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日野が発表「プロジェクトZ」っていったい何? 大型トラックの電動化が進む訳とは

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日野が発表「プロジェクトZ」っていったい何? 大型トラックの電動化が進む訳とは

■日野が他社も巻き込んで取り組む「プロジェクトZ」とは

 NHKの「プロジェクトX」でも、日産の「フェアレディZ」でもありません。日野の北米法人が2020年10月5日に発表した「プロジェクトZ」は、クラス4からクラス8までのトラックの電動化戦略です。

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 プロジェクトZの「Z」とは、ゼロ・エミッション・ヴィークルを意味しますが、具体的にはどのような戦略となるのでしょうか。また、なぜ日野はこのタイミングでプロジェクトZを発表したのでしょうか。

 日本では聞きなれないトラックのクラスですが、端的に数字が大きくなるとトラックのサイズが大きくなります。

 つまり、日野が今回示したクラス4からクラス8とは、フェデックスなど宅配業者が街中の配達に使う中型トラックから、フリーウエイで長距離移動する大型トラックまでをカバーするという意味です。

 ネット上で公開された発表会では屋外にさまざまな電動トラックが並びました。

 特徴的だったのは、それぞれのトラックを日野が100%仕上げるのではなく、各技術分野のエキスパートとコラボしている点です。

 クラス5のEVトラックには、SEAエレクトロニック社。クラス7のEVトラックには、ヘキサゴンプル―ス社。クラス8のEVトラックではXosトラック社とXパックバッテリー社が協業しています。

 さらに、クラス8の燃料電池トラクターではトヨタが技術支援しています。

 日野とトヨタといえば、2020年3月に国内向けに燃料電池トラックの共同開発を発表していますし、燃料電池バスは東京都バスを含めて実用化されています。

 アメリカでの燃料電池トラックは、2021年前半に試作車を導入する計画です。

 一方で、アメリカのベンチャーや大手自動車メーカーでも、大型トラックの電動化を促進する動きがここへきて一気に加速しています。

 筆頭はもちろん、EV市場のけん引役であるテスラです。

 2020年9月に屋外で開催した株主総会では、3年後となる2023年を目途に新車価格2万5000ドル(約265万円)の可能性を示し世界に衝撃を走りましたが、その現場には量産化を目指す大型EVトラック「SEMI」のプロトタイプが展示されていました。

 そんなテスラに対抗するベンチャーが、二コラです。クラス8の燃料電池トラックの量産を目指しており、GMと提携を結んでいます。

 ただし、2020年6月に米ナスダック市場に上場したのですが、技術の情報開示に問題があると指摘され、同社創業者のトレバー・ミルトン氏が辞任するという事態に陥っています。今後はGM主導型の企業に生まれ変わる可能性があります。

■環境規制への対応以外に「ESG投資」という側面も

 それにしても、なぜこのタイミングで、アメリカの中型・大型トラック電動化が加速しているのでしょうか。理由は大きくふたつあります。

 ひとつは、米カリフォルニア州環境局による、ゼロ・エミッション・ヴィークル(ZEV)規制です。

 ZEV規制といえば、1990年に施行され、同州内で一定数以上(何度か改訂)の新車を販売する自動車メーカーに対して、事実上の電動車販売台数規制をするものとして世界に周知されてきました。

 ZEV規制の中国版として、2019年から施行された新エネルギー車(NEV)規制は、中国の国立自動車研究所とカリフォルニア州環境局が協業して開発したものです。

 つまり、ZEV規制はこれまで、世界の電動車の研究開発に極めて大きな影響を与えてきました。

 そのZEV規制を2024年から中型・大型トラックにも適用するというのです。

 大枠について、2020年6月に公表されました。EV販売台数規制は段階的に引き上げられ、2035年までには、クラス8など大型トラックで75%、クラス4や5など市街地での配送トラックでは100%のEV化を目指しています。

 ただし、トランプ政権は燃費や電動化政策について、現在の連邦規制とZEV規制のダブルスタンダードの状態を見直し、今後は連邦規制に統一させるとの意向があり、カリフォルニア州と意見が対立しています。

 そのため、トラック版ZEV法についても、また先日発表のあった「2035年までに州内でのガソリン・ディーゼル新車販売禁止」についても、11月大統領選挙によって情勢は大きく左右されるでしょう。

 そして、ふたつめの理由が、ESG投資です。

 企業の評価を売り上げ高や利益率などの業績だけではなく、環境・社会・ガバナンスに対する企業姿勢を投資の対象とする考え方です。

 産業界では、とくに物流事業でESG投資が重要視される傾向が強く、これは近年、日本でも起こっている現象です。ヤマト運輸や日本郵便がEVデリバリー車の導入を進めているのも、ESG投資の影響が強くあります。

 このように、アメリカではトラック版ZEV規制とESG投資のダブルパンチで、トラックEV化が加速しているのです。

 日本では、乗用車でもトラックでも、国によるEV販売台数規制が実施される兆候がまだないため、大型EVトラックの本格的な量産は当面先になるでしょう。

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