ライバルほぼ不在の大型ラグジュアリーSUV
2006年から2013年にかけて生産された初代メルセデス・ベンツGLクラスは、ライバルがほぼ存在しない、大型のラグジュアリーSUVだった。ランドローバー・レンジローバーより全長は130mm近く長く、5110mmもある。
【画像】他を寄せ付けない「王者的」世界観 メルセデス・ベンツGL 初代と2代目 現行GLSも 全113枚
その大きさを活かし、ホイールベースは3075mm。大人7名が快適に移動できる、正真正銘の7シーターといえる。ロンドンからアルプス山脈までのロングドライブへ出かけても、3列目でも不満は出ないだろう。
しかもメルセデス・ベンツとして、先進的な装備を満載。四輪駆動システムの4マティックには、トラクション・コントロールと連動するロックデフを、前後アクスルと中央に搭載する。滑りやすい雪道やオフロードでも、安定して大きなボディを導けた。
ボディの位置は高く、前後のオーバーハングは長すぎず、バンパーの下端が路面へ接する機会は限定的。ローレンジ・ギアとヒルディセント・システムも備わる。ホイールベース間は、スキッドプレートが保護する。
現在の英国の中古車市場を俯瞰すると、ガソリンエンジンの大多数は、自然吸気の5.5L V8を搭載した500。最高出力382ps、最大トルク53.9kg-mを発揮し、0-100km/h加速は6.5秒と充分に鋭い。4.7L版は少ないようだ。
ディーゼルエンジンは選択肢が増える。最も多いV6ターボの320 CDIは、221psと51.8kg-mがうたわれた。数は少ないが、V8ツインターボの420 CDIも出てくる。302psと71.2kg-mを誇り、キャンピングトレーラーの牽引も余裕でこなせる。
他を寄せ付けない王者的な世界観
初代GLは2009年にフェイスリフト。フロントマスクのデザインが新しくなり、テールライトはLEDに。シートは形状が新しくなり、7速オートマティックは改良を受けた。
同時期に、環境性能を高めるべく、ディーゼルエンジンには尿素を用いたアドブルー・システムを採用。320 CDIは40ps増強され、350 CDI ブルーエフィシェンシーへ改称された。420 CDIは、廃盤となった。
ガソリンターボの500は継続。燃費は望めないが、ディーゼルエンジンで稀にドライバーを悩ませる、パティキュレート・フィルターの不調からは開放される。中古車では走行距離が短いものも多い。
大きなSUVだが、エアサスペンションの3モードを使い分ければ、優れた乗り心地と操縦性を愉しむことは可能。スポーツ・モード時は姿勢制御が引き締まるぶん、路面が荒れてくると乗り心地への影響を避けられないが。
インテリアはSクラスの水準。3列目のシートも、電動で角度を調整できる。
ボディサイズは大きいものの、スクエアな形状と大きなミラー、広いガラスエリアのおかげで、比較的取り回しはしやすい。駐車も、想像より簡単にこなせる。
そんな大型ラグジュアリーSUVが、比較的お手頃な価格で売りに出ている。ただし、メンテナンス費やガソリン代、税金など、相応の維持費は求められる。それを工面できれば、他を寄せ付けない王者的な世界観が我が物になるはず。
新車時代のAUTOCARの評価は
メルセデス・ベンツGLの、能力の幅広さに疑う余地はない。オンロードだけでなく、オフロードでも見事な走りを披露する。
ガソリンターボとディーゼルターボ、2種類のエンジンも優秀。豊潤な動力性能を選ぶか、不満ない走りと優れた燃費性能を選ぶか、チョイスが可能だ。(2012年4月2日)
オーナーの意見を聞いてみる
ハーマン・カーン氏
「2011年式の350 CDIを購入してから、7年目になります。当初の走行距離は12万8000kmほどでしたが、今では20万kmほどへ伸びました。多彩な能力を備えた、プレミアムSUVですね」
「ただし不具合は少なくなく、修理の請求が高額になることも。自分は正規部品をディーラーで取り寄せ、独立系の専門ショップで整備してもらうことで、費用を抑えています」
