俳優・喜内優心さんは、免許取得以来、日産の高級セダンである「フーガ」ひとすじだ。その理由を本人に訊いた!
フーガを2台乗り継ぐ
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真っ白なフーガに乗ってあらわれた喜内さんは、2001年生まれの21歳だ。
イマドキの若者がセダンに、しかも日本製高級セダンを愛するとは意外だ。SUVやミニバンに興味はないのか?
「いや、俺はセダン派ですね。フーガがめっちゃ好きなんで、ほかは考えられないです」
喜内さんは2021年2月から4月にかけて放送された中国のアイドルオーディション番組『創造営2021』(WeTV)に出演。これをきっかけに中国でも芸能活動を開始した。俳優、モデル、そして歌手などにマルチに活躍し、人気を得る。端正なルックスにくわえ、持ち前の明るいキャラクターを前面に押し出したことで“喜劇人”(コメディアン)としても評価されたという。そして2022年に帰国し、日本での芸能活動をスタートした。いわば“逆輸入俳優”である。
「2019年に免許を取得したとき、初めて買ったのもY50型のフーガでした。これは1年ちょっと乗って、Y51型に乗り換えました。今の愛車は、ヤフオク!で、見つけました。走行距離は11万kmちょっと走っていたのですが、状態がよかったんです」
フーガを知らない向きに説明すると、「セドリック」と「グロリア」の後継モデルとして、2004年に初代(Y50型)が登場。喜内さんも所有する現行モデルは、2009年に登場した2代目(Y51型)で、10年以上作り続けられているロングライフモデルである。
喜内さんが購入したのは2011年式の「250GT」。2.5リッターV6エンジンを搭載するグレードだ。フーガには3.7リッターV6エンジン搭載モデルも設定されているが?
「もともとY50型では3.5リッターに乗っていたんですが、たまたま地元(千葉)の友人が所有する2.5リッターのフーガを運転したとき、走り出しが思いのほか速かったんです。それで2.5を選びました。今のところ2.5リッターでも満足していますよ」
フーガを所有するワカモノがもうひとりいるというのも興味深い話である。トラブルは?
「まったくないですよ。さすがは日本車ですよね。壊れる気がしません。現在の走行距離ですか? 17万kmちょっとです」
3年で約6万kmも走っているとは驚きだ。基本的にどこへいくにもクルマとのことで、ロングドライブへも頻繁に行くそうだ。先日もふらっと福島の方へ出掛けたという。
「中国で活動していたとき、フーガにまったく乗れなかったのは本当に寂しかったですね……」と、喜内さん。
生産終了への思い
喜内さんのフーガは、さまざまな箇所に手が入っている。
「ホイールは20インチにアップして、ローダウンしています。フロントグリルやステアリングホイール、ホイールのセンターキャップは日産からインフィニティのバッジに変えました」
訊くと、すべて自分の手でカスタマイズしているそうだ。
「オイル交換も自分でしますよ。ショップに出すのはタイヤやホイールの履き替えや車検整備時ぐらいです」
クルマのみならずバイクも自身の手でカスタマイズするそうで、先日も、友人が所有するビッグスクーターの全塗装を手掛けたそうだ。
「カスタマイズのときはYouTubeの動画などを参考にしています。自分の手でクルマやバイクをイジるのが好きなんですよ。このまえも灯火類をLEDに統一しました」
「まだまだカスタマイズしたい箇所があるんですけどね……」と、話す喜内さん。結構な金額が掛かっているのかと思いきやそんなことはないらしい。
「基本、手作業なのでカスタマイズに掛かる費用はパーツ代だけですよ。しかもパーツだって、中古ショップや、ヤフオク!などで安く買ったものを自分で直して、使います。たとえばバンパーも、最初はインパルのものが装着されていたのですが、壊れたのを機に純正に落ち着かせようと思い、アップガレージでシルバーのものを900円で買いました。それを白に塗り替えて、自分で装着したんです。交換費用の総額ですか? 塗料代込みで2000円ぐらいでしょうかね(笑)」
喜内さんのフーガ・ライフの醍醐味は、自分好みの1台をコツコツと仕上げるところにもあるのだろう。まるでクラシック・カーを愛するかのようだからおもしろい。
なぜ、そこまでフーガに惹かれるのか?
