新型日産「フェアレディZ」のデリバリーがまもなく始まるが、その前に、先代モデルの最終型に今尾直樹が試乗。フェアレディZのあるべき姿を考えた。
Zはこのままがいい
「悪路を走るうえで、不安は一切ナシ」──新型OPEN COUNTRY A/T III試乗記
まもなく発売となる新型フェアレディZ。その登場を前に、まもなく旧型となるZ34型のニスモに試乗した。ハローの前にグッバイ。さよならだけが人生だ。ひさびさに試乗して、豪快なクルマであることを再確認した。そして「Zはこのままでいい」と、そう思った。
ステアリングも6速マニュアルのギアボックスも、いまどきのクルマとしては重めで、“スパルタン”ということばが浮かんでくる。これは日産のモータースポーツを司どるニスモがチューンした、Zのハードコア・バージョンだから、である。記憶のなかのノーマルZはもうちょっと軽かった。ABC(アクセル、ブレーキ、クラッチ)ペダルもまた然り。クラッチは、腰が浮くほどではないけれど、踏み応えがある。
乗り心地はダンパーがキリリと締め上げられていて、はっきり硬い。ただし、硬めではあるけれど、ガツンと脳に響くようなショックは伝えないし、跳ねるようなこともない。硬さのなかにしなやかさがあり、ボディの剛性感もカッチリしている。
エンジンがいい。いまや貴重な存在の3.7リッターV6自然吸気ユニットは、ボア×ストローク=95.5×86.0mmのショート・ストロークで、最高出力はニスモ独自のチューニングにより、ノーマルより400rpm余分にまわってプラス19psの355ps/7400rpmと、9Nm増しの最大トルク374Nm /5200rpmを発揮する。高回転型なのに、電子制御で可変バルブ・タイミングを備えた現代のエンジンらしく、気むずかしさとはほど遠い。
首都高速の合流で停止しそうなくらい速度を落とし、ギアチェンジしなくちゃ……と、思いつつ、タイミングを逸して4速のままアクセル・ペダルをガバチョと踏み込んだら、ややむずがりながらも、そのまま加速してみせる低速トルクと柔軟性をもっている。
サウンドは朗々としており、3、4速あたりでV6自然吸気ユニットを高回転まで引っ張ってやるとほれぼれする。3000rpmあたりまでは、排気音にギュウウウウウウウウウンッ! という高周波の金属音が混じっている。リッター当たり100ps近い自然吸気の高性能エンジンを駆っている感がある。さらにアクセル・ペダルを踏み込むと、そこからフォオオオオオオオオンッ!という乾いた快音を轟かせる。その際の加速ぶりはロケットのごとくで、痛快、重量物がドッカーンとぶっ飛んでいくかのようだ。
低速でモゾモゾ動いているときは、手かせ、足かせをはめられているような、ままならない感がちょっとある。シンプルに操作系が重めだからだ。ところが、回転計の針が3000rpmを超えて、さらにフォオオオオオオオオオオンッ!という快音を発し始めると、重力のくびきから解き放たれたように軽やかになる。まず重いと感じる。だから、そのあとの軽やかさが際立つ。
100km/h巡航は6速トップで2200rpm。そこから5速に落とす。ヴオンッ!と、「シンクロレブコントロール」がマニュアル・ギアボックスなのに自動的にブリッピングを入れて回転を合わせてくれる。これをお節介だと感じるひとは、シフト・レバーの左上にあるSモードのスイッチを押せば、オフになる。5速ギアだと2800rpmに跳ね上がり、さらに4速ギアに落とすと3500rpmにまで回転を上げる。ヴォンッ、ヴォンッ、というエンジンの咆哮が小気味よい。ギアを変えるとエンジンの音が変わる。加速っぷりが変わる。アクセルの開閉によって車体がリニアに反応する。
最近のターボ・エンジンはアクセル・オフしても減速Gが出ないけれど、このクルマは違う。豪快にして痛快、フロントに大排気量の6気筒エンジンを積み、大トルクでもってリアの大地を蹴っ飛ばす。よく調教されているけれど、悍馬である。
Zはこのままがいい。
ブリティッシュ・スポーツカーの伝統をいまに伝えるフェアレディZ
新型400Z(輸出名)は、基本的におなじプラットフォームに、「スカイライン400R」の3.0リッターV6ツイン・ターボを搭載したものだから、おそらく、日産らしい、この味わいは、スタンダード仕様はもうちょっとジェントルであるにしても、基本的にはこのまま引き継がれているだろう。
男性ファッションの世界で、本家アメリカでは消えてしまったアメリカン・トラッドが、太平洋の対岸の日本に残され、独自の発展を遂げていた。という説があるみたいだけれど、1969年に登場したフェアレディZというのは、じつは本家イギリスでは消えてしまったブリティッシュ・スポーツカーの伝統をまぎれもなく引き継ぎ、守り育ててきたといえるのではあるまいか。オースティン「ヒーリー100/6」、「3000」といった直6モデルとか、その直6を「MGB」に載せた「MGC」とか、ああいう系譜につらなっている、と。
もっといえば、MGBとほぼ同時期にデビューした2代目フェアレディが、MGB以上にスパルタンなスポーツカーだった。数年前にフェアレディ2000(SR311型)に箱根で試乗する機会をたまさか得て、日活アクション映画みたいな存在だと思った。無国籍で、石原裕次郎とか小林旭とか宍戸錠とかに似合いそう……、話が古すぎて、若いひとにはわかりにくかったかもしれない。
日産は戦後の1952年にオースティンと技術提携を結び、「A40」、そのあと、「A50」を生産していた。という歴史を振り返ってみても、日産はイギリスの影響大だった。フェアレディZはブリティッシュ・スポーツカーの伝統をいまに伝えている。
その意味では、話がちょっと逸れるけれど、マツダ「ロードスター」もまたMGBの系譜に連なる。ニッポンはファッションの世界においてはアメトラを守り、スポーツカーの世界においてはブリティッシュ・トラッド、ブリトラを守っているのである。
仄聞するところによれば、新型Zはエミッションとヨーロッパでのスポーツカー・マーケットの縮小を理由にイギリスでは販売しないという。せっかく日産のイメージ・リーダーをつくったのに、スポーツカーの本場にもっていかないのはいかがなものか、と筆者は思う。新型Zの開発者諸氏も嘆いておられることだろう。イギリスのエンスージアストたちの声、評価を聞くことは、新型Zの将来にとってはもちろん、日産にとっても重要だし、スポーツカーの母国に敬意を表することにもなるのだから……。
というように、新型フェアレディZへの期待、妄想は、国内の発売がちょっと遅れているだけにますます膨らんでいる。ニューZ発売の夏は、もうすぐそこだ。もうちょっとのガマンですよ。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹
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