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フォルクスワーゲン パサートとティグアンが「ビッグチェンジ」で実現した理想。なんでこんなに真面目に走れるのか

掲載 更新 16
フォルクスワーゲン パサートとティグアンが「ビッグチェンジ」で実現した理想。なんでこんなに真面目に走れるのか

フォルクスワーゲンの新型ゴルフ8の日本導入に先立って、パサートとティグアンへのマイナーチェンジが実施されている。本国での変更から時間を経ていることもあり、その進化は「ビッグチェンジ」と呼びたいほどの熟成ぶりだった。(Motor Magazine2021年8月号より)

内外装の意匠変更に加え、安全装備の充実も図られたパサート
待ちに待った新型ゴルフの日本市場上陸。それに先駆けてこの4月にはパサート、そして5月にはティグアンと、フォルクスワーゲンの主要モデルに大きなマイナーチェンジが相次いで施された。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

まずは両車の改変項目を振り返ろう。B8型の日本導入は2015年ということで、6年ぶりのフェイスリフトを受けたパサート。エクステリアではフロントグリルやバンパー部の意匠やテールランプのグラフィックなどが変更を受けて、メーカーエンブレムは新しいCIに則ったフラットデザインタイプとなり、新世代の表現としてモデル名が、リアのメーカーエンブレムの下に配されることになった。

内装は「VW」ロゴが型抜きされたセンターパッドに埋め込まれた新しいデザインのハンドルを採用、空調のコントロールパネルがタッチ式に変更された。インフォテイメントシステムも、eSIM内蔵でネットワークの常時接続を実現した最新世代へ更新された。

またADASは、0~210km/hの設定車速内で、前走車との車間および走行レーンの維持をサポートする「トラベルアシスト」を全グレードに採用する。加えてヘッドライトに内蔵された32個のLEDを個別制御して配光をコントロールする「IQ.ライト」も全グレードに採用など、安全装備面のアップデートも怠りない。

パワー&ドライブトレーンではガソリンのTSIがそれまでの1.4Lから現行世代の1.5L直4ターボエンジンに刷新、ディーゼルのTDIは2L直4ターボのままトランスミッションが6速DCTから7速DCTへと変更されている。また、オールトラックの4モーションについては通常時100対0、最大で50対50の駆動配分をカバーするハルデックス5系のシステムが継承されている。

最新世代ティグアンに見る、ゴルフ8との本質的な近似性
AD1型ティグアンの日本導入は2017年、4年ぶりのフェイスリフトとなる。こちらはヘッドライトユニットやボンネット、フェンダーなどの変更も伴う大規模な意匠変更が施された。目尻をホイールアーチのそばまで伸ばしたヘッドライトのグラフィックは、ゴルフ8のそれにほど近い。

内装はパサートと同様に空調コントロールのタッチパネル化やインターネット常時接続型インフォテイメントシステムへの更新、スポーツ系のグレードではハンドルに配されるコントロールスイッチ類も、ハプティックフィードバック付きのタッチパネルにフラットに組み込まれた。先進装備系についても「トラベルアシスト」は全グレード、「IQ.ライト」もベースグレードを除いて標準装備だ。

パワーユニットはパサートと同様で、ガソリンのTSIが1.5L化された一方、TDIについては、導入未定だという。現状の駆動方式はFFのみだが、2021年秋に上陸予定のティグアンRは320ps/420Nmを発揮する2L直4ターボに4モーションの組み合わせとなる。つまり、これが日本のフォルクスワーゲンSUVラインナップでもっともスポーティなモデル、というわけだ。

パサートTDIの特質と驚くほどのニュートラルさ
今回試乗したパサートのパワートレーンがともにTDIで、セダンがデジタルメータークラスターや大画面ナビ&インフォテイメントシステム、アラウンドビューカメラやヘッドアップディスプレイなどが標準装備となる「エレガンスアドバンス」、ヴァリアントは専用エクステリアやスポーツシート、アダプティブダンパーや19インチタイヤなどが標準装備となる「Rライン」を用意した。ちなみにセダンにRラインの設定はない。

パサートに搭載される2LのTDIユニットは従来のEA288型を踏襲している。同門のアウディはすでにそのリファイン版であるEA288evoを投入しており、世代的にはやや旧いことになる。だから・・・というわけではないが、2つの特質は承知しておくべきだろう。

ひとつはノイズレベルがやや高く、微細な振動とともに、ややザラ味の強い回転フィールであること。この点はとくに速度域の低いシティライドの環境で気になるところだが、絶対音量というよりもインジェクターなどの作動音の硬質さという、音質的な透過による部分が大きいかとも感じさせる。

もうひとつは1500rpm以下での極低回転域のトルク感に乏しく、アクセルペダル操作に対する反応がダルなことだ。こちらは加減速の緩いシティライドよりも心地よいペースでワインディングを走るなど駆動力のオンオフ幅が大きくなってくると目立つ。

