ホンダ初の量産乗用車「N360」は、今でも人気の軽旧車!
2輪で活躍してきたホンダが、1967年に初めて量産した乗用車が「N360」だ。広い車内空間を確保するために前輪駆動(FF)を採用。ライバル勢は軽量ハイパワーを武器とするため2ストロークエンジンを採用するなか、2輪で培った技術を結集させた高出力4ストロークエンジンを搭載している。戦後復興からまだまだ発展途上だった1960年代に、一般家庭へのクルマの普及を命題として生まれたN360は、誕生から60年以上の月日が過ぎてもなお根強いファンが多い。今回出会った車両は、N360歴20年になる生粋のホンダ好きオーナーによる、こだわりの「ツーリングSサンルーフ仕様」だった。
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初めてのN360は走り屋魂に火をつけるチューニング仕様だった
N360にキャンバストップを備えたグレード「N360 サンルーフ」は、クルマを所有することがまだまだ一般的ではなかった1968年に登場している。当初は1グレードのみしか発売されていなかったが、ホンダ初の自動変速機であるホンダマチックを搭載した「N360 AT」や、さらなる高出力化を目指したツインキャブレター仕様の「T/TS/TM」。さらにはライトバンタイプの「LN360」など、1車種でさまざまな顧客ニーズに応えようと、当時のホンダはこの初の量産乗用車に多彩な仕様を追加していった時代だった。
今回の車輌のオーナーである村山雅俊さんは、18歳で免許取得直後は、日産「シルビア(S13)」を駆り、峠の走り屋としてのカーライフを満喫していた。その過程で、愛車を自ら修理する技術を学んだことが、旧車生活を始めるきっかけとなったそうだ。
「たまたま見つけたステップバンが可愛いなと思って購入したのですが、それが人生で初めての旧車でした。自分で鈑金をしつつ、修理するためにパーツを探していたときに見つけたのが、最初のN360です。見た目はノーマルだけど、エンジンがチューニングされていた個体で、購入価格は4万円。当時にしても破格の値段でしたが、安かった理由は不人気のマイナーチェンジ後の車両、いわゆる1969年式で、しかもオートマだったからです」
ステップバンをきっかけにして、交友関係は旧車仲間も増えていった。その後、N360に替わってツーリングで峠を走ることが多くなったため、オートマでは物足りなさを感じるように。元々走り屋をしていたほどなので、やはりマニュアルが欲しくなる。そんな欲望が沸いてきたときに、たまたま巡ってきた次なる出会い。それが、現在の愛車となる1968年式の個体で、グレードは「デラックス」だった。
同時に手に入れた純正サンルーフが「ツーリングSサンルーフ仕様」を作るきっかけに
「この車輌はクルマ屋さんでずっと眠っていた個体です。入手条件は、自分で修理して乗ること。もちろんステップバンとN360 ATでいろいろと経験を積んでいたので、迷うことなく譲ってもらいました。そのときに一緒に付いてきたのが、屋根だけ残されていた純正のサンルーフ。最初はどうしようか悩みましたが、せっかく純正パーツが手に入ったのだからと、思い切ってDIYでサンルーフを装着することにしたのです」
貴重な旧車の屋根をブッタ切ることになるが、村山さんが目指したのはデラックスをベースとした、できるだけ本物に近い「ツーリングSサンルーフ仕様」だ。「屋根を切った瞬間の感触は今でも覚えています」と笑って当時のことを振り返る。
緊張の一瞬を過ぎれば、後は突き進むのみ。サンルーフの装着だけに留まらず、エンジンはシングルキャブから「ツーリング」に搭載されていたツインキャブへと載せ換え。他には、デラックスではブルーガラスだったものを、こちらもツーリングに採用されていた白ガラスへと変更。エンブレムもデラックスはシルバーのため、ツーリング用のゴールドへと変更済み。こうして各部をリニューアルすることで、ほぼ完璧なツーリングSサンルーフ仕様が完成した。
ちなみに、外観上でデラックスが残されているのは、小さな三角窓のみ。ここだけブルーガラスのままだが、これを見てこの個体のベースがデラックスであることに気付く人は、ほとんどいないだろう。
「シートやフロントブレーキ、ホイールなどは自分の好みで変更していますが、“ツーリングSサンルーフ仕様”としては完全にやり切れたと思っています。今後はこのN360を含めたもう1台のN360とLN360、合計3台の愛車を、3人の息子に1台ずつ受け継いでいってもらうことが目標です!」
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