新車試乗レポート [2023.08.07 UP]
ロータス エレトレの最新技術をサーキットで体験する【石井昌道】
文●石井昌道 写真●ロータス
【レクサス RCF】いまだからこそ大排気量V8エンジンを味わう【九島辰也】
以前にも紹介したロータス・エレトレ。全長5103×全幅2135×全高2231mmの大型SUVのBEVで0−100km/h加速3.95秒とハイパフォーマンス。シャシーやインフォテインメント、ADASにも先進テクノロジーをこれでもかと投入し、飛びきりのプレミアム・スポーツでもある。従来のプリミティブなライトウエイトスポーツが得意というロータスのイメージとはまったく異なるモデルであるのは既報の通りだ。
今回はいよいよステアリングを握る機会に恵まれたのだが、以前にお伝えしきれなかったテクノロジーに触れておきたい。パワートレーンやシャシーだけではなく、走りのパフォーマンスを高めているのが空力性能へのこだわりだ。フォルムとしては、ノーズにエンジンを搭載していないBEV専用プラットフォームだからこそ可能となるロングホイールベース&ショートオーバーハング、そしてキャビン部が前身したキャブフォワードとなる。
ロータス エレトレ
その上でテーマとされているのが“ポロシティ(多孔性)”。ボディの多くの箇所に穴が開けられているのだが、もっとも目立つのがボンネット後方に2つの大きなエアアウトレットがあることで、これは車両前部の低い位置から取り入れられた空気を綺麗に流すものとなっている。ダウンフォースを増加させる狙いもあるのだが、高速域でフロントウインドーにあたる風を抑制することも機能としては大きいという。風切り音が低減されるとともに、ワイパーの動きをスムーズにするのだ。その他、フロントホイールアーチの前後、リアホイールアーチの後方、Dピラー上部などに穴があり、空力性能向上が図られている。
フロントグリルは7つの開口部があり、それぞれが三角形の弁を持っていて開閉式になっている。開閉の様子は花が咲くようで綺麗だが、もちろん見せるためのものではなく、状況に応じて開閉してパワートレーン用のラジエーターやブレーキの冷却風を取り入れたり、空気抵抗を減らしたりするのが目的だ。完全に閉じた状態ではダウンフォースは22.5kg増加し、航続距離が15km向上する分の空気抵抗低減になる。
ロータス エレトレ
カメラ式のドアミラーももちろん空力性能向上が目的。従来型のドアミラーに比べると風圧抵抗係数は1.5%低減される。映像はドア内側の6インチディスプレイに映し出される。アウディe-tronやホンダeなどで体験済みのカメラ式ドアミラーは慣れが必要で、とくにバックで駐車するときなどは感覚を掴みにくい。法規的に対応できない地域用に一般的なドアミラーも用意されているが、できればオプションで選択できるようにしてもらいたいものだ。
フロントウインドー上部に搭載されたLiDARセンサーも開閉式になっており、ADASを使用していないときは格納されて抗力係数を最大1.5%低減するという。
アクティブリアスポイラーも空力に配慮して3つのポジションを持っている。
角度が18°のときは空気抵抗係数が最大1.8%減少し、ダウンフォースは最大60kg増加。32°では空気抵抗係数は1.8%の増加になるが、ダウンフォースは112.5kgと倍増。34°では最大限の減速、制動力のアシストをする。
Cd値は0.26で、SUVとしては世界トップクラスの性能だ。
実際に試乗してみると、一般道では風切り音が極めて低く抑えられていた。プレミアムBEVには重要な性能であり、静粛性は高いレベルにある。
クローズドコースではエレトレRでアクセル全開での加速とともにフルブレーキを体験。一般的にはフルブレーキではノーズが沈み込み、テールは浮いてきて不安定な姿勢になるものだが、160km/hからブレーキペダルを力任せに踏みつけても安定していたのはリアスポイラーが最大角度になって空気の力でテールを押さえつけていたからだろう。
ロータス エレトレ
クローズドコースではハイスピードでのコーナリングも試せたのだが、ここではアクティブエアサスペンションと電子制御ダンピングシステムに加えて、アクティブアンチコントロールとアクティブリアホイールステアリングが効果を発揮していた。
48Vシステムによる電気機械式アクチュエーターによってアクティブアンチロールコントロールが作動してロールを緻密に制御している。各種センサーからの情報でボディの動きを予測し、スタビライザーの硬さを変更し必要なロール剛性をもたらすのだが、その反応は2mm/sec。エレトレはハイパフォーマンスなわりには乗り心地が良く、ロータスらしいしなやかさを持ち合わせているのだが、ハイスピードでコーナーへ突入していけばぐっと粘ってくれる。アクティブアンチロールコントロールが効いてるからこそなのだが、作動に違和感はなく、あくまでスムーズだ。低速域では俊敏性を増し、高速域では安定性を確保するアクティブリアホイールステアリング、前後トルク配分なども相まって、ハンドリングも軽快なものに仕上がっていた。
従来のロータスのイメージとはまったく異なるエレトレではあるが、走らせてみれば古くからロータスがこだわっていたライド&ハンドリング、しなやかで運動性能の高さと乗り心地を両立させる特性が実現されているのが嬉しい。独創のアイデアや先進テクノロジーでかつてのロータスを躍進させたコーリン・チャプマンも草葉の陰で、これは紛れもないロータスだと認めているのではないだろうか。
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