ボルボ XC60のSUVとしての万能性は、日本でも広く知られている。一方で、ワゴンボディならではのスリークなスタイリングも確かに魅力。となれば、V60クロスカントリーはまさに絶妙なポジションにいる。(以下の記事は、Motor Magazine 2019年6月号より)
気になるのは、SUVか、ワゴンか
セダンやワゴンが根強い人気を保つ国も依然としてあるのだが、近年、世界的にまんべんなく高い人気を得ているカテゴリーと言えば、それはやはりSUVである。自国の市場サイズが限られるため輸出に力を入れているボルボにとって、SUVは主力商品。そため40/60/90と揃うクラスラインで、新型に世代交代する初出しモデルを必ずSUVとしている。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
最近の例では、大型モデル用新プラットフォーム=SPA(スケーラブル プロダクト アーキテクチャ)を採用して2015年にデビューし、世界の賞典を総ナメする成功作となった2代目XC90だ。セダンのS90やワゴンのV90はその後の登場となった。SPAはその後60シリーズにも採用されたが、やはりモデル展開は2017年上陸のXC60から。V60の導入はその約1年後だった。
ただし、ボルボのSUVラインナップはこのXCシリーズだけではない。もうひとつ、ステーションワゴンの地上高を大幅に高めてAWDシステムと組み合わせた(一部にFWDもあるが)、いわゆるクロスオーバー型のSUVも各クラスに展開し選択肢に幅を持たせている。ワゴン系車名の後に「クロスカントリー」と付くモデルがそれで、2018年9月に上陸した新型ミドルワゴンの2世代目V60にも、このほどV60クロスカントリー(以下、CC)の用意が整った。
歴史的には先輩格? クロスカントリー誕生
実はCCシリーズの歴史はXCシリーズより長い。初デビューは1997年。初代V70に、車高アップとビスカスによる四駆化を施したV70 XC(これでクロスカントリーと読ませた)AWDが追加される。SUV専用となる初代XC90の登場は2002年だから、その5年も前に世に出た、これこそがボルボ初のSUVなのだ。
CCのようなワゴンベースのクロスオーバーSUVを用意するブランドは他にもあるが、ボルボはこのジャンルの老舗のひとつで、しかも今やモデルラインのすべてに展開するほどだから力の入れ方が違う。特徴的なのはクロスオーバーだからといって、オフロード性能に妥協しないことだ。
車高を大幅にかさ上げして最低地上高を大きく取り、これによりアプローチ/ランプブレーク/デパーチャーの各障害角をしっかり確保するのがCCの伝統で、新型V60CCも標準V60に対して地上高を65mm拡大し210mmを確保している。ちなみに今回乗り比べた専用ボディSUVであるXC60の最低地上高は215mm。ほぼ互角で、これが170mm前後に留まる他ブランドのクロスオーバーと雰囲気が決定的に異なるひとつのポイントとなっている。
V60のデザインは上下左右にスリムで伸びやかだ。標準モデルは低全高化を図ったため、CCを作る上での地上高の上げ幅は過去最大となった。そしてこのことが、ボディ全体が宙に浮いたように見える独特のたたずまいを生み出している。全高がもう少し大きく、やや腰高感もあった先代V60CCと見比べると違いは明白で、それがV60CCの基本コンセプトである全天候性能や、アクティブ&アドベンチャーイメージをより強く想起させる要因となっている。
ワゴンボディのデザインは標準V60と基本的に同じだが、ディテールにCC独自の演出を織り込む伝統は今回も守られた。標準ではクロームの縦桟だったグリルはマットブラックにクロームのドットが浮く専用デザインだし、サイドウインドウを縁取るサッシもクロームではなくグロッシーブラックを採用している。前後バンパー下部とサイドシルにはチャコールカラーのトリムが追加され、同色のフェンダーエクステンションへの流れを作り出している。
V60CCのボディサイズは、全長が標準のV60より25mm長い4785mm。全高はV90CCのサスペンションパーツを使った関係で地上高アップ分より5mm多い1505mmで、全幅はフェンダーエクステンションにより45mm広い1895mmとなっている。
XCを凌ぐ荷室のゆとり。実用性に優れたパッケージ
一方、同時に試乗したXC60のスリーサイズは、全長4690×全幅1900×全高1680mm。つまりV60CCとの対比では全長が若干短く幅はほぼ互角。高さは格段に大きい、というわけだ。
ボディサイドに陰影の強いキャラクターラインを入れて躍動感を出しつつも、水平基調の穏やかなフォルムを基本としているXC60は、世に数多あるSUVの中では落ち着いた佇まいと言えるのだが、それでもこんもりとした背の高さは隠しようがない。幅方向もフェンダーエクステンションの追加で1895mmとなったV60CCに対し、XC60は正真正銘のワイドボディと言える。
全高のあるクルマで安定感のあるフォルムを作り出すと全幅が拡大傾向となるのは致し方ない。実際トレッドもわずかながらXC60の方が大きい。この大きさがメリットとなって現れているのがキャビン空間だ。XC60は高さ方向の余裕を生かして乗員の着座姿勢がややアップライトなものとなるが、それでも頭上空間は十分で開放感が強い。アイポイントの高さに伴う見晴らしの良さも魅力と言えよう。
