新型コロナウイルスの世界的流行によって、開幕戦カタールGPの最高峰クラス中止という前代未聞の形で始まったMotoGP2020年シーズンも、様々な努力によって全15戦(MotoGPクラスは14戦)が執り行われ、11月に閉幕。ライダーズチャンピオンはスズキのジョアン・ミルとなった。
2016年から2019年まで4年連続で王者となってきたレプソル・ホンダのマルク・マルケスは、5連覇を目指してシーズンをスタートさせたものの、実質的な開幕戦である第2戦スペインGPで大クラッシュ。そこで負った右腕骨折によってシーズン全体の欠場を余儀なくされ、最終的にホンダ勢にとっては未勝利という苦しい1年間となってしまった。
【ワオ!】大の大人も喜色満面! ポル・エスパルガロ、“自分の”RC213Vとサプライズ対面
年明け早々、HRC(ホンダ・レーシング)のレース運営室室長である桒田哲宏、そしてRC213Vの開発責任者である子安剛裕のふたりがオンラインでの取材に応じ、2020年の振り返りや2021年シーズンへの展望などを語った。
「ひとことで言うならば、“完敗”のシーズンだったと言えます」
桒田室長は、2020年の振り返りきっぱりとそう答えた。2020年シーズンは、タイヤサプライヤーのミシュランが新型構造のモノを供給したこともあり、その適応に苦しんだとも桒田室長は話す。
「冬季テストからですが、リヤタイヤへの適合という面で苦しんでいるところがありました」
「コロナでの(開幕戦)キャンセルという難しい状況もありましたが、なんとかヘレスへ良いモノを持ち込もうと開発を進めて、戦いに行ったのですが、そこでマルケス選手が強い走りを見せてくれましたが、怪我をしてしまうという形になりました」
「(マルケス欠場を受け)我々としても、どうやったらマシンの性能を引き出してもらえるか、それを考えて1年間戦ってきましたね」
その2020年型RC213Vについて開発責任者の子安は、19年型からのアップデートについては“動力性能”に重きを置いていたという。
「基本的には19年型からの見直しですが、エンジンに関しては出力向上とドライバビリティの向上を主眼にして細部まで見直してきました。車体についても加速減速時の安定性、旋回性向上のためにあらゆるところ見直して、変更を加えています」
「20年の開発コンセプトのひとつに、動力性能をさらに向上させるというものがありました。そしてウイリーの抑制という面で、ウイングを用い、ダウンフォースを稼ぐという部分も存在しました」
「ただカタールテストで旋回性に問題があるということが分かり、時間の問題もあったので19年型に戻すという判断を下すことになりました」
子安氏はそう語った。
ただ2020年全体を振り返ると、「直線で(ライバルを)抜ける加速力といった動力性能、それから新しいミシュランタイヤへの適応に時間がかかってしまったことが、課題としては大きかったと思います」と語り、開発サイドとしては2020年型のRC213Vにおいて明確な強みをライダーに与えることができなかった点が、大きな課題だったとも認めている。
そうした状況の中ホンダ勢は、LCRホンダの中上貴晶が引っ張る形でシーズンを展開。ルーキーのアレックス・マルケス(レプソル・ホンダ)やマルク・マルケスの代役を務めたステファン・ブラドルらも徐々に調子を上げていったが、転機は8月末のミサノテストを待たなければならなかった。
「シーズン中盤のミサノテストに、開発と現場側で話をして持ち込んだモノによって、タイヤへの適合や問題点の改善ができました」
子安はシーズン中の開発についてそう振り返る。
「その意味でミサノテストは、我々にとって色々な結果を得られ、ステップアップできた時点かなと思います」
■2021年は3冠奪還を目指す!
そして迎える2021年シーズン。ホンダ陣営はレプソル・ホンダにマルク・マルケスと新加入のポル・エスパルガロ、LRCホンダに中上とアレックス・マルケスという陣営で挑む。
桒田室長は新シーズンの目標について「2021年は3冠奪還というのが一番の目標になります」と断言した。
「去年はホンダの強さを見せられなかったので、今年はやはり『ホンダはこうなんだ』と、ファンの皆さんに感じてもらえるようなレースをして、結果として3冠を奪取する、それを目標にやっていきたいですね」
また子安は“チャレンジャーの想い”だとした上で、やはり3冠を取り戻せるようになモノを全ライダーに対し提供していきたいと意気込みを見せた。
「まずは去年の結果を謙虚に受け入れ、開発側としてはチャレンジャーとして、パワートレイン系、そして車体をしっかり見直していきたいです」
「マルク・マルケス選手は間違いなくホンダのエースライダーですが、サテライト、ファクトリーという点はホンダとしてはあまり考えていないので、4人のライダーに対し、しっかりと3冠を奪還できるマシンを提供できるよう、開発を進めていきます」
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