8月25日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の決勝レースは、太田格之進と牧野任祐(ともにDOCOMO TEAM DANDELION RACING)のチームメイト対決が白熱。1周にわたって繰り広げられたテール・トゥ・ノーズの戦いは、太田のマシントラブルで牧野に軍配が上がり、第2戦オートポリス大会に続いて牧野が今季2勝目を挙げた。
2位にはポールシッターの山下健太(KONDO RACING)がつけ、予選4番手の野尻智紀(TEAM MUGEN)が1ポジションアップで3位表彰台を獲得している。
前日の公式予選日は、セッション終了後に急激な雷雨に見舞われたモビリティリゾートもてぎ。数時間で雨は落ち着き、一夜明けた決勝日には路面もほとんど乾いていた。
わずかに雨粒が落ちてきたことからフリー走行はウエット宣言のもとで行われたが、そこからは夏の日差しがじりじりと照り付け、気温33度、路面温度37度というコンディションで37周の決勝レースが始まった。
フロントロウの2台は順当にスタートを切り、若干出遅れた3番グリッドの大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)を牧野が抜き去り3番手に浮上する。
1コーナーではチームメイトの太田にアウト側から並びかける場面もあったが、ここでは先頭の太田がポジションをキープ。山下、太田、牧野、大湯、野尻というトップ5でオープニングラップを終えた。
山下と太田のトップ2は1秒前後のギャップを維持し、膠着状態でレース序盤が進んでいくが、ピット作業が可能となる10周目に入ると、まず太田と大湯がピットに向かった。
アンダーカットを狙う太田はピットアウト後、1コーナーでややワイドに膨らみコース外にタイヤを落としたが、すぐに体勢を立て直して後半スティントへ。
ここからは、“ウラ”の首位太田と“オモテ”の首位山下とのギャップに注目が集まる。12周終了の時点で2台の差は約25秒だったが、フレッシュタイヤの太田がベストラップを毎周更新するハイペースを見せ、15周目には22秒、18周目には19秒と、この差がぐんぐん縮まっていく。
さらにはタイヤが消耗してきた山下は1分37秒台までペースダウン。太田だけでなく牧野も背後に迫ってくるようになる。
山下対牧野の戦いは、22周を終えたところで先にピットへ向かった牧野がアンダーカットを狙って仕掛ける。山下は、翌23周終了時点でピットインし、メカニックもスムーズな作業で送り出したが、ピットロードを出た山下を牧野が1コーナーで鮮やかに抜き去っていった。
これで全車がピット作業を終え、太田が名実ともにトップに浮上。太田と同じタイミングでピットインした大湯が2番手、牧野が3番手、山下が4番手というオーダーで残り10周の終盤へ。
25周目、まずは牧野が2コーナーで大湯のインをさす。2台はサイド・バイ・サイドで3コーナーへ侵入し、ここではイン側をキープした大湯がポジションを死守。
4コーナーでも競り合い続けた勝負は、5コーナーの先で牧野がようやく大湯をとらえ、これで2番手に浮上した。先頭の太田との差は10秒まで開いていたが、牧野はフレッシュタイヤを武器に1周1秒以上ずつこの差を削っていった。
32周目には2.1秒、33周目には1.3秒と着実に縮まっていった差は、翌34周目にはついに0.4秒に。35周目の1コーナーでは、牧野がマシンをラインから少しずらしてけん制、太田のミラーに映しながら相手のミスを誘う。
テール・トゥ・ノーズのまま2台は3コーナー、4コーナーを抜け、牧野はS字でも太田のサイドを伺うとヘアピンで一気に並びかけた。
ただしここはややオーバースピードだったか止まり切れず、太田がクロスラインで差し返す。わずかにダートに足を落とした牧野は太田の背後に下がりながら、2台はそろってダウンヒルストレートへ。
90度コーナーはイン側に位置づけた太田がラインを死守し、逆にコースをはみ出してしまった牧野に0.5秒の差をつけることに成功。それでも1秒以内の僅差の戦いは続き、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGのピットでもチームスタッフが固唾をのんで勝負を見守っていた。
そして迎えた36周目。ふたりの位置関係は変わらず、1周前と同じように2台がダウンヒルストレートを下っていくも、90度コーナーに入った瞬間に太田のマシンのリヤが滑りスピン。
目の前のアクシデントを間一髪で回避した牧野が先にセカンドアンダーブリッジを抜け、トップに躍り出た。逆を向いた太田のマシンはエンジンストップしてしまい、万事休す。太田のスピンの原因はスロットルトラブル。このレース一番の大勝負は思いもかけない形で決着を見ることとなった。
ファイナルラップに入る直前でトップに立った牧野だが、その4秒後方にいた山下がオーバーテイクシステム(OTS)を目いっぱい使って最後の追い上げに出る。
セクター1だけで0.9秒のギャップを削ると、セクター2ではさらに0.6秒削り、2.5秒差まで迫った。ただヘアピンコーナーを抜けたところでOTSを使い切り、猛追はここまで。1.6秒差を守り切った牧野が静かにトップチェッカーを受けた。2位は山下、3位には山下と同じタイミングでタイヤを交換し、フレッシュタイヤで後半にプッシュをかけた野尻が入った。
この結果により、野尻は58ポイントでランキングトップを守り、牧野が5ポイント差で2位に浮上。坪井は5位入賞でポイントは加算したものの3位に後退している。
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