今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「トヨタ エスティマ ハイブリッド」だ。
トヨタ エスティマ ハイブリッド(2001年)
世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスに初めて接したときは、そのスタイルやパッケージング、インパネまわりのインターフェース、そして運転フィール(特にブレーキ)など、今までのクルマとは違う感覚を覚え、少なからず「近未来から来たクルマ」であることを感じさせてくれた。だが、今度のエスティマ ハイブリッドは違う。何もかもが自然で、何も知らされずに運転すれば、普通のエスティマとの違いにはほとんど気づくことはないだろう。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
イグニッションをオンにするとエンジンは始動するが、バッテリーにあまり負荷がない状態ではすぐにエンジンは停止する。セレクターをDに入れ、アクセルを踏み込むとモーターのみで発進し、スタート時は後輪も駆動されるがすぐに前輪のみとなる。市街地レベルの加速では動力源はエンジンに変わり、アクセルを戻すとすぐに回生発電を行なってバッテリーへ充電する。
全開加速を試みると、エンジン車のエスティマのV6サウンドと異なる少し軽めの4気筒サウンドを発し、エンジン+モーターの4WDで速度を上げていく。加速性能は、このクラスのミニバンとしては不満のないレベルにある。高速からのエンジンブレーキでは後輪のみで回生発電を行ない、車速がある程度落ちると前輪に移る。試乗後に技術者から聞いた話では、回生発電力が大きいので高速時は後輪のみで十分とのことだった。実際、市街地レベルの走行でも回生発電は十分で、バッテリーへの充電は早かった。
電子制御でラインのない(本当はバックアップ用にラインはあるのだが)バイワイヤ式のブレーキシステムのフィールも自然で、効きはいい。コーナリング時には、若干車重の重さを感じるのは否めないところ。タイトコーナーの立ち上がりでは後輪がモーターで駆動されるが、トラクションに問題がなければすぐに前輪駆動のみとなる。
・・・といった一連の動きは、実はセンターダッシュ上にセットされたエネルギーモニターの画面を見ていない限り、まったくわからないのだ。ミニバンとしての使い勝手の良さはエンジン車のエスティマと変わりはない。車両価格差は50万円ほどあるのだが、税金などは優遇されている。まさに、これは21世紀のミニバンだ。
最近、政府では「政府公用車をすべて低公害車にする」という話が出ているようだが、公用車にはぜひエスティマ ハイブリッドを選んでもらいたいところだ。ムービング オフィスとしてのスペースも十分だし、トヨタに頼めばカタログにはないブラックのボディカラーも用意してくれるに違いない。ぜひ、検討して欲しいところだ。
いずれにせよ、プリウスに次ぐトヨタのハイブリッドカー第2弾のエスティマは、システムこそ進化しているが一見(一乗?)した限りではそれを感じさせないものであった。ハイブリッドカーの王者の座は、当分トヨタから揺るぎそうにない。
■トヨタ エスティマ ハイブリッド Gセレクション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4770×1790×1780mm
●ホイールベース:2900mm
●車重:1860kg(7人乗り)
●エンジン形式:直4・4バルブDOHC+2モーター・横置き4WD
●排気量:2362cc
●エンジン最高出力:96kw(131ps)/5600rpm
●エンジン最大トルク:190Nm(19.4kgm)/4000rpm
●モーター最高出力:13kW+18kW
●モーター最大トルク:110Nm+108Nm
●ミッション:スーパーCVT(無段変速機)
●タイヤ:205/65R15
●当時の価格:363万円
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