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【クラスに生じる激しい競争】BMW iX 試作車の助手席に同乗 航続600km 総合523ps 後編

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【クラスに生じる激しい競争】BMW iX 試作車の助手席に同乗 航続600km 総合523ps 後編

システム総合で523psと77.8kg-m

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)

【画像】BMW iXとiX3 競合するSUVの純EVモデルと比較 全146枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


最新のBMW iXのステアリングホイールは、丸というより六角形に近い。車内は広々としていて、未来的な空気感に溢れている。

現行のBMW X5の開発も主導したディレクターのヨハン・キスラーは、当初はこのデザインに懐疑的だったそうだ。「少し奇妙に見え、最初はあまり好きとはいえませんでした。しかし実際は使いやすく、新世代のデザインに合っていると思います」

細部に至るまで、すべてが洗練されている。唯一、大きなモニターパネルを支えるプラスティック製のマウントが、少し安っぽく見えるくらい。

センターコンソールの前部には、ギアセレクターとiドライブのコントローラーが付く。オプションで、クリスタルガラス製に変えることもできるという。

iX 50 xドライブに積まれる駆動系は、純EV4ドアサルーンのi4 M50 xDriveと共通。フロントのモーターは258ps、リアのモーターは312psを発揮し、システム総合での最高出力は523psとなる。システム総合での最大トルクは77.8kg-mもある。

走りの印象は、市街地ではとても滑らかで上質。鋭く頼もしい動的性能を獲得しているようだ。

iX3と同様に、ドライブモードにはDとBの2段階がある。Dはアクセルオフで長い惰性走行が許され、Bでは回生ブレーキが積極的に介入し減速する。とてもスマートに、速度を制御できていた。

力強い瞬発力と静寂な巡航走行

タイヤ4本へ知的に駆動力を分配する四輪駆動システムのおかげで、発進時の加速力はガソリンターボのX5 M50i並みに力強い。運転好きなドライバーも納得の瞬発力がある。それでいて、驚くほど静かでもある。

中間加速もかなり強烈。低速域で走行中にアクセルペダルを踏み込むと、駆動用モーターが余力を一気に解き放ち、乗員はシートの背もたれへ押し付けられる。

BMWによれば、0-100km/h加速は4.6秒。X5 M50iと比べると、0.3秒だけ遅い。最高速度は、199km/hに制限されている。

ライバルモデルと比べてみると、アウディeトロン 55クワトロでは、ツインモーターの四輪駆動で407psと57.1kg-m。0-100km/h加速を5.7秒でこなし、最高速度は同じ199km/hとなる。

ドイツのアウトバーンを少し走れば、iXが与える静寂な巡航走行に唸らされる。フル加速時は電気モーターから小さな唸り声が聞こえてくるものの、ハーフスロットル時はいたって静か。

高速域で耳に届くのは、フロントガラス上部やドアミラー周辺から発生する、風切り音くらいだった。

iX 50 xドライブでさらに注目すべきは操縦性。プラットフォームの低い位置にバッテリーを積むことで、重心高は低い。スポーツ・モードを選択すると、抑制の効いた姿勢を保って進行方向を変え、コーナーでのグリップ力も相当に高い。

バランスに優れレスポンスも良く、足取りは終始安定しているようだった。

動的な質感は新しいBMWとして高水準

ステアリングは可変レシオだが、オプションでインテグラル・アクティブ・ステアリングという機能も選べる。これにより後輪操舵も可能となる。最大3.5度までリアタイヤは角度を変え、市街地での扱いやすさと、郊外の道での機敏性を向上できるという。

駆動力の分配比率は、ウェット時を除いて基本的にリアタイヤが優先。限界領域まで攻め立てることはなかったが、キスラーによれば、動的な質感は新しいBMWとして高水準だと評価している。

「このクルマを運転すれば、これほどの車重を信じられなく感じるでしょう。とてもレスポンシブで正確です。操縦性の磨き込みには相当な時間を費やしました。BMWらしいキャラクターを与えるために」

「内燃エンジンのモデルと比べると、コーナリングフォースや横方向の加速度などは大きく異なります。ですが、この仕上がりには非常に満足しています」。キスラーが説明する。

iXはCLARプラットフォームがベースというだけあって、X3やX5、X7などとの関係性は濃い。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式を採用する。

同乗したプロトタイプはエアサスペンションを備えていたが、iX 40 xドライブにはアダプティブ・ダンパー付きのスチールコイルが組まれる。

ダンパーは硬めながら、コンフォート・モードでもロールはしっかり抑え込まれていた。乗り心地の落ち着きは充分で、細かな起伏が続いても適切に処理。鋭い隆起部分などを通過しても、垂直方向の動きは良く吸収できていた印象だった。

iXが純EVのSUV界にもたらす激しい競争

実際の航続距離は、今回は確かめることができなかった。少なくともエコ・モードを選んだ時は、630kmという距離がモニターに示されていた。もしこの数字通りに走れるなら、iXはこのカテゴリーの純EVとして最長の航続距離を得られることになる。

最後に触れておきたいのが、バッテリーのプレ・コンディショニングを自動で行ってくれること。充電前にリチウムイオン・バッテリーの温度を最適化させ、いたわってくれる。急速充電器は、最大200kWの容量にまで対応するそうだ。

BMW iXのスタイリングは、正直いって型破り。実際に目の辺りにすると、当惑するほど。多くの点で、従来のBMWとは異なるモデルであることは間違いない。

コンセプトカーのようなインテリアデザインも特長だし、少なくとも助手席の印象としては、動的性能や走りの質感などクルマ全体の洗練度は高かった。その魅力は、小さくなさそうだ。

納得できるドライビング体験を実際に獲得していれば、BMW iXが純EVのSUV界に激しい競争をもたらすことは間違いない。AUTOCARを定期的に読まれている方なら、ライバルとしてアウディeトロンやテスラ・モデルXなどをすぐに思い浮かべるだろう。

直接ステアリングホイールを握れるのは、2021年の末になる。

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