5月21~23日、京都府京丹後市周辺で2021年のJRC全日本ラリー選手権第5戦『NISSINラリー丹後2021』が開催された。緊急事態宣言の延長を受け、無観客での開催となった今大会では、R5車両であるシュコダ・ファビアR5を持ち込んでいる福永修/齊田美早子組(アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア)が前戦の唐津に続いて2連勝を果たしている。
全日本ラリー選手権第4戦として5月2~3日に予定されていた『久万高原ラリー』が新型コロナウイルスの影響で開催が延期されたため、このラリー丹後は今シーズン実質3戦目となった。丹後戦は、日本海に面した丹後半島を縦走する丹後縦貫林道を舞台としたターマック(舗装路)ステージだ。
GRヤリスGR4ラリー、全日本ラリー第5戦で初表彰台。勝田範彦が2位フィニッシュ
4つのセクションで計12本のスペシャルステージ(SS)が設定され、その総距離は120.66km、リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は293.13kmに上る。SSの距離が100kmを超えることから通常の1.2倍のポイントを獲得できるため、シリーズを考えると重要な1戦となる。
今回、第2戦新城でクラッシュした鎌田卓麻/松本優一組(itzz DL SYMS WRX STI)がケガからの復帰戦となる一方、WRC世界ラリー選手権への出場のため前戦唐津を欠場していた新井大輝/小坂典嵩組(ADVAN KYB AMS STI)は、エントリーはしていたものの、そのWRC参戦の際のケガ療養のため今回も欠場となった。
天野智之/井上裕紀子組(豊田自動織機・DL・GRヤリスRS)は、長年使用してきたトヨタ・ヴィッツに代えて今回からトヨタGRヤリスRS(FF・CVT)でJN-5クラスに参戦する。
一方、唐津で多くの注目を集めることとなったトヨタ・ハイエースで参戦しているCAST RACINGの2台は、ロールケージのレイアウトに問題があるとされ、まさかの車検不合格に。今大会への出場は認められず競技に出走することなく会場を後にしている。
そんななかで迎えた初日のレグ1、当初は好天の予報だったもののSS1が始まるタイミングで雨が降り出し、この日はその後も雨が降ったり止んだりする不安定な状況が続く1日となった。
SS1では勝田範彦/木村裕介組(トヨタGRヤリスGR4ラリー)と奴田原文雄/東駿吾組(ADVAN KTMS GRヤリス)のGRヤリス勢が3.4秒差でワン・ツー。それにファビアR5の福永/齊田、柳澤宏至/保井隆宏組(ADVAN CUSCO FABIA R5)が続き、スバルWRXを駆る鎌田/松本組と新井敏弘/田中直哉組(富士スバル AMS WRX STI)がその後方につく走り出しとなった。
このSS1では、前戦唐津で全日本初優勝(JN-3クラス)を挙げた大竹直生/藤田めぐみ組(ADVAN KTMS ヌタハラRS86)がクラッシュし、早々にリタイアしてしまった。
■3番手につけていた奴田原のGRヤリスはミッションにトラブル発生
続くSS2でも勝田組がトップとなったが、SS3では勝田組を福永組が0.2秒上回り、以後ファビアR5がペースを上げていく展開となる。サービスを挟んだ午後になっても福永組のペースは落ちず、SS4で崩れた勝田組に対しステージ2番手タイムで総合トップに立つと、SS5とSS6ではさらにプッシュしトップタイム連発。勝田組を引き離す結果(14.5秒差)となった。
SS4でトップタイムをマークした奴田原組は、このレグ1を勝田組に続く3番手で終えていた(23.7秒差)が、ミッショントラブルが発生しており、GRヤリスに搭載されていたドグミッションをノーマルのミッションに交換することに。
この交換作業は通常のサービスの時間内に終わらず、惜しくも4分タイムオーバー。このため奴田原組は40秒のペナルティを受けることとなった。これによりトップと44.2秒差の4番手でレグ1を終えていた柳澤組がポジションをひとつ上げている。
スバル勢ではSS1でパンク、そしてSS4でリヤをヒットさせてしまった新井組がデイリタイアで戦線離脱。レグ1でのスバルWRXトップは鎌田組の5番手となった。
