みなさんこんにちは。今回のドイツ現地レポは、「ズバリ、カンパニーカーとはなにか?」をテーマにお届けします。カンパニーカーは直訳すると「社有車」となり、ドイツではFirmenwagen(フィルメンヴァーゲン)もしくはDienstwagen(ディーンストヴァーゲン)と呼ばれています。
日本においても社有車は存在しますが、ドイツにおいては存在意義や利用法、社有車が与えられる人まで、日本とは多くの違いがあります。ドイツの都市部では一般的な存在で、かつドイツの自動車メーカーにとっても大きな販路のひとつにもなっているカンパニーカー。今回の記事では、その概要を紹介していきます。
クルマ好きは万国共通!?シャコタンすぎるゴルフ6GTI@ドイツ現地レポ
■ドイツにおけるカンパニーカーとは
最初に、ドイツにおけるカンパニーカーとはどんなものなのか?ということを紹介しましょう。
ドイツで企業を始めると、まずは社有車が必要になります。公共交通機関で行ける場所は限られていますし、鉄道やバスに遅延が発生するのは日常茶飯事だからです。社有車はどうやって手に入れるかというと、企業で購入するか、リース会社と契約するか、のどちらかになります。ある程度の規模の企業になると、後者を選択する場合が多いようですね。
そして、顧客訪問や出張、ちょっとした輸送業務まで柔軟に対応できるよう、企業側は従業員に社有車を貸与し、それを通勤やプライベートでも使用できるようにしているのが「カンパニーカー」と呼ばれる制度です。
ドイツにおいて、企業が所有するクルマは基本的に「営業資産」扱いとなります。つまり、このクルマにかかるコストは「営業経費」とみなされるのです。カンパニーカーの使い方は営業用、通勤用、私用の3種類に分けられていて、私用として使う場合は「現物給与」として扱われます。現物給与として扱われるために、賃金税と付加価値税の課税義務が発生します。
カンパニーカーが貸与される基準は企業によってまちまちですが、多くの場合、クルマを頻繁に使う部署の社員や、中間管理職以上の幹部社員・役員に対する就業規定の一部として規定されています。もちろん、家族経営の会社や規模の小さな企業についてはこの限りではありません。車種については、企業が契約しているリース会社の車種リストから選ぶことが一般的で、新車・中古車どちらの場合もあるようです。
■カンパニーカーのメリット、デメリット
カンパニーカーのメリットは、自分のクルマを購入しなくてすむことと、日々の整備や定期点検・車検等にかかる費用は企業負担となること、リース会社と契約している場合定期的に新しいクルマに乗り換えられることの3点です。
カンパニーカーとして選べる車種リストに載っているのは、中規模以上の企業ならメルセデス・ベンツのCクラスやEクラス、BMWの3シリーズや5シリーズ、アウディのA4やA6といったクラスのものになり、役員級になればメルセデス・ベンツのSクラスといったさらに上級のモデルも選べるようになります。とはいえ、ドイツで最もカンパニーカーとして導入されているブランドは、フォルクスワーゲンではあるのですが。
こうしたクルマが選ばれる背景は、耐久性に優れ、デザインについて一貫性があり、荷物がたくさん積めて、アウトバーンを走っても疲れにくく、ある程度高級だけれどもスタイリッシュで控えめ、という点が重視されるからです。従って、燃費がよく荷物もたくさん積めるプレミアムクラスのディーゼルエンジン搭載ステーションワゴンは、カンパニーカーの定番車種として長年愛されてきました。
カンパニーカーのデメリットは、自己負担が決して小さくはないこと、ガソリン代の支払い方法や損害保険の支払い範囲について企業側と細かく調整しなければならないこと、社有車私用に関する税制度は頻繁に変更されること、の3点です。
カンパニーカーの課税対象額の計算は、非常に細かく厳密な記入が必要となる「運転記録簿式」や毎月定額であるものの走行が少ない月には損をしてしまう「1%方式」などがあります。筆者がカンパニーカーを利用している方にヒアリングしたところ、上記どちらの方法でも、月400ユーロから800ユーロ(約5~10万円)を給料から天引きされているケースが多く見受けられました。この金額を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだとは思いますが、少なくとも「決して少額ではない」とはいえるのではないでしょうか。
社有車私用に関する税制度については、電気自動車の関する規定が追加されたばかりで、今後もこうした細かい変更が毎年のように続いていくと考えられます。
■カンパニーカーは制約が多い?
筆者がドイツに移住したばかりのとき、無邪気に「なんていい制度なんだ!」と思っていたカンパニーカー制度ですが、住んでいるうちにいろいろなマイナス面も聞くようになりました。
カンパニーカーで選べる車種が、とにかく大きなフラッグシップサルーンしかなく、仕方なく乗ったもののすぐに自損事故を起こしてしまったとか。カンパニーカーで選べるメーカーが1社しかなく、頻繁に壊れるから他のメーカーに乗り換えたいのにそれができないとか。新車当時価格から課税額を決定するため、中古車をカンパニーカーとして乗っていると損している気分になるとか。やはり、物事には一長一短があるようです。
今後は、電気自動車の利用も本格化してくため、カンパニーカーのあり方も急激に変わっていくことでしょう。これからのカンパニーカーがどうなっていくのか、ドイツの地で引き続き注目していきたいと思います。
[ライター/守屋健]
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