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MotoGP歴代最高得点の2019年型は「車体でチャレンジ」/ホンダRC213V開発の裏側【前編】

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MotoGP歴代最高得点の2019年型は「車体でチャレンジ」/ホンダRC213V開発の裏側【前編】

 2017年から3年連続でMotoGPのMotoGPクラスでライダー、チーム、マニュファクチャラーの三冠を達成したホンダRC213V。2019年型RC213Vはシリーズ19戦中12勝、18戦で表彰台に登るという圧倒的な強さを発揮した。そんな2019年型RC213Vが生まれた経緯を聞いた。

 2019年のMotoGPで、2019年型RC213Vとマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)のパッケージは、ライバルを寄せ付けない圧倒的なパフォーマンスを発揮。全19戦のうち18戦で表彰台に上がり、そのうち12戦では表彰台の頂点に立ってみせた。

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 圧倒的なリザルトを記録した結果、マルケス&RC213VはMotoGPクラスで歴代最高得点となる年間420ポイントを積み上げて、2019年シーズンの王者に輝いた。

 ホンダとして2年連続の三冠獲得となった2018年シーズンの時点でRC213Vのパフォーマンスは抜きん出ていた。3年連続三冠がかかっていた2019年に向けては「マシンは外から見るとあまり変わってないように見えると思いますが、我々としては大きく変えた1年というところがありました」と明かしたのはホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)の桒田哲宏レース運営室長だ。

「2018年シーズンはエンジン側でチャレンジングなことをやってきましたが、2019年は車体側でチャレンジングなことをやってきました。エンジンは正常進化でしたが、車体側でチャレンジした分、最初はけっこう苦しみました」

「正直に言えば非常に苦しい戦いがいっぱいありました。それは車体やエンジンなどで我々が想定していなかったことが起こったりしたからです」

「結果的には400を超えるポイントをマルケスが獲ってくれましたが、それはマシン、ライダー、チームのすべてがうまく連携し、最後にまとめ上げることができた結果だと思っています」

■開発の自由度を高める吸気レイアウトの大幅変更
 2019年型RC213Vは前年モデルと比較してトップスピードが向上していた。それはパワーサーキットであるロサイル・インターナショナル・サーキット(第1戦カタールGP)や、レッドブル・リンク(第11戦オーストリアGP)で、トップスピードに定評のあるドゥカティ勢に匹敵するストレートスピードだったことからも明らかだ。

「正常進化」と表現されたエンジン側の改良について、桒田レース運営室長は「同じ仕様のエンジン性能をアップさせていくと伸びしろはどんどん小さくなっていきますが、その伸びしろがまだあると考えていたので、そのままエンジンの出力を上げていく方向でいきました」と説明する。

「今まで重箱の隅をつつくイメージでしたが、それをもう一度新しいエンジンで焼き直していったというイメージです」

「出力を大きく上げられたことは、2019年シーズンの勝因のひとつだと思っています。直線が速いことで戦略の幅が広げることができるということは、ライダーも我々も実感しています」

「トップスピードは追いついてきていると思いますが、まだ“ぶち抜ける”レベルではありません。『何年か前までライバルにストレートでやられていたことをやり返すところまでいかないとホンダらしくないよね』ということもみなさんによく言われます(笑)」

 一方、チャレンジングな姿勢で開発に臨んだという車体側では、「エンジンに対する吸気口の形を大きく変えています。それにともなってフレームが大きく変わっています」と桒田レース運営室長。

 具体的に見ると、2018年型まではエアインテークダクトがフレームサイドに設置されていたが、2019年型ではサイドにエアインテークはなく、吸気口からエンジンまで一直線で空気を流す形状になっている。

 HRCの若林慎也開発室長によれば、吸気レイアウトを変えたことで「エンジン出力の“取り分”が出てくるということと、燃調の安定化といった副産物、ドライバビリティの向上など、総合的に出力と性能を上げる」ことができたとのこと。

「(新フレームは)ヘッドパイプ回りが大きく変わるので、2018年シーズンの途中からテストをしてきました。カタールテストでマルク(マルケス)が本調子になって新フレームのマシンに乗れるようになり、その時点で新フレームは2018年型マシンとほぼ同じ性能になっていました」

「ただ、ホルヘ(ロレンソ)やカル(クラッチロー)のフィードバックによれば、ネガティブなところも出てくる可能性もありました。そこはカーボンを貼ったフレームなど、さまざまな改善策を入れたフレームを投入して少しずつ進化させていきました」

 車体側の改良について、桒田レース運営室長は「なにかがよくなっても、どこかのパフォーマンスは落としたくないというのが、我々のなかで一番難しいところ」と付け加える。
「ある一部分だけを突出させるのであれば、より簡単にできると思います。しかし他の部分で性能を落とさずにあるところだけを上げていく、トータルパフォーマンスを上げていくという作業は非常に難しい。今までのやり方だけでやっているのではなく、同時にフレーム側も変えることで自由度が増えると考えました」

「いままでだと、例えば吸気のダクトのことを考えると限られたことしかできませんでした。そういった制限を取っ払ってしまおうと思いました」

「我々のエンジニアたちは制限なくやりたいと思っていますし、みんな追いつけ追い越せで来る世界で少しでもアドンバンテージを持つためには、自由度を上げていくということも重要ではないかと考えたのが、車体側の変更を行った理由でもあります」

「簡単に言うと、スピードが出て、ちゃんと止まれて、ちゃんと曲がれるバイク。ライダーはみんなそういったバイクが欲しいと言うんですよ」

■2019年の流行となったフレームのカーボンパッチ
 2019年型RC213Vではフレームをカーボンで補強したものが多く登場し、またラウンドごとに違う仕様のものが見られた。若林開発室長は2019年型RC213Vのフレームについて「たくさん作ってきたし、(レース用に)数仕様持っていっています」と明かした。カーボンでフレーム剛性のバランスをとることについてはどのようなメリットがあるのだろうか。

「カーボン補強するというのは時間的なものが大きなメリットだったと思います」と桒田レース運営室長。

「マシン剛性のバランスを変えていくために、ひとつひとつアルミを削って作るのか、カーボンを貼って作るのかというのがありました。カーボン特有のよさについては、まだ完全に見つけられていないので、そういう意味ではまだ試行錯誤でやっている状況です」

「(実戦に持ちこんだフレームについては)何種類かは覚えていませんが、いろいろな形を持っていきました。アルミフレームが変われば、当然カーボンを貼る場所や貼る量も変わってきますからね」

「カーボンを貼るという手法も使えるということがわかってきた段階ですから、これからさらにメリットを見出していくところです」

 ちなみに2019年型RC213Vフレーム上部の両サイドに小さなカーボンパーツが備えられているが、これはカーボンパッチではなく、エアインテークダクトを中央に配置したことにより、ハーネスなどの補器類や伝送系のレイアウトが大幅に変わったため、それらのパーツを収納するために生まれたものだという。

【後編へ続く】

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