黒地の看板にシルバーのエンブレムが輝くディーラーと言えば、どこをイメージするだろうか。おそらく、マツダかレクサスを思い浮かべる人が多いと思う。
日本国内でレクサスが開業したのは2005年のこと。開業当初から最近まで、レクサスと言えば黒いお店が定番だった。
たしかに黒くなったけど……本当にマツダ販売店は高級になったのか!? 元レクサススタッフの本音
マツダが、現在増やしている「新世代店舗」に、レクサスのような雰囲気を感じてしまうのは、筆者だけではないだろう。外見も中身も、マツダはレクサスのようになろうとしているのか。元レクサススタッフの筆者から見た、マツダ販売店の今を伝えていく。
文/佐々木 亘、写真/MAZDA、AdobeStock(トップ画像=wolterke@AdobeStock)
■マツダはレクサスになろうとしているのか
新世代店舗となったマツダのディーラーは、どこかレクサス的な雰囲気を感じさせる(Alexandr Blinov@AdobeStock)
マツダ店舗が変わり始めたのは2014年のことだ。東北マツダ長町店(宮城県仙台市)を皮切りに、神戸マツダ灘店(兵庫県神戸市)、福島マツダ太平寺店(福島県福島市)などと、全国各地へ展開した。
新世代店舗は「品格あるたたずまい」「惹きつける力」「クルマを美しく魅せる」「居心地のよいしつらえ」という4つのガイドラインに基づき、店づくりを行っている。
筆者が初めてマツダの新世代店舗に入った時、どこかホームグラウンド感があった。カウンターの色調や家具の種類など、どことなくレクサスを感じるのだ。細かいところを見れば、天井の高さや床の色などに違いはあるが、建物から醸し出される品格は十分に感じられる。
マツダ店舗の佇まいとしては、レクサスのようになろう(高級感を醸し出そう)としているのが分かるが、実際の接遇はどうなのだろうか。
■レクサスも「高級の押しつけ」の失敗を学んだ
一般的なディーラーで行われる礼儀作法や接遇に関しては、マツダでも十分行われており、何ら不快な部分は無い。ただ、そこに高級を感じる特別な心意気があるかと言われると、疑問符が浮かぶのだ。
店舗や設備、そしてマツダのラインナップにも「高級感」は感じる。しかし、それは「高級」ではなく、あくまで「感」だ。風体が整ったことで生み出される品格はあるものの、それが末端まで浸透しているわけではない。
「高級」であることが良いことではない。やりすぎた高級の押し付けは、レクサス開業当初に多くの課題を残し、実際に失敗をしてきた。失敗を繰り返しながら、少しずつメーカーの考えるレクサス像と、全国各地の販売現場がやりたいレクサス像のすり合わせが行われ、現在のような塩梅になっている。
マツダ販売店の接遇が悪いわけではない。ただ、建物の雰囲気に、現場がかき乱されている感も否めないと思う。
■マツダらしさはどこにある? モノマネでは追い越せない現実
2022年9月に販売を開始したマツダ CX-60。試乗した人からは欧州車の質感を持っているという声も聞く
マツダの販売現場で話を聞くと、「お店がレクサスに似ている」と言われることが多く、クルマに関しても「(いい意味で)欧州車のようだ」と話題になるとのこと。ハード面での品格や高級感というのは、ユーザーイメージと噛み合っているようだ。
対して、現場スタッフに目を向けると、新世代店舗に戸惑いを感じることがあるという。
マツダのクルマはこういうクルマだ、お店はこういうコンセプトだと集合研修などで口酸っぱく言われるが、現場では、お客様に応じて接遇を使い分けている状態だという。
凛と澄まして高級ブティックのように構えるのを嫌うユーザーも多く、「これまでのマツダの接遇は大きく変えていないし、突然、高級店になれというのも違うのではないか」、と営業スタッフが話してくれた。
レクサスでは、いかなる年次でも新規配属されたスタッフは泊まり込みで研修を受ける。そこでは、レクサスの理念を説明され、所作(小笠原流礼法)から話し方、身なりなど、高級の本質を追求するための土台が形成されるのだ。
このような研修は、新世代店舗になったマツダで実施しているとは聞いたことがない。
マツダの品格ある店のたたずまいに、期待感をもって入店する人も一定数いるだろう。問題はこうしたニーズに対して、マツダの現場が変化しようという感じが無いところにある。あえて変化しようとしていないようにも見えてくるのだ。
これまでのマツダと、新世代のマツダは、何を変え、何を同じにするのか。この答えを現場の末端まで浸透させない限り、新世代店舗の取り組みは、単に箱を高級店に似せただけで終わってしまうだろう。これでは過去にBMW・メルセデスの表面だけを追いかけた、レクサスと同じ道を辿る。
新世代店舗への変革が、歴史のあるマツダを赤子のような状態に戻してしまったのだろうか。販売現場からは、どこへ向かえばいいかわからない、そんな感じを受けてしまう。マツダの店舗とスタッフの接遇は、かなりチグハグした印象だ。
メーカーが求めるマツダ像と、販売現場が残したいマツダらしさとは何なのか、ここのすり合わせが急務である。
マツダが好きなユーザーがマツダに求めるもの、それは表向きだけの高級感ではないと思う。少々泥臭いかもしれないが、親しみやすくて真心の感じられる、温かい接遇が、マツダにはよく似合う。
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みんなのコメント
セールスは車の知識が乏しく、店長は田舎の町役場の係員のような対応。
店は高級そうに見えるようになったが、その対比がかえって滑稽だね。
青と黒の看板と白い建物こそがマツダだろ