ただし、2000rpmほども回っていればレスポンスは十分。400Nmのトルクを前輪のみで受け止めるということでトルクステアも覚悟するが、トラクションコントロールが巧く介入するため、ウエットのワインディング路でも不安なく右足を踏みこむことができた。そこから4500rpm向こうまではパワーの急激なドロップもなく特性は素直だ。速さも十分以上で、190psのゆとりをしっかりと感じさせてくれる。

乗り心地については18インチ+固定式ダンパーのセダンと19インチ+DCC(アダプティブシャシーコントロール)ダンパーのヴァリアントとで、大きな差はない。共に轍などに保舵を引っ張られることもなく、低速域からの無粋な突き上げなども丸められており、しっとりと上質なライドフィールが描けている。

強いていえば、大きな凹凸の乗り越えなどではヴァリアントの方が衝撃が強い感はあるが、キャラクターを鑑みればこれも十分に許容範囲だ。ハンドリングも特筆するほどのスポーティさはないが、そのぶん尖りすぎて煩わしいところもない。踏めば踏んだ分だけ走り、停まり、切った分だけ綺麗に曲がる。

誰もが想像する、同じMQBモジュールを用いたゴルフのダイナミクスの延長線上にあって、見事に車格分の上質さも上乗せされている。言葉にすると元も子もないが、徹頭徹尾ニュートラルで粘り腰の姿勢は感動・・・というよりもただただ感心するばかり。なんでこんなに真面目に走れるのか、と。

広さなのか健全さなのか、車内空間それぞれの特徴
そんな律儀さこそがフォルクスワーゲンのブランドバリューであるとお思いの方も多いのでは、と思う。そんな視点でティグアンを見ると、まず目に留まるのはそのパッケージだ。40対20対40の分割可倒式後席を備えたラゲッジルームの使い勝手は標準的だが、前後席間や後席の座面高などの設定が理想的で、後席のパッセンジャーも視界を埋もれさせることなくゆとりをもって座ることができる。

パサートは、座席にせよラゲッジルームにせよその広さに驚かされるが、ティグアンはサイズ推しというよりは、空間の健全さがアピールポイントとなるだろうか。一方で残念なのはインフォテイメント、とくにナビゲーションシステムの扱いづらさだ。多分に慣れによる部分もあるとはいえ、目的地検索や設定には多くの手数を要し、ボイスコマンドも要領を得ない。

IDシリーズの展開に合わせてゴルフ8以降はMEBジュールと電子プラットフォームの共有化が図られていく。今回のパサートやティグアンにもその意向が込められているのだろうが、慣れ親しんだインターフェイスからの変化はすべてのユーザーに歓迎されるものではないのも確かだろう。

オーセンティックな価値観。安心を体現している存在
ライトサイジングコンセプトのEA211evo型1.5L 4気筒 TSIユニットは、1500rpmから250Nmを発揮することもあり、車重1.5tを超えるティグアンの車格でも動力性能的な不満はない。回すほどに伸びるパワーフィールや澄んだサウンドなど、やっぱりガソリンエンジンの良さもあるよなぁ、ということを再認識させられる。

加えて、そのノーズまわりの軽さが、ティグアンに車格を忘れさせる軽快感をもたらしているのも確かだ。Rラインでは曲がりの鋭さにタイヤのケース剛性の高さがちょっと勝りすぎている感もあり、その点、エレガンスの方がクルマとしてのバランスはいいと思う。だがこのあたりは、好み優先でも問題はない。いずれにせよ、こちらもクラスの範たるニュートラルな運動性能が備わっている。

多少顔つきが変わったとはいえ、パサートやティグアンのオーセンティックな佇まいは、個人的にはまさにフォルクスワーゲンらしい「安心」を体現しているように見える。もちろんそれはアルテオンやTロックが傍らにあってのこととはいえ、家族の一員として毎日を共にするパートナーというのは流麗で前衛的であり過ぎても困る、ということを彼らもよく心得ているのだろう。(文:渡辺敏史/写真:井上雅行)

フォルクスワーゲン ティグアンTSIエレガンス[TSI Rライン] 主要諸元
●全長×全幅×全高:4515×1840×1675mm[4520×1860×1675mm]
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1497cc
●最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:15.5km/L
●タイヤサイズ:235/55R18[255/45R19]
●車両価格(税込):483万9000円[503万9000円]

フォルクスワーゲン パサートTDIエレガンス アドバンス[ヴァリアントTDI Rライン]主要諸元
●全長×全幅×全高:4790×1830×1470mm[4785×1830×1510mm]
●ホイールベース:2790mm
●車両重量:1560kg[1610kg]
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:140kW(190ps)/3500-4000rpm
●最大トルク:400Nm/1900-3300rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・66L
●WLTCモード燃費:16.4km/L
●タイヤサイズ:235/45R18[235/40R19]
●車両価格(税込):534万9000円[584万9000円]

[ アルバム : フォルクスワーゲン パサートとティグアン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

16件
  • レシプロエンジン車としては最終ランナーに近い。
    家電電気自動車となる前に、
    ガソリンと軽油の燃焼臭と香り、直噴とターボの振動と音を楽しもう。
  • > なんでこんなに真面目に走れるのか

    なんでこんなにヨイショ出来るのか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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