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もはやフルモデルチェンジなみ! 新型レクサスISの驚異的な進化とは

掲載 更新 11
もはやフルモデルチェンジなみ! 新型レクサスISの驚異的な進化とは

新型レクサスISは、マイナーチェンジの域を超えた改良がいくつも施されている。フルモデルチェンジと言ってもおかしくない改良のポイントを世良耕太が解説する。

そこまでやるの? マイナーチェンジとは思えぬISの改良

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3代目にあたるレクサスISは2013年5月に国内で販売開始された。2016年10月にはマイナーチェンジを実施。内外装を一新したのにくわえ、ダンパーの仕様変更を行い、安全運転支援機能の強化を図った。ここまではよくある流れであり、経験則にあてはめてみれば、この次はフルモデルチェンジが控えているのだろう、と、想像できた。

しかし、(トヨタ自動車の高級車ブランドである)レクサスはそうしなかった。2020年11月にISに対しておこなったのは、2度目のマイナーチェンジである。慣例を破るイレギュラーな動きだ。トヨタと業務資本提携を結ぶマツダは、直列6気筒エンジンを搭載する新開発のFRプラットフォームを「この先2年で投入する」と、11月9日の決算説明会で言及した。2022年度内には投入されることになる。次期ISはマツダの新プラットフォームを共用すると思われるので、この先わずか2年のためにフルモデルチェンジするのは非効率。だからマイナーチェンジで延命することにした……。

といった想像力のたくましい(?)勘ぐりも可能であるものの、公式にはレクサスLSやLCが採用する「GA-Lプラットフォーム」を、採用すると重くなってしまうため、プラットフォームを変えないマイナーチェンジに留めたのが理由という。ISは“コンパクトFRスポーツセダン”を標榜するからだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAクルマを操る楽しさを高めるためには、重くしたくないし、大きくしたくない。いかに新世代とはいえ、ISよりも大きく重たいLSやLCをカバーする目的で開発したプラットフォームを採用すると、ISの狙いを実現できなくなってしまう。だから、プラットフォームをキャリーオーバーすることにしたというのだ。

ISはプラットフォームを切り換えていないからマイナーチェンジと称しているわけだが、プラットフォームをキャリーオーバーしていてもフルモデルチェンジを主張して一向に差し支えない。例えば、2020年2月に発売された4代目フィットは3代目のプラットフォームをベースに開発されている。ISは律儀に“マイナーチェンジ”と、称しているが、施された変更は通常のマイナーチェンジの範ちゅうを大きく超えている。「そこまでやるの?」と、呆気にとられるレベルだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA量産車をベースにレース仕様を仕立てるような改良

走りのパフォーマンスを高めるべく、新しいISは従来と比べワイドなタイヤを履く。従来のベースは225サイズだったが、235サイズになった。この幅広タイヤを収めるため、全幅は30mmワイドになって1840mmになっている。当然、サイドビューを構成するボディパネルの金型は作り直しになる。

マイナーチェンジの場合はコストを抑えるため、エクステリアの変更部位は最小に抑えたい。せいぜい、フロントバンパーの形状を変更してお化粧直しをするか、リアコンビランプの意匠を変更して“新しくなった感”を演出するくらいだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAところが、ISの場合は全面刷新と言っていいほどに手が入っている。サイドビューだけでなくフロントマスクも全面的に新作だ。ヘッドライトの意匠を変えるだけでも、バンパーの形状を変えるだけでもなく、総入れ替えをして新たな表情を作っている。

圧巻はトランクリッドだ(トヨタは「ラゲッジアッパー」と呼ぶ)。Cピラーから続くシャープな稜線がトランクリッドのトップを巡って、新しいISのリアビューを引き立てている。このR3(半径3mm)の稜線を際立たせるために世界初の新しい工法を開発した。プレスの工程を増やせばできないことはないが、そうなるとコストアップにつながる。そこで、工程を増やさずに実現できる技術を編み出したのだ。通常、マイナーチェンジでここまで手の込んだことはやらない。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA幅広のタイヤを装着すればグリップ能力は高まるが、そのぶんタイヤが路面から受ける力は強くなるので、力を受け止めるボディの強化が必須になる。土台がしっかりしていなければ、コイルスプリングやダンパーなど、サスペンションを構成する部品が適正に機能しないからだ。マイナーチェンジ版のISは、サスペンションの入力を受け止めるフロントのサイドメンバー(エンジンルームと車室を仕切る隔壁からクワガタムシのハサミのように突き出た2本の四角い柱状構造部材)は、スポット溶接の打点を55点も追加した。また、おなじくフロントサスペンションの入力伝達経路であるサイドラジエターサポートを補強している。

リアサスペンションの入力が伝わるルーフからCピラーにかけては、リインフォース(剛性を強化するあて板のような部材)の面積を増やすと同時に、力の伝達経路を増やして力を受け止める能力を高めた。まるで量産車をベースにレース仕様を仕立てるような、手の込んだ剛性強化を行っている。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAホイールの取り付け構造も大きく変更した。従来はハブベアリングから突き出したスタッドボルトにナットを締め込んでホイールを固定する構造だった。レクサスISに限らず、国産車に一般的な方法だ。マイナーチェンジ版は、ボルトを、ハブにあいた穴にねじ込んでホイールを固定するハブボルト締結構造を採用した。欧州車によく見られる方式で、BMW「Z4」のプラットフォームを共有するトヨタ「GRスープラ」がこの方式を採用している。

ハブボルト締結構造の採用は、ホイール締結部の剛性を高めて走りの質感を高めるためと、軽量化(1台あたり約1kg)のためという。軽量化といえば、コイルスプリングとスタビライザーに高張力材を採用したほか、フロントサスペンションのアッパーアームを鉄からアルミに変えている。足まわりの基本を形成する構造の変更なので、通常はフルモデルチェンジでおこなう領域だ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA電動パーキングブレーキの採用

室内に目を向けると、パーキングブレーキが足踏み式から電動式(スウィッチタイプ)になったのが目を引く。

シフトセレクターを「P」に入れれば自動でパーキングブレーキがかかり、アクセルペダルを踏むと自動で解除される(スウィッチ操作での手動オンオフも可能)。

HIROKI KOZUKA軽自動車にも普及が進む装備を遅ればせながら採用した格好であるが、マイナーチェンジで追加するのはめずらしい。リアのブレーキユニットまわりの仕様変更や配線、制御ソフトウェアの変更などをともなうので、フルモデルチェンジのタイミングで行うのが普通だ。

電動パーキングブレーキ(EPB)の採用によって運転支援システムの機能が高まったのも大きい。これまで、レーダークルーズコントロール(高速道路上で車速を維持。先行車がいる場合は車間距離を維持しながら追従)は一定の車速以下になると解除されていたが、EPBを手に入れたおかげで全車速対応になった。先行車が停止すれば自車も自動的に停止し、EPBを使って停止状態を保持してくれるようになったのだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAここまで記してきたのは、ISが“マイナーチェンジ”をするにあたって施した変更点の一部にすぎない。しかし、マイナーチェンジと呼ぶにはスケールが大きすぎて「変わっていないのはむしろプラットフォームだけ」と、皮肉りたくもなる。

実質的には、フルモデルチェンジに匹敵する、気合いの入ったビッグなマイナーチェンジなのだ。

HIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKAHIROKI KOZUKA文・世良耕太 写真・小塚大樹

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