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DOHCの小粋なオープン フィアット1500S カブリオレ x アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー 後編

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DOHCの小粋なオープン フィアット1500S カブリオレ x アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー 後編

高見えするフィアットのインテリア

今回ご紹介するブルー・グレーのフィアット・オスカ1500S カブリオレは、1961年10月にフランス・パリで販売された1台だ。シャシー番号は118S016042。その後、アメリカ・カリフォルニアへ移っている。

【画像】1960年代のフィアットとアルファのオープン 同時代のディーノやジュリアGTAも 全84枚

1970年代初頭にナンバーが切れて以降は乗られていなかったが、コンクール・コンディションへ仕上げるべく、2000年代半ばに丁寧なレストアが施された。その後、2015年に開催されたペブルビーチでのイベントで販売されている。

レッドのアルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー・ヴェローチェのように、1500S カブリオレも小柄。それでも、現代の交通で不安になるほどの大きさではない。

クロームメッキの使用量がやや多く、トランクもひと回り大きい。大きな買い物用のバスケットや段ボール箱も、問題なく載せられるだろう。

フェイクウッドのダッシュボードに並ぶメーターは大きく、ランチア・アウレリア・コンバーチブルにも似ている。助手席側のフットブレース・バーは、2300Sにも採用された、フィアット自慢の装備だった。

直立気味に取り付けられた美しいステアリングホイールは、ナルディ社製。車格の割に大径だが、低速域でもテコの原理で回しやすい。インテリアが高見えするように、フィアットが努力した様子をあちこちから感じ取れる。

ジュリアのインテリアは質実的で実用的

ジュリア・スパイダーのインテリアは、質実的で実用的。フロアにはゴム製のマットが敷かれ、ダッシュボードにはボディと同色のパネルが収まる。ライトやチョーク、ワイパーなど、必要なスイッチが整然と並んでいる。

ドアは、サイドシルが大きく小柄。足元の空間もやや狭い。着座位置は高く、平均的な身長の大人でも、フロントガラス上辺のフレームから頭が飛び出してしまう。レストアでシートが肉厚になったわけではない。

ペダルは、2台ともにクラッチとブレーキがフロアヒンジ。ドライビングポジションも、足を曲げて腕を伸ばす、昔ながらのイタリアン・スタイルだ。

アルファ・ロメオのボンネットはリアヒンジ。背の高いエンジンは、やや右へ傾けて搭載されている。フロントヒンジのフィアットは、美しく成形されたマニフォールドが、こんがり焼けている。どちらも、綺麗に収まっている。

ウオッシャー液の入ったビニールバッグが、この頃のイタリア車的。エアクリーナー・ボックスは、見た目がつまらない。

オーナーによると、1500S カブリオレの隔壁に取り付けられた、ブッシュ付きのステアリングボックス用リンケージ・アームが弱点だという。ちなみに英国では、ディーラーの一部が右ハンドル車へのコンバージョンを引き受けていた。

当時の4気筒としては秀逸な洗練性と個性

冷えた英国の冬にエンジンを始動するには、どちらもアクセルペダルを数回踏んで、ポンピングする必要がある。始動すると威勢よくひと吠えするが、すぐに静かに落ち着いて、安定したアイドリングに移る。

市街地の移動を低回転域でこなせる粘り強さに加えて、高回転域で活発になりドライバーを楽しませてくれる洗練性と個性は、当時の4気筒エンジンとしては秀逸。技術力の高さを証明している。

ソフトトップを閉めると、2台ともに感心するほど車内は静か。風切り音は小さく、サスペンションは適度に硬いが、粗野にボディが振動することもない。

ボディロールは、ジュリア・スパイダーの方が大きい。それでも、60年前のクルマだということを考えれば、扱いやすくモダンな印象を受ける。

パワーでは20psほど勝り、MTは1段多い。どんな状況にも対応できるギア比と、滑らかにスライドできるシフトレバーが相まって、より自然に速いスピードで運転できる。

一方、1500S カブリオレに載るオスカ・エンジンは、サウンドがより甘美。シフトフィールでは敵わないが、ノイズは控え目で、すべての段にシンクロメッシュが備わり変速しやすい。

ボディシェルは、フィアットよりアルファ・ロメオの方が剛性感が高い。ステアリングホイールには不要なキックバックも伝わらず、正確に反応する。

陽気で穏やかなリビエラの空気感

コーナーでの安定感は、1500S カブリオレの方が上。四輪ともにコイルスプリングのアルファ・ロメオとは異なり、リアがリーフスプリングだという事実を感じさせない。扱いやすく、すぐに全力を発揮できる。

細身のタイヤは、簡単にドリフトを始める。ステアリングは切り始め付近で曖昧で、レシオも低い。ロック・トゥ・ロックは3回転だ。

見た目では、ジュリア・スパイダーがドライバーを誘惑する。盾の形のフロントグリルに、緩やかにカーブを描くテール。オーバーハングも短く、1500S カブリオレよりバランスが良い。ボディラインも、より艷やかで優雅だ。

フィアットのスタイリングにも、遊び心は感じられる。だが、2台を並べるとフォーマルな雰囲気も漂う。

ロジカルに比較すると、ジュリア・スパイダー・ヴェローチェの方が有利ではある。それでも、筆者には1500S カブリオレも捨てがたい。見慣れないフィアット・オスカというだけで、惹かれてしまう。

スタイリングやシャシー、全体の仕上がりは、アルファ・ロメオには及ばないかもしれない。それでも、陽気で穏やかな、リビエラの空気感を漂わせているからだろう。

協力:クラシック・モーター・ハブ

1500S カブリオレとジュリア・スパイダー 2台のスペック

フィアット・オスカ1500S カブリオレ(1959~1963年/欧州仕様)

英国価格:1500ポンド/6万ポンド(約930万円)以下(現在)
生産台数:3089台(1600Sを含む)
全長:4032mm
全幅:1524mm
全高:1308mm
最高速度:169km/h
0-97km/h加速:10.6秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1025kg
パワートレイン:直列4気筒1491cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:81ps/6000rpm
最大トルク:10.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー・ヴェローチェ(1964~1965年/欧州仕様)

英国価格:1498ポンド/10万ポンド(約1550万円)以下(現在)
生産台数:1091台
全長:3924mm
全幅:1581mm
全高:1334mm
最高速度:175km/h
0-97km/h加速:10.5秒
燃費:8.9-10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:844kg
パワートレイン:直列4気筒1570cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:112ps/6500rpm
最大トルク:13.2kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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