理想とはかけ離れた現在のグランドツーリングカーへのアンチテーゼともいうべきなのが、“快適仕様”のミドシップ・マクラーレンの「GT」。200回以上ドライブを繰り返してきた京都への道行きで、その魅力と実力を試した。
現代のGTへの“マクラーレンらしい”アンチテーゼ
今だからこそ“最近のイイクルマ”を思い起こす心に残っているクルマ達 2019-2020 Vol.4
人には自ら移動することによって幸せを感じる「幸福回路」が備わっていることが近頃の科学論文で明らかになった。良きGT(=グランドツーリングカー、グラントゥーリズモ)を得ての長距離ドライブという行為そのものが楽しみであるという常日頃の感覚があながち間違っていなかったということか。そしてプロセスの楽しみは目的の喜びを倍加させるということもまた真なのだろうと思う。
英国スポーツカー(レーシングカーと言ったほうがしっくりくるが)の名門マクラーレンがその名もGTという新型車を世に問うたのは昨年5月のこと。日本でもその一カ月後に早くも披露された。
どうしてマクラーレンが今さらGTと名乗る、言ってみれば“快適仕様”のミドシップカーをラインナップに加えたのか。そこには現代のグランドツーリングカーと呼ばれる最新モデルたちへの“実にマクラーレンらしい”アンチテーゼがこめられている。
GTと初めて名乗ったモデルは1950年代のランチアで、スポーツカーらしいハンドリングを持ち合わせ、こぶりで軽量ながらも長距離移動を速く楽にこなす実力の持ち主だった。以来、GTといえばロードカーのなかでも飛び切りの高性能を持つグレード名として、多くのブランドがみずからを代表するモデルに使用してきた。世の中的にGTというと、最早グランドツーリングカーではなく、ほとんどスポーツカーのイメージになってしまったのは実にそのためだった。
Freeけれども自動車の進化の範疇はこの半世紀の間に、ただ性能(速く走ること)に留まらず、快適性や安全性、さらには環境性にまでひろがっていく。結果、クルマはどんどん重くなり、それを超えるためにより大きなパワーを出すという繰り返しとなって、最早初期の理想的なGTとはかけ離れた存在になってしまった。マクラーレンはそこに注目したのだ。本当のGTはそんなものじゃない!
彼らの造るモデルは常に“物理的な運動”が中心となっている。重量物(人やエンジン)はできるだけ重心近くに配置し、できるだけ軽くなるように造り、エアロダイナミクスに優れたスタイルを被せる。それを今や理想を見失ったGTカテゴリーにも適用した。そうして生まれたのが、マクラーレンGTというわけだった。
軽く、空力に優れ、意のままのハンドリング性能をもつモデルでありながら、人と荷物を積んでのすこぶる快適な長距離ドライブを、法が許すのであればすさまじい速さで実現する。現代の豪華なGTが失った“らしさ”を取り戻す、それはマクラーレンなりの主張であった。
Rei.Hashimoto中身は純然たるマクラーレンの2シーターミドシップ
はたしてボクらの前に姿を現したこの新型モデルは、スーパースポーツカーらしいシルエットこそ与えられているものの、他のモデル、例えば720Sや600LT、とはまるで違うディテールも散見される。
そもそも全体の雰囲気が落ち着いている。ラインの構成はいたってシンプルで、余計(ではないけれど)な空力デバイスがない。面構えは最初期のMP4-12Cのように大人しく、派手でこれみよがしな演出は皆無だ。真横からみたふくよかな姿は女性的ですらあって、最新の姉妹たちとは一線を画している。
機能的に見てもスポーツカーであることよりGTカーであることを優先したと分かる箇所がある。ノーズだ。最新スーパーカーのなかでは明らかに地上高(地面との隙間)がある。これなどはデイリーユースから見知らぬ場所へのドライブまで様々な場面を想定しての“心遣い”だと言っていい。
とはいえ、このクルマは他のブランドならたいてい試みるような、何か違う快適モデルにむりやりスポーツカーらしい皮を被せて高性能を与えたというモデル、でもなかった。ナカミはカーボンファイバー製モノコックボディをもつ純然たるマクラーレンの2シーターミドシップである。だから、その気になればきっとサーキットでも速い。姉妹には負けるかも知れないが、そんじょそこらのスポーツカーの敵ではない。
いやはや実に面白いスーパーカーをマクラーレンは発表してくれた。その名もGTなのだから、というわけで日本での試乗が可能となって即、ボクは東京から京都へと走らせてみたくなったというわけだった。
GTの必須性能をクリアする室内空間
繰り返しになるけれども、GTと名乗るからにはいくつかの要点を満足させなければならない。まずは快適で実用に適したスペースが必要だ。マクラーレンGTは、とはいえスーパーカーだから2人乗り。ならばオトナふたりが心地よく過ごせる空間と、ふたりの荷物を積むラゲッジルームが欲しい。
その点、このGTは他のスーパーカーたちに比べて随分と快適な設計だ。キャビンのなかは、他のマクラーレンと同様にシンプルなデザインではあるけれども、雰囲気がラグジュアリーであるという点で甚だ異なる。レザーをふんだんにあしらった室内はいかにも英国の高級車然としていた。そのうえガラスルーフまであって、車内は“密”ながら開放感もあった。
特筆すべきは、フロントブート(150リッター)に加えてリアエンジンの上( ! )に420リッター分の収納スペースがある。これを稼ぎ出すためにエンジン補機類の構造を変えたというから徹底している。ふたりのGTにはさしあたって十分な容量スペースではないか。
FreeGTの残る必須性能は“安心して快適に長時間ドライブを楽しめること”である。こればかりは乗って確かめなければ分からない。もっとも、「これなら向こう数百キロを気持ちよく走っていけそう」と思わせてくれることも肝心で、そのためのデザインであり、機能レイアウトであり、ラグジュアリーで落ち着いた設えであった。
文・西川 淳 写真・橋本玲、マクラーレン・オートモーティブ 編集・iconic
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みんなのコメント
後部座席も備える911は、なるほど優れたGTだな。