ダイハツから発売されていた軽商用車『ハイゼットキャディー』が、2021年3月末をもって生産終了になった。
軽商用車としては、『ハイゼットカーゴ/トラック』が大人気のダイハツ。『ウェイク』をベースにし、室内の高さ方向にゆとりがあることが売りだった『ハイゼットキャディー』はなぜ姿を消すことになったのか? その裏側を取材、考察していきたい。
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文/渡辺陽一郎
写真/DAIHATSU
【画像ギャラリー】見た目ウェイクの商用車、ハイゼットキャディー写真集
■ダイハツ「ハイゼットキャディー」とは、どんなクルマだったのか ?
日本の物流を支える上で、欠かせないクルマが軽商用車だ。2020年には172万台の軽自動車が新車として販売され、国内で売られた新車需要の37%に達した。この内の23%が軽商用車であった。
軽商用車は大切な存在だが、すべての車種が順調に売れるわけではない。2021年3月には、ダイハツ『ハイゼットキャディー』が生産を終えた。
ハイゼットキャディーは、2016年に発売された軽商用バンだ。軽乗用車のウェイクをベースに開発された。ウェイクは全高が1835mmで、タントと比べても80mmほど背が高い。軽乗用車では最大級の室内空間を備えるので、軽商用車版のハイゼットキャディーも用意した。
「ハイゼットキャディー」の外観。ほぼ「ウェイク」だ。ただしリアシートが廃された2シーターである。軽で最大の室内高を活用した商用バンという考え方は間違っていなかったと思うが……
またウェイクは2014年に登場して1カ月の販売目標を5000台に設定したが、2015年の届け出台数は1カ月平均で4226台であった。2016年は2736台だから、発売から2年後には目標の約半分まで下がっている。ハイゼットキャディーを設定した背景には、ウェイクの販売不振を補う目的もあっただろう。
そして軽乗用車のウェイクでも、後席を畳めば広い荷室に変更できる。そうなるとハイゼットキャディーは、軽商用車として積載性をさらに向上させねばならない。そこで後席を装着しない2人乗りにして積載空間を広げた。
ダイハツでは、エンジンを前席の下に搭載して後輪を駆動する純粋な軽商用バンの『ハイゼットカーゴ』も用意する。ハイゼットキャディーは、ハイゼットカーゴとウェイクのような軽乗用車の中間に位置付けられた。
そこでハイゼットキャディー売れ行きを見ると、発売直後から伸び悩んでいる。発売の翌年となる2017年の届け出台数は、139台に留まった。2016年の発売時点で設定した1カ月の販売目標は1000台だったから、139台では大幅に下まわる。2018年は1カ月平均で68台、2019年は64台、2020年は49台とさらに下降した。
後輪駆動のハイゼットカーゴは、1カ月平均の届け出台数が2018年は5845台、2019年は5791台、2020年は5425台だ。従ってハイゼットキャディーは、ハイゼットカーゴの1%程度しか売れていない。
■登場時から誤算アリ!? 商用バンにしては…の商品力に問題が?
