市場の縮小も相まって、GSの販売台数がプラスに転じることはありませんでした。

 さらに、それまで北米専売だった「ES」が2018年に日本に導入されたことで、GSはリストラ対象になったのです。

 レクサスは、「駆動方式の違いやキャラクターが異なるので、ESはGSの後継モデルではない」と語り、GSの続投の検討は何度もおこなわれたと聞きますが、レクサスとしての「選択と集中」を決断する必要があったということでしょう。

 GSが属するカテゴリは、メルセデス・ベンツ「Eクラス」、BMW「5シリーズ」、アウディ「A6」など、各メーカーのボリュームゾーンに位置するモデルがひしめいています。

 そういう意味では、GSはレクサスブランドの核となる存在だったはずですが、ここから撤退というのはじつは大きなニュースなのではないでしょうか。

 筆者(山本シンヤ)は現行モデルに何度も試乗していますが、ライバルと比べて良い所/悪い所があるのはもちろん、「レクサスらしさ」という意味では明確な意思表示ができるようになったモデルだと思っていました。

 今回の生産終了のニュースは論理的には「そうだよな」と納得する一方で、心の中では「寂しい」という気持ちでいっぱいです。

 確かにビジネス的にはESでカバーできますが、プレミアムブランドは損得だけでいいのかというと、疑問が残るのも事実です。

 実際にGSの生産終了のニュースが発表されると、「あえてFRで作るからこそ、トヨタ車と差別化できたのに」、「プレミアムブランドを名乗るなら、売れないからといって根幹のセダンを廃止するのは何か違うような気がします」、「ESとGSはユーザー層がまったく違うので、ESへの一本化は限界があるのでは」、「ハリアーのようにトヨタブランドのアリストとして復活を期待したい」など、筆者と同じように惜しむ声の多さにビックリしました。

 ユーザーの意見は厳しいものの、その根底はGSを高く評価していたことがよくわかりますが、やはり販売台数が振るわないということは、撤退もやむを得ないといったことなのでしょう。

■「アリスト」のレクサス版 27年に渡るGSの歴史とは

 GSとはどのようなモデルだったのでしょうか。27年に渡るGSの歴史を、簡単に振り返ります。

 レクサスが日本展開をおこなっていない頃は、レクサスブランドのモデルをトヨタブランドで販売していました。

 LSはセルシオ、「RX」はハリアーなどがそれに当たりますが、GSはその逆で、トヨタブランドのモデルがレクサスブランドで発売されたのがスタートでした。

 トヨタブランドのモデルとは、1991年に登場した「アリスト」です。

「クラウン」シリーズでモノコックボディを初めて採用した「クラウン マジェスタ」
の基本コンポーネントを用い、イタルデザインによるエクステリアを身にまとった4ドアセダンとして登場。

 注目はパワートレインで当時の「スープラ(A70系)」よりも強力なユニット、トヨタ直列6気筒エンジンシリーズ最強の280ps/44kgmを発揮する3リッター直列6気筒ツインターボ「2JZ-GTE」を搭載しました。

 下位グレードにはそのNA版となる「2JZ-GE」、さらに1992年にセルシオ用の4リッターV型8気筒「1UZ-FE」と4WDを組み合わせたグレードも追加されました。

 シャシはピエゾTEMSや、オプションながらリアに245/50R16サイズのタイヤを設定、ブレーキはツインピストンキャリパーで強化するなど、クラウンの派生モデルとは思えない気合の入り方でした。今風にいうと、スポーツカーと高級セダンのクロスオーバーというキャラクターといえるでしょう。

 その後1993年に、アリストがレクサス GSとして北米市場に投入されました。当時レクサスブランドはLS/ESの2トップのみで、モデルラインナップ充実の必要もあったそうです。

 ただし、GSには最強のターボは用意されず、3リッター直列6気筒NAの「2JZ-GE」のみの設定でした。これはGSのネーミングである「グランドツーリングセダン」に合わせたためだそうです。

 1997年にアリストは2代目へフルモデルチェンジ。エクステリアはキープコンセプトながら社内デザインへと変更されました。

 エンジンは初代から続く3リッター直列6気筒ツインターボ/NAですが、V型8気筒モデルはラインナップから消滅しています。

 シャシは初代モデルでは「エンジンが勝ちすぎ」という評価もあり、プラットフォームを一新。前後重量バランスにもこだわったパッケージも特徴となりました。つまり、クラウンの派生モデルではなく独立したモデルとなったわけです。

 後に「TTEバージョン」や「VA300 TOM’S」などのハイパフォーマンス仕様も限定発売されています。

 アリスト登場の翌年となる1998年、2代目GSが登場しています。基本的には初代と立ち位置は似ていますが、パワートレインは3リッター直列6気筒NAに加えて、4リッターV型8気筒「1UZ-FE」を搭載。シャシのレベルアップによりFR駆動との組み合わせとなっています。

