ようやく日本登場となった、日産の新型「エクストレイル」(T33型)。初代登場から22年が経過したエクストレイルは、4代目となる今回の新型で、初代の「タフギア」と先代の「最先端技術」を継承しつつ、新たに上質感を加えた姿へと成長した(編注:2022年8月7日時点で1万2213台を受注。日産によると、e-POWERモデルでは最短の日数で1万台を超えたとのこと)。
エクストレイルといえば、先代のT32型(2013年~2022年)は、デビュー時には「ムラーノ」というエクストレイルよりも上級のSUVがラインナップされていたが、2015年に「ムラーノ」が国内販売終了となったあとは、自らが先頭に立ち、「ジューク」(2019年末生産終了)、そして「キックス」(2020年6月発売)とともに、国内日産のSUV需要を支えてきた。T32型はまた、国産4WD SUV豊作の年といわれた2018年、CH-RやCX-5、フォレスターといった強力なライバルたちを抑え、「国産4WD SUVナンバー1」になるなど、販売面で成功もしている。
新型エクストレイル受注1万2千台突破!! 日産最上級SUVブランドの役割と行方
現時点、日産の最上級SUVは「アリア」ではあるが、バッテリーEVという特殊なモデルであることを考えると、今回の新型エクストレイルは非常に重要な役割を担っているといえる。新型エクストレイルが背負っている「役割」と、その行方について、考察しよう。
文/吉川賢一、写真/NISSAN、池之平昌信
新型エクストレイルは内装も走りも上級に!!
ボディサイズは全長4660(-30)×全幅1840(+20)×全高1720(-20)mm、ホイールベース2705mm(±0)(カッコ内は先代比)。先代に対し、大きくなった印象を受けるが、数字の上ではさほど変化はなく、むしろ全長は短くなっている
新型エクストレイルは、新技術であるVCターボe-POWERと最新のCMF C/Dプラットフォーム、そして4輪駆動制御のe-4ORCEなど、日産が持つ技術がてんこ盛りされ、悪路や雪道もこなす本格SUVに仕上がっている。ボディサイズは、先代よりも全長が短くなったものの、車室内のパッケージングの工夫で後席スペースはより広くなり、ラゲッジも荷室長を増やして開口部も拡大したため、積載量はむしろ増加しているそうだ。
新型エクストレイルでもっとも注目なのが、インテリアだ。12.3インチの液晶メーターと、同じく12.3インチのナビゲーションモニター、そして、10.8インチの大型ヘッドアップディスプレイは、ライバルSUVなどと比べてもサイズが大きく、見やすい。センターコンソール周りやダッシュボード周りなども、つくりこみの良さを感じる。
そして走りも期待以上だ。e-POWERのレスポンスは抜群に良く、減速から再加速したり、コーナーで踏み増しをしても素早く反応してくれるので、テンポよい運転ができる。e-Pedalは完全停止まではおこなわないが、滑らかに時速15km程度まで減速してくれるので、最後のブレーキ操作だけ行えばいい。ロードノイズや風切音もとても静かで、動性能にも上質だ。
売れ筋はミドルグレードの「X e-4ORCE」(379円)と予測され、先代のハイブリッドと比べると若干の価格アップとなるが、装備の面でワンランク以上、上級移行しており、コストパフォーマンスは高い。国内日産のSUVとして、2番目の立ち位置として開発されたT32型とは、やはり「上質感」がちがう。
初代エクストレイルユーザーを取り込むことが「使命」
日産のマーケティング担当者によると、エクストレイルのようなL/Mクラスを購入するユーザーの年齢層は、ここ10年で40代以上の比率が増加(66%→75%)しており、このセグメントの購入価格帯も350万円以上が過半数を占め、「タフさ(走破性)」だけでなく「上質さ」が、さらに求められるようになったという。
エクストレイルといえば、初代の「タフギア」というキャッチフレーズが有名だが、根本にあったコンセプトは、「4人が快適で楽しい、200万円の使える四駆」だという。若い人から子育て世代まで、幅広い世代に、エクストレイルを使って楽しんでもらいたい、という想いが込められていたそうだ。
かつて、その初代エクストレイルを20代で購入した世代は、現在40代。若いころよりも懐に余裕が出て、目が肥えてより上質なクルマを求めるようになっていると思われる。新型エクストレイルは、そのニーズにぴったりとあてはまるモデルに仕上がっているといえ、これらのユーザーを取り込んでいくことが、新型エクストレイルに課された役割であり、使命であろう。
■生産台数が通常に戻れば売れるはず!!
新型エクストレイルは、純ガソリンモデルがないこと以外、欠点は見つからないほど、素晴らしいモデルであり、日産最上級SUVに恥じない仕上がりだ。しかし、SUVばかりが売れる昨今、SUVの商品力はどれも高く、ライバルメーカーからも、続々と魅力的な新型車が登場している。
厳しい戦いとなるのは間違いないが、新型エクストレイル自体の仕上がりに加えて、ノートやノートオーラ、アリアやサクラ、フェアレディZなどで、日産車に対する風向きが変わってきていることを考えれば、エクストレイルはかなり期待できるのではないか、と筆者は考える。
心配なのは新型車の納期が異常に長くなっていることだが、とある日産ディーラーによると、在庫車ではなく発注となると、現時点(2022年7月末時点)で、すでに2023年の2月出荷、3月納車となるそうだ(グレード、オプション問わず)。こればかりはどうしようもないところだが、日産を背負っているといっても過言ではない新型エクストレイルの行方には、今後も注目していきたい。
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いいね!走りがスゴくいい!!