BMW M5 Competition × M550i xDrive
BMW M5コンペティション × BMW M550i xドライブ
アストンマーティン ヴァンテージ、100年先に繋がるマイルストーンを読み解く【Playback GENROQ 2018】
“M”の血統
5シリーズのマイナーチェンジに伴い、フラッグシップのM5とM550iも進化を遂げた。いずれもM社が手掛けるM5とM550iだが、その走りにはどのような違いがあるのか?
「両者ともデキは素晴らしい。M5はスーパースポーツの領域だ」
BMWのラインナップは縦にも横にも際限なく増えていくイメージがある。当然、守備範囲がかぶっているように思えるモデルもいくつかあるのだが、今回のG30型5シリーズの2台はその代表格といえるかもしれない。M5コンペティションとM550i xドライブである。
真正M派の人からは「M5は5シリーズじゃなくてMなの、エム!」という差別化の声が飛んできそうだが、それを言うならM550iだって一応BMW M社の作品なのである。あ、「一応」なんて言ったらそれはそれで反感買うかも。
今回のペアはつい先ごろ揃ってマイナーチェンジを受け後期型になったばかり。それなら直接バトルで決着を付けてみようじゃないか。
「100psに満たない出力差を『少ない』と捉える人がいても不思議ではない」
試乗前にスペックを調べたが今回は大した差異がないように思えた。外観の違いを作り出しているのは主にスポイラー類だし、V8ツインターボの排気量も4394ccで同じ。ギヤが8速AT、駆動は4駆という基本的な成り立ちも同一なのだ。
もう少し詳しく観察すればM5コンペはカーボンルーフだし、タイヤも同じ20インチとはいえ幅が違い、最高出力が違う。M5コンペのS63ユニットは625psを発生するが、M550iのN63は530psに留まっているのだ。それでも、100psに満たない出力差を「少ない」と捉える人がいても不思議ではないが。
ちなみに今回の5シリーズのマイナーチェンジでは、ADASやコネクテッドシステム関係が最新のものになっている。けれどそういったアップデートの逐一はBMW同士のバトルでは武器にならないので割愛させてもらうことにした。
箱根ターンパイク下の駐車場で2台と待ち合わせた。スナッパー・ロック・ブルーという夜の街でも映えそうな色のM5コンペは、芸能人オーラのようなものを纏っているように見えた。ブラックアウトされたグリルやスポークが細くてブレンボの8ポットキャリパーが丸見えになるホイールも見るからに値が張りそう。
「M550iは山道はもちろん、1日500km越えのロングドライブでも楽々こなせそうだ」
M5コンペが芸能人だとすれば、黒いM550iは芸能事務所の人、くらいの控えめな感じに見えた。普通の5シリーズと比べたらこれでもずいぶんと押し出しが強いはずだが、ステージ衣装のまま来てしまった感の強いM5コンペティションと比べると、陰と陽くらいの違いがある。
最初にドライブしたM550iはしかし、驚くほどの「幅」を見せてくれた。丁寧にスロットルを踏む限りMらしからぬ静粛さで、乗り心地も上々だ。一方ラグジュアリーなだけでなく速さも一線級で、530psを全開放すれば「公道でこれ以上の速さはいらない」と思えるだけの強烈な加速やボディサイズを感じさせない正確なドライバビリティが味わえた。M550iは山道はもちろん、1日500km越えのロングドライブでも楽々こなせそうだ。
「M5は壮大なワインディングや大きめのサーキットに的を絞ったクルマ」
ところが芸能人の方は、まったくケタが違った。「M5は5シリーズじゃなくてMなの、エム!」という冒頭のヤジは、いいところを突いている。ステアリング上の赤いMボタンでドMなドライビングモードを選ぶまでもなく、M5コンペは十分過激な走りを見せてくれた。図抜けたピークパワーや電制のアシ、4駆やデフのセッティング等々、M5コンペの走りを支配していそうなギミックは数多ある。だがその起点となっているのはフロントタイヤであるように思えた。M550iの245幅に対しM5コンペのそれは275もある。ある程度攻めていくと常識的なアンダーステアが顔を出しはじめるM550iとは対照的に、M5コンペは微塵もアンダーを感じさせない。ステアリングを切っただけ強引なくらいにハナが入り、すぐに「これは公道で試せるレベルじゃない」という結論に達したのである。
ともあれ強烈なフロントタイヤのグリップがあるからこそ、コーナーで積極的にスロットルペダルが踏める。すると賢いデフがギュッと効き、さらにスロットルが踏めてしまうという真正M特有のコーナリングの連鎖が確立されているのである。
少しだけ2WDモードも試してみたのだが、同時にDSCが切れてしまうし、ステアフィールも心もとなくなるので、サーキット専用モードなのだと理解した。そう、M5は壮大なワインディングや大きめのサーキットに的を絞ったクルマなのだ。
「バトルの結論としてはM5コンペ圧勝ということになるだろう」
M5コンペの圧倒的なポテンシャルを考えれば、1877万円という車両価格はリーズナブルだと思う。ちなみにM550iの車両価格は1319万円なので価格差は558万円。だがその差だって主だったパーツの価格を拾っていけば、ずいぶんと詰まっていくに違いない。
真正Mモデルの証である(といって最近アルピナにも供給され始めたが)型式がSからはじまるエンジンの特殊性も忘れてはならない。調べてみると最大1.3Gもの横Gに耐えるためにサンプを大型化しオイルピックアップも追加されているし、クランク回りも補強されている。ピストン横のオイル穴の数も倍だし、ツインスクロールターボの特性を活かすため燃圧の高いインジェクターも組み込まれている。S63とN63エンジンは共通のパーツを見つけるのが難しいくらいの別物なのである。
バトルの結論としてはM5コンペ圧勝ということになるだろう。スポーティなツーリングセダンという括りで考えれば、ディーゼルの5シリーズだってM550iのコンペティターになり得る。けれど80年代から続くM5の血統に忠実なM5コンペは、恐ろしいほど完成度が高く、孤高の1台だったのである。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 翔(Sho TAMURA)
【SPECIFICATIONS】
BMW M5コンペティション
ボディサイズ:全長4990 全幅1905 全高1475mm
ホイールベース:2980mm
車両重量:1940kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35R20 後285/35R20
燃料消費率:-(WLTCモード)
車両本体価格:1877万円
BMW M550i xドライブ
ボディサイズ:全長4975 全幅1870 全高1465mm
ホイールベース:2975mm
車両重量:1950kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530ps)/5500rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35R20 後275/30R20
燃料消費率:8.3km/L(WLTCモード)
車両本体価格:1319万円
【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
申込み最短3時間後に最大20社から
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