2017年に中国・ジーリーの傘下に入りロータスは新たな歩みを始めた。その方向性は明確に電動化を目指すものだ。そして、ここにきて「エヴァイヤ」「エレトレ」「エメヤ」とフル電動モデルのデビューを迎えた。この“歩み”を支えたテクノロジーについて西川淳氏が語る。前編はこちら。
“古いけれど新しい”ブランドの必勝法
電動化時代に「ロータス」が得た本当のリスタート、今度こそ経営は“安定飛行”となるか?
ハイパーSUVの「エレトレ」を日本でも発表したのち、矢継ぎ早にハイパーGTセダンの「エメヤ」をニューヨーク、続いてパリにて披露した。既存のモーターショーや英国という場所、つまりは伝統的な要素に縛られることなくライフスタイルブランドとしてグローバルに堂々と展開していこうという、それは覚悟の現れだ。近い将来にはコンパクトSUVが、2026年には満を侍して新たな電動スポーツカーも登場する。このスピーディさこそ“古いけれど新しい”ブランドにとって電動化時代というチャンスの荒波を乗り切るための必勝法というわけだ。
ジーリーはボルボやスマート、プロトンなど世界中のブランドに影響力を広げてきた。メルセデス・ベンツの筆頭株主にもなったし、ルノーとの協業も発表した。今最も注目すべき自動車会社の一つだろう。彼らの目指すところは自動車ビジネスの質的転換だ。メーカーからサービスプロバイダーへ。だからこそさまざまな形で影響力の及ぶ範囲を広めようとしている。
電動化はそのための最も大きな柱の一つ。なかでも2020年に発表したSEA(サスティナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャ)と呼ばれる新EVプラットフォームの役目は重要だ。世界初のB2B・B2Cのオープンソースハードウェア。AセグメントからEセグメントまで対応可能な800Vスケートボードスタイルのアーキテクチャである。ロータスがエレトレやエメヤで初採用したEPA(エレクトリック・プレミアム・アーキテクチャー)もまた、SEAをベースにロータスの技術陣が専用に開発したもの。ちなみにエレトレ及びエメヤの生産拠点は武漢に新設された最新式のファクトリーで、スポーツカー系のみ英国となる。
SEAにはモーターやバッテリーシステムといったハードウェアはもちろんのこと、コネクテッドや自動運転など近未来のBEV(バッテリー電気自動車)に付随するソフトウェア(サービス)のさまざまも含まれている。今後、SEAを積極的に活用する会社が増えることだろう。そのためにも格好の宣伝材料となるボルボやロータスの商業的成功は必須だ。つまり今度こそロータスはちゃんと育ててもらえる、と筆者は見た。
エモーショナルなサルーンスタイル
マンハッタンで最もファッショナブルなエリア、チェルシー。最先端のファッションホテルからエレトレに分乗した我々が向かったのは、その一角にある古い自動車整備工場のビルだった。暗いスロープを徒歩で上がっていく。奥はほのかに黄色く光っている。
最初のフロアには「ロータス6」と「エスプリターボ」、そしてF1マシンの「JPSロータス72」が飾られていた。次のフロアにはエメヤ用の大きなボディパーツが吊り下げられている。ベンが笑顔で迎える。「ボディパネルは皆さんの大好きなアルミニウム製だよ」と言って、周囲を和ませた。
もう一つフロアを上がってようやくエメヤと対面した。マイク曰く「ブランドの75周年を飾るにふさわしいモデルであると同時に、ロータスにとっては全く新たな境地を切り開くセダンGT」基本的なデザインコンセプトやメカニズムは先に発表された電動SUVの「エレトレ」を踏襲する。けれどもそのスタイリングは当然のことながらよりスタイリッシュかつグラマラス。フロントフェンダーの膨らみが見える運転席に座った印象はスポーツカーそのものだった。
「真横からのデザインを見てほしい。4ドアでありながらこれほどダイナミックなGTはこれまでなかったと思う」とベンが誇らしげに解説する。確かにBEVならではのエモーショナルなサルーンスタイルだ。
美しさだけではない。エレトレと同様にこのビューティスタイルのなかには最新のアクティブ・エアロダイナミクスを実現するシステムがあちこちに仕込まれている。BEVにおいてエアロダイナミクスは、その強大なスペックを制御するとともに航続距離の延伸に重要な役割を果たす。
エレトレにエメヤ(発音的にはエメーヤが近いが日本ではエミーラと紛らわしいから変えたのだろう)。フル電動だとか内燃機関だとか、そんなことは最早どうでもいい。早く日本国内でも乗ってみたいと思わせるモデルであったということの方が重要だろう。
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みんなのコメント
ロータス?
各社個性が無くなってきた。