11月12~13日にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの元F1トラック、オスカー・ファン・ガルベスで争われたTCRサウスアメリカ・シリーズの第6戦は、今季7月開催の第2戦同様に160kmの耐久戦が実施された。
その前戦同様に、週末に向けてWTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のゲストドライバーらが駆けつけるなか、ラファエル・レイス(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)とタッグを組んだネストール・ジロラミ組が、同じくシビックを走らせるファン-アンヘル・ロッソとマティアス・ミラのスクアドラ・マルティーノ組や、ホセ-マヌエル・サパーグ/エステバン・グエリエリ組を撃破。ホンダ・シビック対決を制して勝利を飾っている。
アルゼンチン初戦はリンク&コーの新人がデビュー戦ポール・トゥ・ウイン達成/TCR南アメリカ第5戦
10月末の第5戦からアルゼンチンに舞台を移したTCRサウスアメリカは、シーズンフィナーレまでの終盤4戦を同国内で消化する変則カレンダーを強いられており、このブエノスアイレスでの“エンデュランス戦”を経て、コルドバのオスカー・カバレンから現状開催地未定の最終戦へと、都合4戦が同国内で開催されるスケジュールが確定している。
そのうちシリーズの特徴的な試みとして、コドライバー登録によりピット作業時のドライバー交代を盛り込んだ年間2戦の耐久レースが組み込まれており、その2度目のエンデュランス戦に向け、再びWTCRからの強力助っ人ドライバーたちが招集された。
今回もアウディRS3 LMSに乗ることが決まったトム・コロネルは、こちらも今季初年度を終えた電動ツーリングカー『ピュアETCR』にレギュラー参戦したロドリゴ・バプティスタ(アウディRS3 LMS/コブラ・レーシング)にジョイントし、初代アウディRS3 LMSをシェア。
さらに前述のとおり母国の英雄グエリエリはTCRヨーロッパへの参戦経験も持つホセ-マヌエル・サパーグとタッグを組み、ジロラミはW2レーシングの開幕勝者ラファエル・レイスと提携するなど、WTCR組は第2戦と同じペアリングが採用された。
一方、シリーズ初年度前半戦から選手権を牽引してきたぺぺ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)は、TCRヨーロッパ参戦時に在籍したブルータル・フィッシュ・レーシング代表でもあるマーティン・ライバに白羽の矢を立て、旧知の元雇い主とともにポイントリーダーの座を守る勝負に挑んだ。
この構成によりレギュラードライバー15分、ゲスト15分のコンバインド・フォーマットが採用された予選ではホンダ・シビック勢が速さを見せ、同国を代表するツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)に参戦中のロッソ/ミラ組のシビックがポールポジションを獲得。
フロントロウ2番手には、わずか0.008秒の僅差でサパーグ/グエリエリ組が並び、レイス/ジロラミ組まで上位3台をホンダ勢がロックアウト。2列目4番手にバプティスタ/コロネル組のアウディが続き、オリオラ/ライバ組はポールタイムから1.3秒遅れの5番手から、巻き返しを図ることとなった。
■母国GP制覇のジロラミ「ブエノスアイレスでの勝利は格別」
現地土曜の16時からスタートした最大レース時間60分、ドライバー交代が義務付けられた40周の勝負は、スタートドライバーを担当したポールシッターのミラが、同じくSTC2000にも参戦中のサパーグを封じてホールショット。ルノースポール・カストロール・チームのフルーエンスGTから、FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRへの乗り換えにも見事に順応してみせる。
するとその後方からさらなるチャージを見せたのがジロラミのシビックで、オープニングラップ終盤にサパーグを捉えて2番手に上がると、その2周後にはミラも捕まえ、早くも首位浮上に成功する。
一方、12周目のターン3でワイドになるミスを犯したサパーグは5番手に後退。その直後の15周目にはドライバー交代のウインドウが開き、17周目にはサパーグからグエリエリへ、続くラップにはミラからロッソ、ライバからオリオラ、バプティスタからコロネルと、次々にピットへ飛び込んでくる。
この動きを横目に、ちょうどレース折り返しの20周まで引っ張ったジロラミは、レイスを首位でコースへと送り返すことに成功。これが決定打となり、母国アルゼンチンでTCRサウスアメリカ・シリーズ初優勝を挙げることとなった。
「金曜のレースシミュレーションが勝利のポイントになった。予選には焦点を合わせず、タイヤがなくなる限界を見極めたんだ。ここでタイヤの温度と劣化のデータを取得できたことが勝因だね」と、ゲスト側ながらスタートドライバーを担当したジロラミ。
「ラファエル(・レイス)が作戦を完遂するには、5秒のマージンが必要だった。予選位置よりレースペースが重要なことは明らかだったからね。そしてなにより、ブエノスアイレスでの勝利は格別だ。地元ファンの前で、WTCRと同じシビックに乗って勝つことができたなんてスペシャルだし、アルゼンチンのモータースポーツにとって新しい時代の幕開けだ」と続けたジロラミ。
「ホセ-マリア・ロペスに始まり、現在はエステバン(・グエリエリ)と僕、そして今季はTCRヨーロッパに参戦した弟のフランコなど、ここから多くの国際的ツーリングカー乗りの才能を送り出せている。アルゼンチンの若いドライバーに、この流れと勢いをフォローしてもらえたら最高だ」
4位のバプティスタ/コロネル組に続き、5位まで挽回したレイス/オリオラ組は、198点でオリオラが選手権トップに留まり、同190点でバプティスタ、182点でレイスが続くオーダーに。続くTCRサウスアメリカ第7戦は、12月4~5日に同国のアウトドローモ・オスカー・ファン・カバレンで開催される。
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