2012年に揃ってデビューしたコンパクトFRスポーツのトヨタ86/スバルBRZはデビューから丸8年が経過。細かく手を入れて、デビュー時とは別物のFRスポーツカーになり、スポーツカーのあるべき姿との評価が高い。
その86/BRZの現行モデルの終焉が着実に近づきつつある。すでにオーダー終了時期を明言しカウントダウンに入ったBRZに対し、共同開発車の86はまだ販売を継続するというが、86は今後どうなるのか?
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新型モデルの存在はすでに明らかになっているが、トヨタは86で何がしたいのかなどについて渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、SUBARU、ベストカー編集部
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BRZは7月20日をもって受注終了
スバルの販売会社のホームページには「BRZは2020年7月20日をもって注文受付を終了いたします。想定を上まわるご注文を頂いた場合、7月20日以前に注文受付を終了する可能性があります」という告知が掲載されている。
BRZの終了を明らかにした以上、購入を考えている人は、今後の動向が気になるだろう。仮に現行型で終わるなら、最終モデルを買っておきたい。
スバルは2020年7月20日をもってBRZの新規の受注を終えると発表。オーダー状況によっては早期終了もあるというから数は限られている
新型が登場するならこれを待ちたいが、登場時期は知りたい。
今は新車販売の約80%が乗り替えに基づき、新型の登場が遅ければ、今使っているクルマの車検を取って乗り続ける必要も生じるからだ。
そこでスバルの販売店に尋ねると、以下のような返答だった。
「BRZが2020年7月20日の受注で終了することは明らかで、納期は8月が最終になると思われる。ただし現時点(2020年6月中旬時点)で、次期型の予定はメーカーから聞いていない。登場する時は、半年前には何らかの情報が入るので、2020年中に次期BRZが登場することはない」
86は受注終了のアナウンスなし
トヨタ86もBRZと基本的に同じクルマで、生産もスバルの工場が受け持つ。BRZが終了するなら、同時期に86も終わるだろう。
そこでトヨタの販売店に、86の今後の動向を尋ねた。
「86が終了する話は、メーカーから聞いていない。現時点(2020年6月中旬)で受注は普通に行っており、納期は9月以降になりそう。現行型を終了させる話が出ていないから、次期型の情報も入らない」
トヨタは86 GT BLACK LIMITEDを販売。AE86トレノの特別仕様車をオマージュしたモデルで、モデルの終焉が近いことを示唆していたのかもしれない
スバルとトヨタでは、販売店の反応が異なるが、生産終了時期に大きな差は生じないだろう。
86も9月には生産を終える。それなのに86が日程を告知しないのは「現行型が生産を終えるなら次期型を待とう」と考えるユーザーも生じるからだ。買い控えに繋がるため、伏せておく必要もある。
次期モデルの存在は早々と明言
しかしBRZや86を買う人達は、両車が姉妹車であることを知っている。両車の生産や納期に関して、販売店の情報が食い違うと、不安に感じることもある。ある程度は足並みを揃えたい。
そして気になるのは、BRZと86が生産を終えた後の動向だ。これに関してトヨタとスバルは、2019年9月に新たな業務提携に合意したと発表した。
86とBRZはトヨタとスバルが共同開発したものの、発売後はそれぞれが独自路線の進化を遂げたところがすばらしい
その内容に「両社の強みを持ち寄り、最高に気持ちのいいAWDモデルを共同開発」、「トヨタ86とスバルBRZの次期モデルを共同開発」という事柄が挙げられた。
つまり次期86&BRZの共同開発は、すでに進められている。登場時期は、スバルの販売店でも聞かれたとおり2020年中は考えにくい。2021年に入ってからだ。
ベストカースクープ班は「2021年3月にフルモデルチェンジ」という情報をつかんでいる。
3月は決算期で販売現場が多忙をきわめるため、大量に売れる車種は1月、あるいは4月以降の発売が多い。86&BRZの場合、発表は3月に行い、納車を伴う発売は4月以降になる可能性もある。
いずれにしろ業務提携の合意内容として公表されているから、2021年前半には登場しそうだ。