 ちなみにV型8気筒エンジンは、2000年のマイナーチェンジで4.3リッター「3UZ-FE」に変更されました。

 2005年には、日本でのレクサスの展開スタートに合わせて3代目GSが登場。これによりアリストの歴史は幕を閉じることになります。

 エクステリアは2代目のイメージを踏襲しながらも、よりグランドツーリングらしい伸びやかなスタイルを採用。パワートレインは直列6気筒が消え、4.3リッターV型8気筒と新開発の3.5リッターV型6気筒「2GR-FSE」を搭載しました。

 翌年2006年には3.5リッターV型6気筒+モーターのハイブリッドモデルを追加。トヨタ「プリウス」などのハイブリッドとは異なり、パフォーマンス重視のハイブリッドと呼ばれ、「4.5リッター並みのパフォーマンス」ということで「GS450h」と名付けられました。また、2007年にはV型8気筒エンジンが最新の4.6リッター「1UR-FSE」に変更されます。

 トータルパフォーマンスは2代目と比べると大きくアップしていたものの、日本では“アリスト”ブランドが根付いていたので移行が上手くいかなったこともありますが、筆者はそれよりも、ターボモデルが設定されなかったことが最大の問題だったと思っています。

 つまり、ハリアーと同じく「アリストでなければダメ」という人が多かったのです。その証拠に当時の中古車雑誌を見ると、アリストの中古車価格に驚くほどの高値が付いているのです。

 しかし、レクサスは諦めませんでした。それが2012年登場の4代目です。レクサスの変革を象徴とする一台として開発が進められ、見た目、中身ともに大きく刷新されました。マスタードライバーの豊田章男氏の想いも強いモデルだったと聞いています。

 先代までの初代の面影が残るエクステリアは一新され、フロントマスクはいまに続くスピンドルグリルを初採用。インテリアも水平基調の上下分割式に刷新しました。

 パワートレインはV型8気筒がラインナップから消え、大幅改良の3.5リッターV型6気筒と3.5リッターV型6気筒+モーターのハイブリッドに加えて、2.5リッターV型6気筒を追加。

 さらに2013年には2.5リッター直列4気筒+モーターのハイブリッド、2016年に2リッター直列4気筒ターボ(GS200t→GS300)を追加するなど、エンジンラインナップは多様なニーズに対応すべく充実していました。

 フットワーク系プラットフォーム/サスペンションはともに新開発され、トヨタ車との共用ではなくレクサス専用設計になりました。加えて、スポーティバージョン「Fスポーツ」は可変ギアレシオステアリング+後輪操舵を強調制御するLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリング)を採用しています。

 さらに2016年に、レクサススポーツ最高陣となる「F」の名を冠したスポーツセダン「GS F」が追加されました。

「RC F」譲りの477ps/530Nmを誇る5リッターV型8気筒+8速SPDS(スポーツダイレクトシフト)にサーキットを走れるシャシ/サスペンションを組み合わせ、「日常からサーキットまで誰でもシームレスに走れるスポーツモデル」で、「IS F」に続くセダンボディの「F」モデルとなりました。

※ ※ ※

 GSが生産終了後にレクサスのセダンシリーズはどのような展開をおこなっていくのでしょうか。

 フラッグシップセダンのLSは、近々ビッグマイナーチェンジをおこなうといわれています。ドライバーズセダンとしての性能に対し快適性に厳しい意見が出ているので、その辺りに大きくメスが入るのと、より進化した運転支援システムが搭載されるはずです。

「IS」は現行モデルの登場が2014年、そろそろ世代交代のタイミングなので、何らかのアクションはあると思いますが、フルモデルチェンジなのか、それともビッグマイナーチェンジなのか気になるところです。

 そしてESですが、筆者は以前レクサスの次世代技術を体感するワークショックに参加し、ESの後輪軸に「eアクスル」と呼ばれるシステムを搭載した四輪駆動車のテストカーに試乗しました。

 そのときの印象は、駆動方式の概念が変わる新感覚の乗り味で、新しいスポーツの形を感じました。このような技術が量産化できれば「GSが無くても大丈夫」と自信を持っていえるような気がしています。

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みんなのコメント

34件
  • 大きすぎるFFのESよりも丁度良いサイズで高級感もあるGSをフルモデルチェンジして残して欲しかった。ISやESではGSの代わりになれないと思う。

  • SUVはセダンより制約少ないからメーカーとしては流行って大助かりだろうね。
    その点セダンは緻密な設計と技術力が完成具合に大きく反映される。
    比較やテスト基準も厳しいから比較で良し悪しが明確になりやすい。
    日本ではセダンというと実質クラウン一強だし、世界でのレクサスに対する評価はセダンもクーペもどん底。

    フラグシップである限定車種のLFAとLCは流石!と思うけど、この魂を下位クラスに反映できてないのが惜しい。
    結局儲けを重視してコストと流行りに合わせてしまい、レクサスとしての特徴やこだわりがおざなりになってる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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