モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1985~1986年にル・マン24時間レースや世界スポーツプロトタイプカー耐久選手権(WSPC)を戦った『ザウバーC8』です。
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現在、“キック・ザウバー”(正式名称はステークF1チーム・キック・ザウバー)としてF1に名を残しているため、現代のモータースポーツファンにもザウバーは知られた名前かと思うが、かつてザウバーはグループCカーへと参戦するコンストラクターであった(F1への参戦歴も30年を超える名門チームではあるが)。
そんなザウバーは、グループCカー元年といえる1982年にはフォード・コスワース、1983年からはBMWエンジンを積みレースへと挑んでいたが、1985年になるとニューマシン『C8』にメルセデスから供給されたエンジンを搭載し、ル・マン24時間レースなどのスポーツカーレースに参戦することとなった。
当時、このメルセデスのエンジン搭載は、大きな“事件”として取り上げられた。実はメルセデスは1955年のル・マンで起きた大事故以来、公なモータースポーツ活動を休止しており、この30年ぶりのエンジン供給による“復帰”は大きな話題を呼んだのだ。
メルセデスが供給したのは、当時メルセデス・ベンツSクラスに使われていた5.0リッターV8 SOHCのM117型というエンジンにターボを装着して、それをハイニ・マーダーがチューニングしたものだった。
またC8自体は、C7の改良版といえるボディワークに、シャシーはレオ・レスが設計したアルミ製のモノコックを持つマシンであった。
メルセデスのエンジンを積むC8は、1985年のル・マンにおいてデビューを果たす予定だったが、予選においてアクシデントが発生し、決勝レースは撤退。そのため1986年からWSPCやル・マンへと本格的にデビューするに至った。
するとイヴ・サンローランの男性用化粧品ブランドである『クーロス』がメインスポンサーとなったこの年、ル・マンではリタイアに終わったものの、第7戦のニュルブルクリンクでは優勝を記録。ポテンシャルの片鱗を見せつけた。
そして翌年以降“ザウバー・メルセデス”はC9へと進化し、1989年にはメルセデスが本格的なモータースポーツ活動復帰を表明し、ル・マンを制覇。その後のF1へのエンジン供給にも繋がっていく。C8とはその序章となったマシンだったのだ。
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