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いま水素やバイオマス燃料でのレース参戦にメーカーが熱心! だが乗用車への「採用」で無視できない「燃料精製」の陰にある真実

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いま水素やバイオマス燃料でのレース参戦にメーカーが熱心! だが乗用車への「採用」で無視できない「燃料精製」の陰にある真実

 この記事をまとめると

■トヨタとマツダとスバルが水素とバイオマス燃料を使う車両でスーパー耐久に参戦している

ガソリンや軽油よりも安いのになぜ? タクシーに採用されるLPガス車が乗用車に広まらないワケ

■どのような水・食料を使用しているかの背景を含めて検証した資料を公開すべきだ

■少なくとも乗用車で水素やバイオ燃料を利用することへの未来は厳しい

 水素やバイオマス燃料を使ってレースに参戦しているが……

 ガソリンにかわる燃料でモータースポーツに参加することは、目新しいことではない。米国のインディカーレースでは、長年にわたりアルコール燃料を使ってきた。ル・マン24時間レースでは、かつてフランスのチームが石油液化ガス(プロパンガス)を使って参戦したことがある。トヨタ車体は、ダカールラリーに生産車クラスで参戦し、てんぷら油の廃油を使ってクラス優勝を果たし、連覇している。

 昨年から国内で話題を提供しているのが、トヨタの水素エンジンだ。呼応するかたちでマツダがバイオディーゼル燃料での参戦を昨年から開始した。スバルも開発中のバイオガソリン燃料で参戦する計画だ。3社が参加するのは、スーパー耐久選手権である。

 当初、トヨタは特別参加枠の賞典なしで参戦したが、シーズン途中から特別なクラスが設けられ、クラス優勝を争えるようになった。耐久レースであり、かつ市販車を基にした車両を使っての競技への参戦となり、将来の量産車への適応を視野に入れた取り組みと見ることができる。

 ただし、水素にしてもバイオ燃料にしても、その原理や背景をしっかり検証したうえでなければ、量産技術への転用は難しいだろう。

 水素は、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電で水を電気分解し、そこから水素を手に入れるとする。だが、理科の実験ならビーカーの中の水に電気を通せば、ブクブクと気体が生じるが、レースはもとより将来の産業構造として水素を製造するとなると、そう簡単ではない。

 なぜなら、水(H2O)は非常に安定した液体であり、それを水素と酸素に分離するためには、不安定な状態にしたうえで電気を使わなければならないからだ。不安定な状態とは、高温の蒸気の状態にすることだ。

 次に、その水はどのような水を使うのかも検証する必要がある。もし、飲料水にも使える水を利用するなら、水不足への懸念が残る。気候変動の影響で、米国の西海岸では降雪が少なく、すでに飲料水確保への懸念が起きている。日本はこの冬の降雪量が多かったが、6~7月にもし枯れ梅雨ともなれば、たちまち水不足の懸念が生じる。普段何気なく使っている水は、人間が生きるために不可欠な液体だ。それを無暗に水素製造に使ったら、エネルギーはあっても飲み水が手に入らないという事態となりかねない。

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 また、そもそも水素を車載するにあたり、35MPa(メガ・パスカル=約350気圧)であれば、二酸化炭素排出量を減らせるが、既存の燃料電池車(FCV)が使う70MPaでは、逆に二酸化炭素排出量を増やしてしまう懸念が、火力発電を使う電源構成比では生じる可能性がある。

 その理由は、水素を圧縮すると、気体の物性として温度が上がる。気体は温度が上がると密度が低くなるので冷却しなければならない。ターボエンジンで高い過給圧を使うとインタークーラーでの冷却が必要になるのと同じ理屈だ。それでもターボチャージャーの過給圧はせいぜい大気の数倍だ。しかし、水素タンクには大気の700倍もの水素が圧縮され収められている。その圧縮過程で熱を生じ、それを冷却するのだから、どれほどの電力を消費するかわからない。

 液体水素も同様だ。マイナス253℃という極低温にするためには電力が必要だ。冷蔵庫の冷凍庫の温度が-18℃だから、その14倍以上に冷やさなければ水素はガスから液体にならない。そのための電力消費量も膨大であるはずだ。家庭電化製品のなかで、冷蔵庫が多くの電力を消費する理由もそこにある。

 もし、断熱容器に入れるだけで冷却し続けなければ、1週間ほどで液体水素はガス化し霧散してしまう。BMWが2000年ごろ、大々的に水素エンジン開発を行いながら手を引いたのは、エンジン出力が出ないだけでなく、BMWが選んだ液体水素での移動は、駐車時間が長くなると水素を入れ直さなければならないからだ。

 バイオ燃料についても、廃棄される油を活用するなら逆に廃棄物を減らせられると思うが、大量にバイオ燃料が必要になると、そのために廃棄油が必要になるという矛盾に直面する。

 もしバイオ燃料用のための植物を耕作するなら、日本はいま食料需給率がカロリー換算で40%を下まわっている。食べ物を輸入に頼っているということだ。耕作放棄地の課題を抱える日本だが、だからといって燃料のための耕作を行ったら、バイオ燃料はあっても食料がない事態となりかねない。石油以外の燃料を混ぜるバイオ燃料はすでに市場で利用されてきたが、21世紀初頭に欧州で注目されたバイオ燃料の耕作は、その後、沙汰闇だ。

 エネルギーは暮らしに不可欠だ。しかし、その暮らしを支えるのはまず食料と水である。それを少なくともカロリー計算で自給自足できる体制を国内に確立したあと、エネルギーの選択をすべきだ。その点において、少なくとも乗用車で水素やバイオ燃料を利用することへの未来は厳しい。

 かつて、モータースポーツへの参戦は「走る実験室」と形容された。だが、物事の原理原則を踏まえた挑戦でなければ、企業が取り組む意味は薄まりかねない。自動車メーカーは、自らに都合のよい側面だけでなく、背景を含め検証した資料を明確に公開すべきである。

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みんなのコメント

34件
  • 「燃料精製」の陰にある真実

    海外から原油を輸入し国内の製油所で精油します。
    各種の油に分かれます。その過程で全体の5割がガソリンと軽油が出来ます。
    EVもナフサ由来のプラ樹脂(軽量化)やタイヤに使います。化繊も塗料もそうです。
    石油全体のウチ、ナフサは1割しか取れません。
    ナフサの需要は高まる。5割を占めるガソリンと軽油はどうするのか?語らない。

    直接、内燃機関で燃やしたほうが合理的。
  • 水素もEVも問題点は同じ。
    製造、運搬、供給、貯蔵のいずれも現在の自動車を上回る「量」が見込めないないことでしょうね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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