「16歳のときにバイクの免許を取得して、ホンダの『シャドウ』に乗っていました。そのときから18歳になったらクルマを買うぞ! と、決めていたので、色々と調べていたところ2009年に放送されたフーガのCMに心惹かれたんです。めちゃくちゃカッコよくて! それで、フーガLOVEになっちゃいました。もともとデカいクルマが好きだったので、フーガのような大型セダンは理想的な1台でしたね」
“若者のクルマ離れ”、“セダン冬の時代”と言われているなか、これほどまでにフーガを愛する喜内さんは超珍しい。寝ても覚めてもフーガ漬けの日々である。
月に数千台販売され、多くの若者が憧れた1987年登場のY31型「セドリック」の時代ならともかく、今の、フーガは年間数百台しか売れていないのだ。ちなみに2020年の合計販売台数はたったの580台だったから、月平均販売台数は50に届かない。
売れていないないモデルを日産が放っておくはずがない。今年3月31日、日経新聞が、日産の最高級セダンである「シーマ」と高級セダンの「フーガ」、そして「スカイライン・ハイブリッド」の生産を終えると報じたのだ。しかも、後継モデルについては不明という。フーガを愛する喜内さんは、さぞや落胆したに違いない。
「フーガの生産中止は驚きました。最愛の人がいなくるなるのとおなじ気持ちです。はるか先かもしれませんが、自分の子どもたちにフーガを買ってあげて乗せたいと思っていたのですが、それも叶わなくなってしまうとはホント寂しいですね……」
遠くを見つめる喜内さんは、続けて日産への思いを述べた。
「日産に期待したいのは、素晴らしいラグジュアリーなセダンを作って欲しい! とはいえ環境問題もありますから、電気自動車が増えるのはしょうがないと思いますけど、フーガの名前は残して欲しいですね。それはそれとしてマッスルなセダンが登場することも望みたいですね。欲を言えば、V6ないしはV8のガソリン・エンジンが理想ですが(笑)」
日産は、次世代のBEV(バッテリー式電気自動車)などを含む電動化技術に経営資源を集中するべく、フーガなどの生産中止を固めたという。後継は「スカイライン」とミニバンの「エルグランド」が担うそうだ。
ただし、日産自身はフーガの名を廃止するとは言っていない。もしかすると、今後、発表される新しい電動モデルでフーガの名は使われる可能性もある。
そういえば先日、GQ JAPANにフーガとシーマの生産中止について寄稿いただいた自動車ジャーナリストの今尾直樹氏が「日産の未来のセダンに、新しい名前ではなくて、プレジデントとかセドリック、グロリア、あるいはローレル、セフィーロといった昔の名前を与えてみてはどうでしょう、と。少なくとも中高年にはガツンと響くはずで、EVがグッと近しく感じられるのではあるまいか」と、文中で持論を述べられた(参照:2022年5月7日「日産の高級セダンに未来はあるのか?」)。
続けて、「考えてみたら、フィアット500eとか、BMW i7とか、メルセデス・ベンツEQSとか、ヨーロッパのメーカーはみんなやっている。よくいわれるように、未来は過去とつながっている。過去を大切にしない者に未来はない。ときどき昔のことを思い出す。それがクルマに限らず、名門といわれるブランドのやっていることだ」とも述べた。
あくまで今尾氏の提案ではあるけれども、“過去を大切にしない者に未来はない”という言葉に筆者は惹かれた。フーガだって60年以上続いたセドリックに比べれば短いものの、それでも約18年の歴史を築いてきたのだから、そのブランド力を使わないのはもったいない。
拝啓、日産様。21歳のワカモノの熱き思いを、どうか汲み取っていただき、フーガの名をなくなさいでください!
【プロフィール】
喜内優心(きうちゆうじん)
2001年1月22日、千葉県出身。WeTV(テンセントビデオ)によるグローバルアイドルオーディション番組「創造営2021」に出演。番組放映から1年経たずにWeibo(フォロワー48万人)など、中華圏のSNSを合わせたフォロワー数が100万人以上に。その後中華圏では、さまざまな広告や番組出演、映画のプロモーションなどに登場した。そして2022年3月より日本における活動をスタートした。
衣装問い合わせ先:ディーゼル ジャパン TEL:0120-55-1978
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・奈良裕也 スタイリスト・西村哲也 タレントキャスティング・落合真理(The Talent Group)
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