10月28日より東京有明の東京ビッグサイトで一般公開が始まったジャパンモビリティショー(JMS)。タイヤメーカーも最新モビリティ時代に向けた取り組みとして、最新技術を盛り込んだコンセプトタイヤを出展している。
タイヤにゃあちょっとウルサイ、ベストカー編集委員ウメキが横浜ゴムのブースで気になった最新のタイヤ技術コンセプトをお伝えしよう。
自動運転モビリティこそタイヤが大事!! 小径タイヤに最先端技術が満載よ……横浜ゴムで見つけた次世代モビリティ用タイヤの「なるほど」新技術
文・写真/梅木智晴(ベストカー編集委員)
小径12インチのスリックタイヤ!? いえいえ、実は次世代モビリティの必須アイテムなのです!!
ヨコハマタイヤのブースで目に飛び込んできたのが145/80R12サイズの小径タイヤ。トレッドパターンはほぼスリックタイヤのような状態で、周方向に2本のストレート溝があるだけ。ショルダーには横方向の溝が刻まれているが、インサイドの横溝はトレッド部に斜めに切れ込んでおり、トレッド面の排水を担っているのだろう。一般的な乗用車用タイヤとは大きく印象の異なるトレッドパターンで、溝が少なく接地面積が大きいタイヤだ。
横浜ゴムがジャパンモビリティショーに出展したコンセプトタイヤ。145/80R12サイズの小径タイヤ。ミゾの少ないトレッドパターンが特徴的だ
145/80R12サイズと言えば、一般的には軽自動車用タイヤのサイズだ。軽自動車用タイヤとしてみると、いかにも異質なトレッドデザインだし、スクエアな形状のショルダーや、垂直に立ったフラットなサイドウォールの形状も「普通」じゃあない。
タイヤ好きの私としては「なになになに?????」と興味津々なわけです。
「これ、小型電動バスのような次世代モビリティに向けたタイヤ開発のコンセプト提案なんです」と横浜ゴムの開発担当者は言う。
なるほど! 例えばトヨタのeパレットのような、自動運転による電動コミュニティバスをイメージしてほしい。フラットで低いフロアを実現するため、タイヤはなるべく小径にして、しかも車体の四隅に配置したい。
自動運転の電動モビリティへの最適化を目指したタイヤだという。横浜ゴムブースでの解説ボード
しかし小径タイヤはエアボリュームが小さくなるため耐荷重性では不利だ。EVバスは車重が重くなるし、乗客がたくさん載るのだから総重量は乗用車の比ではない。さらに、小径タイヤはタイヤ外周長が短くなるため、同じ距離を走っても大径タイヤに対しタイヤの接地距離が大きくなり、摩耗面でも不利となる。
サイズは軽自動車用だけど、構造はトラック用の超高荷重対応なのだ
「トレッド面は耐摩耗性を考慮したデザインとしたのがポイントです」と横浜ゴム担当者は言う。
特徴的なトレッドパターンは、小径タイヤならではの摩耗性に対応したものなのだという。技術コンセプトということで、詳細な技術的な内容は明らかにはされていないが、このタイヤは次世代モビリティ用途を念頭に置いたことで、高速域での耐ハイドロプレーニング性能よりも、一般道でのコンタクトグリップ性能を重視したトレッドパターンなのだろう。さらに地域コミュニティバスのような使い方を考えると、細い道への進入も多くなるため、頻繁に繰り返される大転舵で起こりやすくなる偏摩耗にも対応したトレッドパターンと考えられる。
耐荷重性については、内圧を600kPaとして対応しているという。一般的な乗用車用タイヤの内圧は220~250kPaなので、2.5倍から3倍近い高内圧ということになる。これはライトトラック用タイヤにも相当する高内圧だ。この高い内圧に耐えるタイヤ構造としているのがポイント。ガッチリしたスクエアショルダーや力強さを感じさせるサイドウォールの形状は、この高内圧、高荷重に対応するめだったのだ。
東京有明の東京ビッグサイトで開催中のジャパンモビリティショーで横浜ゴムは近未来のカーボンニュートラル時代を見据えたタイヤコンセプトを展示している
現時点ではあくまでも技術コンセプトの提案で、具体的に製品化の予定があるわけではないという。しかしさらに小径化を考えていて、10インチでの実現を目指すというから興味は尽きない。JMSは各自動車メーカーのコンセプトカーも興味深いんだけど、タイヤをはじめとした部品関連の新技術や最新コンセプトをチェックするのも楽しいのだ!!
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