億超えは当たり前 「シンガー」が提案するポルシェ「911」の楽しみ方とは

■ポルシェ「911」に「シンガー」という付加価値

　アメリカ・カリフォルニアを拠点に、2009年から空冷エンジンを搭載したポルシェのレストモッドを手掛けている「シンガー」社が、DLS（Dynamics and Lightweighting Study）の成果を示すクライアント仕様のポルシェを公開した。

　公開した場所は、2021年のモントレー・カー・ウィーク期間中のザ・クエイルで、北米では初お披露目となった。

　DLSは、空冷911のオーナーのためのレストアサービスをさらに進化させたいというシンガーの顧客からの要望から始まったものだ。英国でレストアされるのは75台までで、それぞれのオーナーのためにオーダーメイドで製作される。その出発点となるのが、タイプ964のポルシェ911である。

　エクステリア、インテリアともにパーソナライゼーションが可能であり、オーナーは自分だけのニーズに合わせてオリジナルのレストアを楽しむことができる。

●中身は最新技術満載の1台

　今回公開された、オーナーによって「Unico（ユニコ）」とネーミングされたモデルは、ボディカラーをAbsinthe（アブサン）、インテリアカラーはブラッドオレンジでまとめられている。

　そのスペックは、高性能というにふさわしいものだ。ボディは空力的に最適化されたカーボンファイバー製となっていて、エンジンは自然吸気の4リッターフラット6を搭載。最高出力は500ps／9000rpmだ。

　トランスミッションにはマグネシウム製ケースのギアボックスを採用し、フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式を採用。

　軽量エアコンやチタン＆インコネルのエキゾーストシステムといった軽量パーツも装備され、ABSやトラクションコントロール、電子制御式スタビリティコントロールなど、現代的な装備も充実している。ホイールはマグネシウム製のセンターロック式、ブレーキにはカーボンセラミック製ローターと、アルミ製モノブロックキャリパーが採用されている。

■「シンガー」ポルシェ人気の秘密とは？

　ユニコ・コミッションと同時に、シンガー社のレストアサービスのモデルカーとして公開されたのが「ハリウッド・コミッション」というモデルだ。

●シンガーの始まりをリスペクトした1台

　こちらはシンガー社の創業者であるロブ・ディキッソン氏が、2003年にレストアした1969年式の「911E」をモチーフとしたものである。

　バハマイエローのボディはカーボン製で、ブレーキローターにはカーボンセラミックが採用されている。搭載されているエンジンは、空冷フラット6の4リッターで、これに組み合わされるトランスミッションは6速MTだ。エキゾーストシステムはチタン製となっている。

　シンガー社は、ポルシェ911という世界でもっとも象徴的なスポーツカーへのオマージュとして、アイコニックなデザインに情熱を注ぎ、細部にいたるまで細心の注意を払い、オーナーそれぞれの希望を活かしたレストアをおこなっている。

　伝統と最新の技術や材料科学を融合させる「Reimagining」が、シンガー社のコンセプトだ。創業から10数年と歴史はまだ浅いが、すでに日本はもちろんドイツやスイス、オーストラリア、ニュージーランド、台湾へと、グローバルネットワークは拡大している。

＊　＊　＊

シンガーの創業者であるロブ・ディキンソン氏は、これまでの自社のあゆみを次のように振り返っている。

「私の1969年型911のレストアは、非常に個人的なプロジェクトでした。毎日、ハリウッド・ヒルズでこのクルマを走らせていると『売ってくれないか』と声をかけられることがありました。私の答えはいつもノーでした。

　しかし、この経験は、究極の空冷911に対する個人的なビジョンを他のオーナーが追求できるようにするための方法として、シンガー社を設立するきっかけとなりました。

　それ以来、私たちはその道を歩んできましたが、最終的には動力学と軽量化の研究をおこなうことになりました。

　今回、英国で製作したDLSの最初の顧客仕様車をカリフォルニアでお披露目することができたのは、私たちにとって重要な節目となりました。

　カリフォルニアの施設で完成した最新のレストア車と並んでいることは、非常に誇らしい瞬間であり、大西洋の両側にいる素晴らしいチームと素晴らしいカスタマーの才能を示す究極の証です」

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