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小さなクルマが起こした奇跡 ホンダ・シビックの50年を振り返る 後編 8代目からe:HEVまで

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小さなクルマが起こした奇跡 ホンダ・シビックの50年を振り返る 後編 8代目からe:HEVまで

8代目

これまでは、地域ごとに微妙な差こそあれ、世界中でほとんど同じようなモデルがシビックとして販売されてきた。しかし、2005年になると、その状況は一変する。

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日本(FD型)では4ドア・セダンのみを販売し、欧州向け(FK型)には3ドアや5ドアのハッチバック、それ以外の国ではクーペも販売するというのが大まかな流れだった。見た目が違えばエンジンのラインナップも大きく異なるという、全くの別物であった。

欧州専用デザイン

従来のシビックの外観は、どちらかというと「おとなしい」、別の言い方をすると「味気ない」「地味」なものというイメージが強かった。しかし、2005年のジュネーブ・モーターショーに出展された欧州向けのコンセプトカーは、衝撃的ともいえるアグレッシブな外観であった。そして、その数か月後に発売された市販モデルも、その印象はほとんど変わっていない。

当時の英AUTOCAR編集部は、「おばあちゃんは嫌がるだろうね」としつつ、「これでホンダのイメージが良くならないのなら、降参だ」と書いている。

2つのタイプR

新型シビックのタイプRが遅かれ早かれ登場することは、もう避けられなかった。日本では4ドア・セダン(FD2型)、欧州では3ドア・ハッチバック(FN2型)と2種類あった。

両モデルには、同じ高回転型2.0L VTECエンジン「K20」系列が搭載されていたが、仕様がわずかに異なっている。欧州仕様の最高出力は約200psで、ホットハッチとして十分な速さを備えているが、日本仕様は225psと、よりパワフルである。

9代目

2011年に登場したシビックは、先代で好評を博した先鋭的なスタイリングを踏襲。また、欧州向けのハッチバックと、それ以外の市場向けのセダンやクーペに分けられた。しかし、海外専売となったため日本では販売されていない。

ツアラーの登場

2014年、シビックのワゴンタイプが「ツアラー」として売り出された。後席上部までの積載量は624Lと、ハッチバックの477Lを大幅に上回る。

重い荷物を積んだとき、中程度の荷物を積んだとき、あるいは全く荷物を積んでいないときを考慮して、リアサスペンションのダンピングをドライバーが3段階で設定できるようになっている。フロントサスペンションは、この種のクルマではその必要がないため、調整式ではなかった。

タイプRにターボ搭載

2015年に発売されたモデルで、ホンダはシビック・タイプRのアプローチを完全に見直した。エンジンはこれまでと同じ系列のものだったが、歴代で初めてターボチャージャーが搭載された。

高回転は過去のものとなった(ターボエンジンは自然吸気より低い7000rpmで力尽きる)が、出力は約50%アップの310psとなり、これまでのシビックで断トツの高性能モデルに仕上がっている。

まさかのレーシングワゴン

2010年代前半の英国ツーリングカー選手権(BTCC)で、ホンダはシビック・ハッチバックでわずか4シーズンの間に2つのドライバーズタイトルと4つのマニュファクチャラーズタイトル、チームタイトルを獲得するなど、圧倒的なパワーを誇った。

そして2014年には、BTCCで20年ぶりに見られるワゴンタイプ、シビック・ツアラーを投入する。ライバルチームのセダンやハッチバックに比べ、ワゴンは空力的に不利であるにもかかわらず、シーズン前には楽観的な見方もあった。

しかし、いくつか勝利は得たものの、優勝候補にはなれなかった。結局、ホンダは1シーズンでツアラーを諦め、ハッチバックに戻してしまった。

BTCCでの成功

ツアラー引退後、ホンダは再びBTCCのトップに躍り出る。

スコットランド出身のゴードン・シェーデン(1979年生まれ)が2015年、2016年ともにトップドライバーとなり、彼はチャンピオン獲得数を3つに伸ばしたのであった。

世界のレース

シビックは、2005年から2017年まで開催された世界ツーリングカー選手権(WTCC)と、その後継である世界ツーリングカーカップ(WTCR)にも参戦しているが、BTCCに比べるとその成果は質素なものであった。

2013年のWTCCでマニュファクチャラーズの王座を獲得した以外、タイトルはないが、シビックはこれまでに40回のレースウィンを重ね、1シーズン平均2回強の勝利を挙げている。

ヒルクライム

モータースポーツにおけるシビックの成功は、決してサーキットレースに限ったものではない。2016年、英ベルファスト郊外のクレイガントレット(公道)で開催される英国ヒルクライム選手権に出場したタイプRは、当時69年の歴史を持つ同レースにおいて、純正仕様の市販車として初めてポイントを獲得した。

本稿執筆時点では、この偉業は後に1度だけ(同じくクレイガントレットで)レクサスRC Fによって繰り返されている。

10代目

2017年、シビックが日本に帰ってきた(北米発売は2015年)。10代目はすべての市場で単一のモデルとなり、地域によってデザインが微妙に異なる程度で大きな違いはない。同じプラットフォームでセダン、ハッチバック、クーペ(日本未導入)が作られ、いずれも先代より長く、低くなったほか、洗練されたマルチリンク式リアサスペンションが採用された。

日本仕様は1.5Lのガソリンエンジンのみが搭載されるが、欧州では1.0Lのターボも用意されていた。初代シビックより小排気量のエンジンだが、129psという出力は1972年当時とは比べ物にならないほどパワフルで、レーシングカーならまだしも、公道向けの市販車ともなればSF小説の域を出ないものだったろう。

5代目タイプR

10代目シビックは海外では2015年に発売されていたが、2017年に日本市場投入と同時に登場したのが、新型タイプR(5代目)である。ハッチバックをベースに、先代と同じ2.0Lのターボエンジンを採用したが、最高出力は320psとわずかにアップしている。

同年4月、タイプRはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで、7分43秒8という市販前輪駆動車の新記録を樹立した。この車両は、非標準ながら公道走行可能なタイヤを履き、ロールケージを装着していた。さらに、リアシートとインフォテインメント・システムを取り外すことで、軽量化を図っている。

最新型

2021年に登場した最新型の11代目シビックは、セダンとハッチバックが用意されている。クーペやワゴンはもはや過去のものとなった。

エンジンは1.5Lのガソリンターボのほか、海外では自然吸気の2.0Lもラインナップされている。ディーゼルエンジンを設定しないのは、最近の人気の低迷を考えるとごく自然なことと言えるだろう。

新世代のタイプR

もちろん、最新型にもタイプRはある。2022年夏に正式発表される予定で、ホンダによれば、鈴鹿サーキットで2分23秒120のラップタイムを記録したという。これは前輪駆動の市販車としては新記録で、2021年にタイプRリミテッドエディションが達成したタイムを0.873秒下回るものだ。

e:HEV

ホンダは2003年のIMA以来、シビック・ハイブリッドを販売してきた。その最新作が、2022年7月に発売予定の「e:HEV」だ。

パワートレインは、自然吸気2.0Lガソリンと2基の電気モーターを組み合わせたハイブリッド・システム。総出力は180ps強で、WLTCモード燃費は24km/lに達するという。価格は394万円からとなる。

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