ベストカースクープ班がつかんだ新型86のエクステリアデザイン。細部は違うもののキープコンセプトのデザインで登場となるもよう
トヨタの狙いは減価償却しつつ走りを熟成
次期86&BRZのプラットフォームは、サスペンションも含めて現行型を踏襲する。水平対向エンジンをほかのスバル車よりも車両の中央寄りに搭載するレイアウトは、前後輪の重量配分が優れる半面、ほかの車種には応用しにくい。
エンジンの搭載位置により、4WDの採用も困難だ。専門性の高いプラットフォームで、86とBRZはスポーツカーに属するから、販売が世界的に伸びない。
キープコンセプトとはいえ、サイドビューはリアの傾斜がなだらかになって伸びやかなイメージを与える(予想CG)
そこで現行型は2012年の登場ながら、償却も考慮すると、次期型も現行型と同じプラットフォームを使う。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2570mmで現行型と同じだ。
それでもプラットフォームの熟成という意味では注目される。特に86とBRZは運転感覚が微妙に異なり、実質的に1つの車種(姉妹車)なのに、トヨタとスバルがそれぞれの別の視点で走りの進化に取り組んできた。
両車とも頻繁な改良を経て解析も進み、熟知されたプラットフォームに仕上がっている。
次期86&BRZは、ボディサイズや外観デザインではあまり変わり映えがしないが、走りは相当に熟成されるだろう。
プラットフォームはじめ基本的なメカニズムをキャリーオーバーすることで大量に売れなくてもペイできる体制づくりをトヨタは目指す
新型には待望のアイサイト搭載
装備では安全面が進化する。従来型に設定のなかった衝突被害軽減ブレーキが採用されるからだ。
BRZにアイサイトが装着されない理由をスバルの開発者に尋ねると、「BRZでは、フロントウィンドの角度とステレオカメラを設置可能な高さの制約により、アイサイトの採用が困難だった」と述べている。
次期型ではこの点を見直してアイサイトを装着する。
アイサイトには車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなど、運転支援機能も備わるから、スポーツカーにとって大切な長距離移動時の快適性も向上する。疲労が抑えられるため、運転支援機能も安全性の向上に役立つ。
現行86/BRZの安全装備の立ち遅れは現代のクルマとして致命的。新型ではアイサイトをはじめ、各種運転支援装置を充実させて安全性を向上させる
エンジンは排気量アップの可能性が高い
エンジンはプラットフォームに合わせてFA型を踏襲するが、排気量を現行型の2Lから2.4Lに拡大する可能性がある。
ターボの装着も考えられるが(チューニングキットとしては86&BRZのターボも用意されている)、発熱の課題がある。大量に売られる市販車としては、排気量の拡大が現実的だ。
エンジンは現行と同じ水平対向4気筒DOHCとなるが、排気量は2Lから2.4Lにアップされる可能性が高い。それに伴い型式はFA20からFA24になる
今はSUVが世界的に流行しているから、トヨタとスバルの新たな業務提携にも「最高に気持ちのいいAWDモデルを共同開発」が挙げられた。生産規模も考えるとAWDモデルが焦点になりそうだが、86&BRZにも力が入るのは、クルマ好きにとって嬉しいところだ。
現行終了から新型登場までの空白期間
それなのにメーカーは、販売店に情報を伝えていない。
2020年7月20日の注文受付終了だけを知らされたスバルの販売店からは、「BRZは現行型を最後に、車種が廃止される可能性もある」という声も聞かれた。
現行よりもボリューム感が増したリアデザイン。ボディサイズは大きく変わらないが、タイヤサイズがワンサイズアップされるだろう
生産終了から次期型の発売までに半年以上の時間が開くのなら、予定や見通しレベルでもいいから、新型発売に向けたスケジュールを示すべきだ。そうしないと販売店は不安になり、その動揺はユーザーに伝わる。
86についても、BRZが終了を公表した以上、同様の扱いを受けるのは容易に想像できる。
買い控えを気にする気持ちもわかるが、86やBRZは、そもそもそこまで売れていない。スケジュールを明確にした方が、良心的で顧客満足度も高まる。
スポーツカーは縮小傾向の市場だから、ユーザー/販売会社/メーカーが互いに連携しながら盛り上げていきたい。情報も可能な限りオープンにすべきだ。
※現行モデルの価格はGR、GRスポーツを除く
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