旧いルノーを最新の電気自動車にコンバートするキットを開発中……?
今年2023年はル・マン24時間レースが初レース開催からちょうど100年という節目となり、レース自体も日・欧・米のトップメーカーがワークスマシンを繰り出してのバトルを繰り広げて大いに話題になりました。その一方で、ル・マン24時間レースの長い歴史をリアルに展開させてきたル・マン・クラシックも100周年を記念して特別大会が開催されることになりました。それらの取材の前後にフランスのクルマ関連博物館を旅してまわってきたので紹介します。
えーと、あなた「鬼バック」してませんか? 個性的にも程がある幻の「ルノー900コンセプト」とは
収蔵車両の規模もレストアのレベルも、圧倒的なメーカー流
今回の取材行の、ひとつの目玉となっていたのはルノーが運営する「ルノー・クラシック」でした。ルノーはフランスの、というよりも世界的な大メーカーで、彼らが手がけてきたロードカーやレーシングカーを収蔵保管している部門がルノー・クラシックです。ただ残念ながら、一般には公開されていなくて、今回はルノー・ジャポンに取材申請をし、フランスのルノー本社から取材を許されての訪問となったのです。
ルノー・クラシックは、パリ市内中心部から西に50km足らず、広報車をお借りしたルノーのパルク・プレッセからクルマで30分少々と至近距離にある、ルノーのフラン工場の一角に設置されていました。フラン工場自体は、以前はルノーの「クリオ」(日本国内名は「ルーテシア」)や日産の「マイクラ」(同じく「マーチ」)などを生産していましたが、現在はそれを別工場に移管し、電気自動車のみを生産しているとのこと。
そんなフラン工場に本拠を構えるルノー・クラシックは、収蔵台数が半端ないようです。もちろんクルマのビッグメーカーだから当然といえば当然ですが、800台ほどを抱えているそうで、そのうちの1割、約80台がルノー・クラシックのフラン工場内「キャンパス」に用意されていました。
メーカー自体が取り組むことを考えれば、これも当然の話ですが、そのレストアのレベルは最高級。「キャンパス」のエントランスには1934年式の旧いルノー「ネルヴァ グラン スポール」の、レストアのベースになった個体と、レストアを仕上げた個体、つまりビフォー&アフターの2台が並べられていましたが、まさに自動車メーカーならではの仕上がりは感動ものでした。
また旧いクルマにはありがちですが、レストア(あるいはレプリカ、リプロダクト)する際に必須となってくる資料が少なくて苦労するのはメーカーでも似たような状況だそう。速度記録挑戦車、1934年式の「ネルヴァスポール デス レコード」の場合は写真の他には資料もなく、なぜかガスケットが1枚だけ現存したそうで、そこから写真をもとにサイズを逆算して導き出して再び1台のクルマを完成させたとのこと。理論的には理解できるのですが、ともかく流石です。
またコンセプトカーなどを収蔵していることもメーカー系の大きな特徴で、モーターショーに初めて出展された時から、どっちが前だ? と話題もちきりだった「プロジェ900」(Projet 900)など数多くのコンセプトモデルに加えて、アメリカ車をアルゼンチン流に仕上げたモデルで、最終的にはメーカーのインドゥストリアス・カイゼル・アルゼンティーナ(Industrias Kaiser Argentina、略称IKA)そのものもルノーに吸収されることになる「IKAトリノ」など、マニアックなモデルも収蔵していました。
公式な博物館は設けず、各種イベントで展開する「出前式」展示に期待
先にも触れたように、ルノーは、これまでに生産したクルマを収蔵展示する企業博物館は用意していません。8年前に訪れたルノー歴史博物館(l’Expo-Musée RENAULT HISTOIRE)は文字通り、ルノーの歴史を示す企業博物館ですが、展示されるクルマはわずかに数台で、自動車博物館と呼ぶには少し物足りなさの残るところでした。
そんなルノーだけに、今回紹介したルノー・クラシックで動態を保って収蔵保管している多くのクルマたちは、なぜ一般の目の届かない場所に置かれたままなのでしょうか? そんな疑問も湧いてきますが、じつは各地のショールームに展示したり、あるいは多くのヒストリックカーが集まるイベントなどで、多くのファンの目に触れていたのです。
ショールームに関してはその最たる存在、パリ市内のシャンゼリゼ通りにあるラトリエ・ルノー(L’Atelier Renault)が有名ですが、残念ながらこちらは現在リノベーション工事の真っ最中。2024年にはリニューアル・オープンするとのことで、これを楽しみに、来年以降パリを訪れることがあったら、ぜひとも顔を出したいスポットとなるでしょう。
一方のヒストリックカーのイベントに関しては、これも今回の取材ツアーの中で大きな目玉となっていたル・マン・クラシックが、その好例です。実際、ル・マン・クラシックのパドックエリアにはルノー・クラシックが広いブースを展開していて、1978年のル・マン24時間レースでポールポジションを奪ったルノー・アルピーヌの「A443」をはじめとして、1952年式の「バルケッタ」や1954年式の「4CVクーペ」などを展示。また展示用テントに隣接のガレージテントでは今回のイベントに参戦する数台の4CVなどがメンテナンスされていました。
ところで、注目したいのは展示スペースに並べられた4台目のクルマ、完全な電気自動車(BEV)として製作され、2023年2月にパリで行われたレトロ・モビルでお披露目されていたルノー「ミュート ザ ホットロッド」です。
レトロ・モビルの際にはまだアルミの地肌がむき出しだったボディは、フレンチ・ブルーに塗られてより現実感を増していました。じつはこのミュート ザ ホットロッドが、新しいルノー・クラシックの方向性を示していたように思われます。
というのも、フラン工場に設けられているルノー・クラシックの「キャンパス」には、ルノー「5(サンク)」の電気自動車や、旧いルノー車をベースに電気自動車にコンバートしたモデルが収蔵されていました。このフラン工場は現在、ルノーにおける電気自動車のすべてを生産していますが、電気自動車の生産そのものは、やがては新しい工場に移管されることが決まっているようです。
そうなるとフラン工場自体の存続も気になるところですが、ルノー・クラシックでは「トゥインゴ」などに対する電気自動車のレトロキット、つまり旧いルノーを最新の電気自動車にコンバートするキットを開発しているとのこと。そしてやがては販売して……、と夢は遥かに広がっていきます。公式的には何ら発表されていないようですがレトロキットの開発(と将来的な販売)は大いに注目したいところです。
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みんなのコメント
同じフランス製のプジョー、シトロンの方がまだまだ壊れづらいです。
ルノーは日本の風土、暑さ寒さ湿気に対応出来て居る車を輸出して下さい。