今後の価格変動に注目
2024年5月10日、RMサザビーズがモナコで開催したオークションにランボルギーニ「ムルシエラゴ」が出品されました。ファーストオーナーはドイツのシュトゥットガルトに在住する人物で、2005年まで所有。その後ヨーロッパを転々としています。その間の整備やメンテナンスはきちんと行われている個体でした。気になる落札価格は……。
3700万円でも売れないランボルギーニ「ムルシエラゴLP640-4ロードスター」は今が狙い目! 腐っても闘牛のフラッグシップです
ランボルギーニの運命を変えた1台
それまでV型12気筒エンジンをリアミッドシップするモデルとして、1990年代を通じて「ディアブロ」を生産し続けていたランボルギーニが、それに代わる新型車を市場に投じようと計画していたのは1999年のことだった。
すでにプロトタイプはザガートのボディデザインを採用して完成しており、テストのために実走行する姿も1998年頃には頻繁に捕えられるようになっていた。だがここでランボルギーニには、その後の運命を左右する大きな歴史的転機が訪れる。
1998年、ランボルギーニはアウディの手中に収まり、それまでの12気筒プロトタイプの計画は白紙撤回されたのだ。あらたにアウディがタイムリミットとして設定したのは2001年。その間の2年弱で、まったく新しいモデルを開発するという挑戦は、ディアブロをさらに延命し、同時にそれをさらに正常進化させるという方向で行われることになった。
そのような事情からも想像できるように、社内コードで「L147」と呼ばれていた次期モデルの開発で最もこだわったのは、ボディデザインだった。
V型12気筒というエンジン形式は、かのパオロ・スタンツァーニの発想で実現した独特な搭載方法を含め、この時点で変更の余地は皆無であったし、またアウディ自身もそれは望むところではなかった。スチール製のスペースフレームを基本骨格とするというコンセプトも、これもまた見直しは不可能である。
デザインこそがランボルギーニの12気筒モデルにあらたな魅力を生み出し、同時に時代の変化をカスタマーに印象づける。アウディの考えはあながち間違いだったとはいえないだろう。
カウンタックをイメージさせるデザインが採用
実際にドイツのインゴルシュタットにある、アウディ・スタイリング・センターで、のちに「ムルシエラゴ」と命名されるL147をスタイリングしたのは、ルーク・ドンカーヴォルケ。フロントマスクの造形は、ドンカーヴォルケ自身、ステルス戦闘機からイメージを得たと語っているし、また通常時にはカーボン製のパネルで覆われるエンジンルームは、冷却の必要が生じた場合にはVACSと呼ばれる可変エアフロー冷却システムをオープンさせる仕組みを採り入れるなど、こちらは先進性と同時にあの「カウンタック」をイメージさせるデザインが採用されている。
リアウイングも速度によってその角度が変化する可変式。Cd値はその角度によって0.33~0.36まで変化した。そして2001年9月に開催されたフランクフルトショーにおいて、L147は正式にムルシエラゴとして世界初公開の瞬間を迎えることになるのである。
搭載されたV型12気筒エンジンは、6192cc仕様のDOHC 48バルブ。ディアブロの最終型と比較すると約200ccの排気量拡大を実現した、オールアルミニウム・ブロックのエンジンである。潤滑方式をドライサンプ化したことでエンジンの搭載位置をディアブロ比で50mm低下したほか、可変ジオメトリーインテークシステムを採用するなど、実用域での扱いやすさと高速域でのパワーフィールをより魅力的にすることにも成功した。ちなみに最高出力/最大トルクは、580ps/650Nm。トランスミッションはついに6速化され、駆動方式はセンターデフにビスカスカップリングを使用した4WDのみとなる。
ここで紹介するムルシエラゴは、RMサザビーズのモナコ・オークションに出品された2002年式のモデル。2002年モデルは442台のみが生産されており、アランチオ・アトラスと呼ばれるオレンジ色のボディカラーは、ムルシエラゴのコマーシャルカラーのひとつでもあった。
現在までの走行距離はわずかに2万5278km。ファーストオーナーは、ドイツのシュトゥットガルトに在住する人物で、2002年6月17日にこのモデルの納車を受け、2005年までそれを所有。その後はチェコのプラハやオーストリアのウィーンへと渡り、2024年に再びドイツの地へと戻ってきた履歴が確認されている。もちろんその間の整備やメンテナンスはきちんと行われている。
RMサザビーズは、このムルシエラゴに32万~37万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を掲げオークションに臨んだが、落札価格は32万5625ユーロ(邦貨換算約5360万円)という数字で落ち着いた。はたしてムルシエラゴの価値は、これからどう変化していくのだろうか。ランボルギーニのファンとしては見逃せないところだ。
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