競技2日目のレグ2、京丹後周辺は好天に恵まれ初夏のような陽気となった。ここでも速さを見せたのはトップに立つ福永/齊田組だ。レグ2最初のSSであるSS7でトップタイムを叩き出すと、続くSS8でもベスト。さらにSS11でもトップタイムを叩き出して2番手以下を大きく引き離していく。
これに一矢報いたい勝田/木村組だが、SS10で福永のタイムを上回りトップタイムをマークするものの、最終的には30.2秒もの差をつけられる形に。好調を維持した福永/齊田組は唐津に続く2連勝。ポイントランキングでも2番手につける柳澤組を大きく引き離すこととなった。
福永はこの丹後ラリーを振りかえり「(レグ1は)雨雲レーダーに映っていない雨にやられました。急きょタイヤ替えたりして、なんとか難局を乗り切ったって感じで……。序盤はダンロップ勢が追いついていけないくらい良さそうだったけど、SS4も雨がめちゃくちゃきつくて、そこで勝田さんがペースを落としたのがあって、そこをなんとか乗り切れた。あのSS4がターニングポイントだったかなと思ってます」と勝負の分かれ目について言及。
「レグ2は、後ろとのタイムを見ながら徐々に徐々に……って感じでいきました。ただ、SS10で勝田さんにベスト出されたので、その次はプッシュしましたけど」
「今回GRヤリスは2位ですし、そんなにおちおちとしてはいられません。でも、この流れでモントレーも気合いを入れていきます」と意気込みを語った。
■「余裕が出てきている」と福永を警戒する勝田
移籍後初の2位表彰台を獲得した勝田はフィニッシュ後、「走り出しは良い感じでしたね。タイヤのグリップが非常に合っていたんですよね。ただ2ループ目はしっかり雨が降っちゃったんで、温度が上がらず若干グリップも上がらずで、それで離されてしまった」と予想外の天気に悩まされたとの弁。
「今日(レグ2)は完全にドライで2ループ目はけっこうプッシュしたんですけど……。なんか(福永選手に)余裕が出てきているね。調子に乗っちゃうタイプだから、なにかトラップを仕掛けないといかんね(笑)」と冗談を交えながら福永に対する警戒感を示した。
「まだまだ模索しているところもある」と続けた勝田は、「良かろうと思えないセッティングでもいい感じに仕上がっていたり、いろいろまだまだ出てきそうだし、期待したいなと思っています」とし、GRヤリスについてもまだ進化中としている。
3位に入ったADVAN CUSCO FABIA R5の柳澤はこの2日間を振りかえって、「ファビア初戦はいろいろあって前回は2位と、だんだん感覚つかめてきたなかで今回はもうちょっと行けるかな」という手応えがあったという。
しかし、こちらも予想外の天候に翻弄される形でタイムを思うように伸ばせず。
「タイヤの選択もFIAのタイヤしか使えないので選択が限られちゃっているのもあるし、天候がね……。それは他の選手もそうなのでしょうけど。2日目もドライにはなったのですが、思ったよりもタイムが伸びなかったなあ、という感じです」と柳澤。
「でもまあ、何とか無事に3位入賞できたので。次は地元モントレーなので、そこできっちり結果残せるように、これからデータを見てセッティングに活かして次回がんばろうと思います」
レグ1でミッションを載せ替えた奴田原組はその後トラブルなくラリーを走り切り4位でフィニッシュ。今戦がJRC復帰戦となった鎌田が5位、TOYOTA GAZOO Racingの眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスGR4ラリー)が6位に入っている。
その他のクラスではヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLOラックDL速心GT86R3)がJN-2クラスを制し、JN-3クラスでは竹内源樹/木村悟士組(YH CUSCO 大阪冷研 BRZ)が優勝を果たした。
JN-4は須藤浩志/新井正和組(スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト)、JN-5は内藤学武/小藤桂一組(KYB DUNLOP YARIS)、JN-6では吉原將大/佐野元秀(KYB DL アップガレージ Yaris)が各クラスウイナーとなっている。
全日本ラリーの次戦第6戦『MONTRE 2021(モントレー2021)』は6月11~13日、群馬県高崎市を中心に開催される予定だ。
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