「エアサスペンションのコンプレッサーとエアスプリングを、最近交換しました。走行距離と年式を考えれば、納得できる範囲でしょう。まだ数年は乗りたいと考えています。自分が望む通りの、見事なオールラウンダーだと思います」
購入時に気をつけたいポイント
ボディ
テールゲートは電動。制御モジュールの故障で開かなくなる。四隅の擦り傷だけでなく、オフロード走行での損傷がないか、下回りも観察したい。
エンジン
2008年式より以前の5.5L V8ガソリンターボでは、シリンダーヘッド後部のカムプラグからオイル漏れしやすい。V6ディーゼルターボの350 CDI ブルーエフィシェンシーでは、アドブルーの残量を確認したい。
320 CDIでは、シールの劣化によるオイルクーラーからのオイル漏れや、温度センサーの不調などが起きがち。クランクケースのベンチレーション・システムが原因で、オイルがターボ内に流入することがある。
トランスミッションとブレーキ
定期的なフルードとフィルターの交換が、ATの寿命を伸ばすカギ。放置すると、異音や振動、フルード漏れを招くことも。センサーのエラーは、接触不良や腐食、汚れなどが原因になっている場合も。
ブレーキディスクとパッドの交換は、安くできない。ブレーキフルードは、2年毎の交換が望ましい。
サスペンションとステアリング
エアマチックと呼ばれるエアサスペンションは、不調が起きるとメーターパネルにエラーが表示される。コンプレッサーの故障、エアストラットの破損、エア漏れやバルブブロックの不調など、原因は多岐に及ぶ。
速度感応式パワーステアリングの動作を確かめたい。高速域でもステアリングホイールが重くならない場合は、ラックのソレノイド不調が考えられる。
インテリア
電子機器など、車載装備のすべてが正常に動くか確かめる。修理は安くない。パワーシートはスライドするだけでなく、電動で折り畳める。
パノラミック・サンルーフは、時間経過とともにシールが劣化し、水漏れしがち。電気系統へ侵入し、悪さする場合も。
知っておくべきこと
GLは、すべてが大きい。車重は一番軽いグレードでも2450kgあり、最大牽引重量は3400kgまで対応。荷室は最前列のシートを残した状態で、2300Lまで拡大できる。
マイナーチェンジ後のエアサスペンションは、最低地上高を307mmまで高められる。最大渡河水深は、600mmもある。
そのかわり、GLで1番燃費の良い350 CDI ブルーエフィシェンシーでも、CO2の排出量は242g/km。500では317g/kmへ増える。
安全性も特徴。全席に3点式シートベルトが備わるだけでなく、最前列には追突時のむち打ちを防ぐネックプロ・ヘッドレストが装備されている。
英国ではいくら払うべき?
5000ポンド(約93万円)~9499ポンド(約175万円)
英国では、フェイスリフト前の初代GL 320 CDIが販売されている価格帯。走行距離は20万km前後と長い。
9500ポンド(約176万円)~1万1999ポンド(約221万円)
フェイスリフト後の、350 CDI ブルーエフィシェンシーが出てくる。走行距離は、こちらも20万km前後。全体的には状態が良くなる。
1万2000ポンド(約222万円)以上
走行距離が10万km前後の、良好なGLをお探しならこの価格帯から。500の場合、1万8000ポンド程度は必要になる。
英国で掘り出し物を発見
メルセデス・ベンツGL 350 CDI ブルーエフィシェンシー 登録:2011年 走行距離:11万9100km 価格:1万5500ポンド(約287万円)
これまでワンオーナーで過ごしてきた、状態の良い初代GL。整備記録と明細が揃い、パノラミック・サンルーフとリア・エンターテインメント・システム、新しいタイヤが付いてくるそうだ。
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