日産リーフに、前々から噂されていたハイパワーバージョンが登場した「リーフe+」と名付けられた新グレードは、床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーをサイズアップ。総電力量を従来の40kWhから62kWhへと大きくすることで、満充電時の航続可能距離も400kmから570km(JC08モード)へと40%以上も増やしている。電気自動車のパワートレインにおいてバッテリーを強力にしたということは、モーター出力の上昇にもつながる。原動機は同じ「EM57」型モーターだが、その最高出力は110kWから160kWへとアップした。160~180kgも重量は増えたが、このパワーアップにより中間加速性能も向上したというのがメーカーの主張だ。
より実態に近いと言われるWLTCモードでの航続可能距離は458km。多くのドライバーにとって電欠(バッテリーの充電不足)を気にせず乗ることができるようになったといえる。電気自動車の新時代が拓けたという評価も納得できる。現行リーフはゼロエミッションだけでなく、「プロパイロット」に象徴される高度運転支援システムを搭載されていることもクルマの価値を高めているが、後続性能を上げたことで、そうしたメリットをユーザーが享受しやすくなった。
ただし、バッテリー総電力量が増えたということは満充電までにかかる時間も増えてしまう。全国に5860基以上あるという急速充電器を利用した場合、充電に要する時間は60分と公表されている。実際、電欠寸前まで使って充電するというケースは稀だろうが、急速充電器を60分独占してしまうというのは、現実的ではない。新旧のリーフユーザーであれば全国の日産ディーラーに置かれている急速充電器を日常的に利用しているだろうが、多くの場所で「一回の使用は30分までにして、次のお客様にお譲りください」といった文言が掲げられているのを見たことがあるだろう。そうしたマナーを守っていると、新しいリーフe+では30分をフルに使っても半分程度までしか充電量は回復できない。メーカーが60分の急速充電を謳ってしまった手前、すでに広まっているマナーをどのように書き換えるのかは現場対応としてのテーマとなるだろう。
普通充電についても注意が必要だ。メーカーの公表値では62kWhバッテリー搭載車を満充電にするまでには12.5時間を要すると記されている。しかし、これは普通充電器を6kWへとパワーアップとしているから。旧型リーフや40kWhバッテリー搭載車が標準装備するのは3kW普通充電器であり、リーフe+の6kW普通充電には専用の壁掛け型充電器が必要となる。これまで整備されてきた普通充電インフラで6kW普通充電はできないのだ。
ロングドライブが可能となった新しいリーフe+だが、たとえば400kmを一気に走ったとして、一晩で満充電まで復活させるためには急速充電器で60分の充電をした上で、数時間の6kW普通充電をする必要がある。目的地についたら充電器につないでおけば朝までに満充電されるというわけにはいかなそうだ。次世代の急速充電器(最大出力100kW)を利用すれば充電時間の短縮は可能だが、日本中に整備された急速充電インフラが次世代型に入れ替わるまでは時間もかかるだろう。それまでは、これまで同様にドライブの合間合間で継ぎ足し充電をするといった運用がベターとなりそうだ。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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