ハイゼットキャディーの売れ行きが下がった一番の理由は商品力だ。ボンネットの内部にエンジンを収めたウェイクをベースに開発されたから、荷室長は1310mmと短い。ハイゼットカーゴはエンジンを前席の下に搭載してボディの前側を短く抑えたから、荷室長は1860mmに達する。
最大積載量も異なり、ハイゼットキャディーは150kgだ。ハイゼットカーゴの350kgを大幅に下まわった。
ハイゼットキャディーは、フラワーショップなどが、小さくて軽い荷物を配達するのに使うライト感覚の軽商用バンとして開発されている。このコンセプトを考えれば、荷室長が短く最大積載量も軽くて構わないが、それならウェイクやタントの後席を畳んで使えばよい。ウェイクやタントであれば、2人乗りのハイゼットキャディーと違って4名で移動できる。取り引き相手を後席に同乗させる時なども便利だ。実際、ウェイクやタントを仕事に使うユーザーも多く、ハイゼットキャディーは機能が見劣りした。
「ハイゼットキャディー」の室内。「ウェイク」の後席を倒した感じの荷室だ。その結果、荷室長が短い、積載量が少ない、4人乗れないなど、商用バンとして限定的な機能となってしまった
そしてハイゼットキャディーの価格は、2列シートの割にあまり安くない。「X・SAIII」は約138万円で、機能と装備のバランスを考えると、後席と多彩なシートアレンジを備えるウェイクのほうが買い得だ。
一方、ビジネスと割り切るなら、ハイゼットカーゴのほうが長い荷物も積めて便利だ。つまりハイゼットキャディーの機能は中途半端で、ユーザーはハイゼットカーゴか、あるいは軽乗用車のウェイク/タントか、このどちらかを選んだ。
ハイゼットキャディーについて販売店に尋ねると、次のように返答された。
「ハイゼットキャディーは、ほとんど宣伝も行われず、ラインナップされていることを知らないお客様も多かった。仮に街中で見かけても、ウェイクと区別が付かず、ハイゼットキャディーの車名も認識されない。クルマの売れ方として、お客様が街中やTVのCMで見かけて販売に繋がることも多いが、ハイゼットキャディーにはそれがなかった」
リアドア開口部にコンビランプの出っ張りがある時点で実用性に「?」が付く。また室内高がたっぷりあるはずなのに、月並みな荷室高。フラットフロアでかさ上げされてしまった影響だ
「しかも軽商用バンでは荷室が狭いので、ハイゼットカーゴのお客様がハイゼットキャディーに乗り替えることはない。一方、乗用車のウェイクは、タントほどではないが根強く売れており、今後の改良ではオートライトを装着するなど新しい法規にも対応していく」
■「N-VAN」も登場し 軽バンとしての居場所を失う
ちなみにハイゼットキャディーのような軽乗用車をベースにした軽商用バンとしては、ホンダ『N-BOX』から発展した『N-VAN』がある。この売れ行きは堅調で、登場した翌年の2019年には1カ月平均で3769台、2020年には2699台を届け出した。ハイゼットカーゴに比べると少ないが、ハイゼットキャディーよりは好調に売れている。
N-VANが相応に成功した理由は2つある。まずはN-BOXとは違う商用車として独自の工夫を施したことだ。後席に加えて助手席も畳めるから、1名乗車時には、運転席の周囲がすべて平らで床の低い大容量の荷室になる。左側のピラー(柱)は、タントのようにスライドドアに内蔵され、前後のドアを両方ともに開くと開口幅が1580mmに達する。
これらの機能により、長い荷物をボディの左側面から積み込むことも可能だ。荷物の積み降ろしをする作業効率が優れている。この特徴は、ハイゼットカーゴやスズキ『エブリイ』のような既存の軽商用バンでは得られない。
ウェイクそのもののインパネは、バンとしてみれば非常に豪華仕様なのかもしれない。ただ大型ポケット類がないなど、バンに必要な機能性には欠けていては「画竜点睛を欠く」といったところか
しかもホンダは従来型の『アクティバン』を廃止したから、軽商用バンはN-VANのみだ。ホンダの販売店と付き合いがあり、軽商用バンが欲しいユーザーは、必然的にN-VANを選ぶ。ハイゼットキャディーと違って、自社にハイゼットカーゴのような競争相手がいないことも、N-VANが堅調に売られる理由だ。
ハイゼットキャディーは、率直にいえば、ウェイクの後席を省いて軽商用バンに仕上げたクルマだった。ウェイクやハイゼットカーゴでは得られない「これが欲しい」と積極的に選ばせる魅力を備えていなかった。堅調に売るには、単純に機能を差し引くだけではダメで、新しい付加価値を与える必要があった。
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みんなのコメント
確か現行エブリィが出るまで軽で1番の全高だったはず
まぁタントがあるからそりゃ売れないよね