偶然に発見された特別なシャシー
1960年代以降、姿を消していたヴォワザンC27 エアロスポーツ。偶然にも、フランス人エンジニアのフィリップ・モック氏が救いの手を差し伸べることになる。ヴォワザンの美しいボディへ魅了された1人だ。
<span>【画像】ヴォワザンC27 エアロスポーツ 1934年前後のクラシック・モデルと比較 全84枚</span>
ヴォワザンのグランプリマシンをレストアする目的で、彼は専門家のロバート・サリオット氏から大量の部品を譲り受けた。それが収められていた倉庫に、リアを破損した特別なシャシーも含まれていたという。
それこそ、行方不明のC27 エアロスポーツだった。シャシーを発見し、モックは貴重なクーペの再構築を決心。ボディの詳細は不明で、ヴォワザンの愛好家づてに写真を探してもらったが、出てきたのは3枚のみ。それでも2004年に実行へ移した。
モックは、フィゴーニのカブリオレを含む戦前のヴォワザンに詳しい、職人のドミニク・テシエ氏へ作業を依頼。ボディの再制作に挑んだ。テシエと彼の協力者は、ヴォワザンに限らず、ファセル・ヴェガまで多彩な経験を持っていた。
これまで再生させたヴォワザンは、最初期のC1から最終モデルといえるC30まで幅が広い。ヴォワザン愛好家のモックも、オリエント急行より速いと呼ばれた1243ccエンジンを積んだC4やグランプリマシンなど、数台のレストアを既に頼んでいた。
テシエのチームは、まず事故で損傷を受けたシャシーを修正。ドライブトレインもリビルドを受けた。エアロスポーツのボディは、フレームのサイズと一致するように写真を拡大することで、プロポーションを割り出した。
アール・デコ調の生地を再生産
ボディで最初に作られたのが、滑らかな曲線で構成された特徴的なフェンダー。職人による手作業で、ハンマーで打ち出された。
続いて木材でボディ・フレームを形成。スライディング・ルーフの付いたキャビンが形作られた。モックがルーフラインに納得すると、ドアフレームをアルミニウム製パネルで復元。独特のサイドウインドウも再現された。
1930年代のヴォワザンを手掛けた経験から、テシエはボディ底辺に回る装飾の施されたエッジ部分やドアハンドルなど、エアロスポーツに施すべきディティールの知見を持っていた。ボンネットの斬新な開閉メカニズムも。
スライド式で開閉するルーフは、バキュームポンプによるもの。ヴォワザンが取得した特許の1つだ。
インテリアは、モックのアーティスティックなセンスが発揮されている。ジュネーブやバルセロナで展示されたオリジナルに合わせて、ブルーとホワイトで塗られた大胆なボディとコーディネートするべく、車内は華やかに仕立ててある。
何より目を引くのが、派手なグラフィックの生地。フランスのデザイナー、ポール・ポワレ氏によるアール・デコ調のものだ。ヴォワザンでは特長の1つになっており、初期のモデルにも採用されていた。
既に入手困難だったが、モックはこの生地を気に入っており、再生産してもらっている。当時の織り機を探し出し、本物と同様に布地が織られた。実際に仕上がったインテリアを目にすれば、思わず称賛したくなってしまう。
クリス・バングル氏も仕上がりを評価
とあるヴォワザン・コレクターも、C25 エアロダインのレストア時に、モックが再生産させた内装材でインテリアを仕立ている。完成した4シーターは2011年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでお披露目され、ベスト・オブ・ショーを獲得している。
C27 エアロスポーツの完成には2年を要した。成果を祝うべく、モックはヴォワザンの飛行機が展示されるフランスのル・ブルジェ航空宇宙博物館でのお披露目会を計画したものの、博物館の許可は得られなかったそうだ。残念にも。
モック自身はコンクール・デレガンスでの受賞を狙ったわけではないと話すが、素晴らしいC27 エアロスポーツには多くの機会が訪れた。「ハイライトとなったのは、フランス西部のラボールで開かれたコンクールでしたね」
「審査員には、BMWのデザイナーだったクリス・バングル氏も含まれていました。スタイリングやディティールについて、素晴らしい会話をすることができました。クリスはとても関心を寄せてくれ、モダンなクルマだと話していましたよ」
モックは2010年までC27 エアロスポーツのオーナーだったが、C28 エアロスポーツのレストア・プロジェクトに向けた資金捻出のため、売却を決める。ヴォワザン最高のロードカーとして評価される、流線型のグランドツアラーだ。
多くの人に喜びを与える貴重なヴォワザン
売りに出たC27 エアロスポーツは、カリフォルニアのクラシックカー・コレクター、ピーター・マリン氏が購入。壮大なコレクションの1台に加わった。ヴォワザンC3 ストラスブールなどと並ぶように。
2021年9月、C27 エアロスポーツは英国で開かれるコンクール・デレガンス出展のために、10年ぶりに大西洋を渡ってきた。ロンドン南西部のハンプトン・コート宮殿で開かれたイベントでは、見事に参加者投票での優勝を勝ち取っている。
遅れて会場に到着したピーターの妻、メルル・マリン氏は、その結果をサプライズで知らされ涙したそうだ。「夫は多くの人に喜びを与えるため、素晴らしいクルマを披露することを楽しんでいるんです」
夫人のメルルが、ハンプトンコートでの公開プレゼンテーションで、誇らしげに話した。ヴォワザンC27 エアロスポーツのドアを開いて。
これまで、ヴォワザンは個人のコレクションであることが多く、人の目に触れる機会は限られていた。しかし、モックもマリンも、ガブリエル・ヴォワザンの作品をわれわれに伝えるべく、多くの努力を惜しまない。
壮大な、という表現がピッタリのヴォワザンC27 エアロスポーツは、カリフォルニア・オックスナードのマリン自動車博物館で公開されている。世界で唯一であろうヴォワザンの展示エリアで、11台のコレクションに加わり、来場者の心を奪っているに違いない。
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