V60CCも標準のV60と比べればアイポイントは高めだが、見晴らしの良さにつながるほどではない。上下方向にややスリムなボディゆえ、乗員姿勢は上体が反りがちで頭まわりも包まれ感が強い。Dセグメントの中では全長方向に余裕があるため足もと空間などの余裕は十分。このあたりは好みの問題だ。
面白いのはラゲッジスペースである。通常、ワゴンよりもSUVの方が高さ方向の余裕が活かせるため容積が大きくなることが多い。実際のところボルボも先代のV60とXC60では、より多くの容積が必要な場合はXC、と明言していたのだ。しかし現行モデルではそれが逆転している。V60CCのラゲッジ容量は通常時529Lで拡大時には1441L。対してXC60は505L/1444Lと、通常時はわずかながらもV60CCの方が大きい。V60は容積型のミドルワゴンとして根強い人気を得ていたが、今はV90に統合されたV70のフォローも重要な役割。それを証明する実用的パッケージングだ。
今回試乗したCCとXCは、ともに254ps/350Nmを発生する2L直4ターボの「T5ユニット」を搭載し、トランスミッションは8速ATを採用する。駆動はともにAWD。XC60は全モデルAWDの展開だが、V60は前後輪をモーターで駆動するプラグインハイブリッドのみAWDで、それ以外はFWDだった。したがってピュアなガソリンモデルでAWDなのは、このV60CCが初だ。
フラットライドなCCは、安心感で差をつける
プラットフォームも構成メカニズムもほぼ同じなのだが、今回の試乗車で決定的に違っていたのがサスペンション。XC60はオプションのエアサスペンションを装備していたが、V60CCはコンベンショナルなスプリング(リアは樹脂製リーフ)を採用している。
その違いもあったのだろう。XC60のライドフィールは角が取れたマイルドな味わい。ゆったりとホイールがストロークするような癒し系の乗り心地だ。ただしそのソフトさゆえ、発進/停止に伴うピッチ方向の動きや、ロールの大きさ、収束などに多少大きさや遅れを感じるシーンもあった。
これと比べるとV60CCはやや張りがありしっかり感が強い。路面によっては時にコツコツとした入力を意識することもあるが、それよりもむしろ重心高が上がったにもかかわらずコーナリング時のロール方向や、路面からの入力によるピッチ方向の動きが明確にフラットなのに感心させられた。
ハンドリングは敏感さを抑え、ステア操作に追従する車体の動きが正確かつ滑らかな、60シリーズの美点を継承している。その上でV60CCは前記したようにしっかり感が強いので、オン/オフロードを問わず、より安心して走れるはずである。
動力性能だが、ボルボの2Lターボは一定距離を走り込むとアタリが出て吹け上がりの軽快感や伸びを増していく傾向がある。今回試したXC60のT5ユニットがまさにそうで、活発に回り回転フィールも極めてスムーズだった。この伸びしろがエアサスとパノラマガラスサンルーフの追加による50kgの重量増(車両重量1880kg)をはねのけた感じ。1830kg(サンルーフ付き)のV60CCと動力性能に決定的な差は見出せず、むしろアタリがまだついていないぶん、V60CCの方が刺激に欠ける部分もあった。
とは言え、いずれもDセグメント相応のワゴン/SUVとしては、動力性能はかなり強力。地上高の拡大とAWD化による高いオフロード性能と、そうは言ってもSUVよりも低全高なことによるオンロードでの機敏さも兼ね備えたV60CCは、絶好の旅の伴侶となってくれそうな一台だった。(文:石川芳雄/写真:永元秀和)
■ボルボ XC60 T5 AWD インスクリプション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:187kW(254ps)/5500rpm
●最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500−4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●JC08モード燃費:12.6km/L
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格(税込):709万円
■ボルボ V60クロスカントリー T5 AWD プロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1895×1505mm
●ホイールベース:2875mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:187kW(254ps)/5500rpm
●最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500−4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●JC08モード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:235/45R19
●車両価格(税込):649万円
[ アルバム : ボルボ XC60とV60CC はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
追突事故を避ける「2秒ルール」ご存知ですか? あおり運転にならず割り込まれもしない、ほどよい安全な車間距離の保ち方をお教えします
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
デザインが素晴らしいだけにもったいない。
明るいブルーのが欲しい!