2008年、911カレラ、911カブリオレに続いて、997型911タルガが911シリーズ同様のマイナーチェンジを受けた。シリーズの中にあっては異端児的存在ではあるが、北米市場を中心に熱狂的なファンも多く、またポルシェ自身が「夢の911」としていることもうかがえる。では911タルガはこのマイナーチェンジでどう変わったのか。ここではイタリアの湖水地方をベースに開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)
タルガの登場により、ポルシェ911ラインアップの世代交代を完了
「このモデルの投入によって、かつてないほどの早さでラインアップの世代交代を完了させた」と、ポルシェ自らそう明言するのが、ここ数カ月で行われてきた911シリーズのマイナーチェンジだ。
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幅広ボディに4WDシャシを組み合わせるこのタルガ4シリーズのそうしたリファインのメニューも、すでに世に送り出されているカレラ4シリーズのそれに準じたもの。すなわち、911というモデルを象徴する強い記号性のひとつである水平対向6気筒エンジンは、直噴システムを備えた完全新開発による3.6Lおよび3.8Lユニット。組み合わされる2ペダル式のトランスミッションは「ティプトロニック」を名乗る従来の5速トルコンATから、7速のデュアルクラッチトランスミッションPDKへと積み替えられた。
リアエンジンレイアウトゆえに、そもそもポテンシャルの高いトラクション能力を補うというよりは、ハイスピード時のスタビリティをメインとした操縦安定性を2輪駆動モデルに対して上乗せする目的が主になる4WDシステムのコアとなるデバイスが、ビスカスカップリングから電子制御式の多板クラッチPTMへと置き換えられたのも、すでにリリースされているクーペ/カブリオレモデルの場合と同様だ。
前後バンパーやリアコンビネーションランプの形状モディファイに加え、そんな左右のリアランプ間を赤いガーニッシュで結んでワイド感を強調するのは、最新の4WDモデルのみに見られる特徴だ。
カレラ系とキャラクターが明確に分けられたタルガ
こうしてマイナーチェンジを完了した最新タルガで、クーペ、そしてカブリオレに続く「第三のボディ」としての最大のセールスポイントになるのが、従来型と同様1.54平方メートルもの面積を備える「全面ガラスルーフ」であるのは言うまでもないだろう。
トップ部分を電動スライド式とし、さらにその内側にやはり電動のサンシェードを備えたこのルーフシステムこそ「タルガ」ならではの開放感溢れる雰囲気を提供するキーポイント。
率直なところ、たとえルーフトップを開放しても「オープンエア」の感覚はカブリオレに及ぶべくもないが、一方でそんな状態でも髪の毛一本すら揺らさないほどのエアの流れのコントロールは、やはりフルオープンボディには真似できない事柄。外気との触れ合いを感じさせながらも実現したそうした「整流効果」の完璧さゆえに、実は髪の乱れを気にする女性ユーザーにも根強い人気を誇るのが911タルガ、というのは余り知られていないひとつの裏話だ。
そんな最新の911タルガシリーズの国際試乗会は、北イタリアの湖水地方をベースに開催された。そして、そうしたリゾート地を中心に設定されたポルシェ本社チームによるテストルートが、これまでに自分が経験したこのブランドのどんなイベントのそれよりも圧倒的な「低速ルート」であったことも印象的だった。
もちろんそれは意図的な演出であったに違いない。すなわち「タルガというのは911であっても決してサーキットやワインディングロードをギンギンに攻め込むモデルではなく、よりカジュアルに、そしてリラックスした走りを味わってもらうべく開発された911のファミリー」と、そうしたメッセージが聞こえるものであったということだ。
加えれば、そんなルート上に無数に現れる大小様々なデザインのランナバウト(ロータリー)通過に際しては、改めてPDKの動作の滑らかさを教えられることにもなったのだ。
ちなみに、ヨーロッパ市場に向けては6速MT仕様も用意されるこのモデルだが、日本市場には「3.6/3.8L両モデル共にPDK仕様のみの導入になる予定」というのが、インポーターであるポルシェジャパンによるコメント。
本来であれば本国にラインアップされる仕様はすべて選択可能でしかるべきというのが理想論ではありつつも、これまで紹介をしてきたようなタルガのキャラクターを踏まえれば、ことこのモデルの導入計画に関しては「それも大いにリーズナブルな設定ではある」とひとまず納得すべきだろう。
そんな最新の911タルガを、低速域がメインとなるルート上で走らせる。と、そこでの印象はもはや「カレラ4クーペとの違いは識別できない」と、そう述べて過言のないものだった。ボディ剛性や車両重量、そしてルーフトップ部分に重量物を設けたことによる走りのフィーリングへの影響は、少なくともそうしたシーンにおいては「差は明確には実感できない」と表現せざるを得ない。
ちなみに、この最新モデルではルーフシェードに従来よりさらに遮光性に優れた新素材が採用されている。そうした点でも、「スライディングルーフがクローズ時の耐候性や快適性は、さらに限りなくクーペに近付いたのが最新のタルガ」と言えるわけだ。
ただしただ一点、走りのテイストに関してクーペと異なったのは、3.8Lモデルでは標準、3.6Lモデルではオプション設定される電子制御の可変減衰力ダンパーPASMでスポーツモードをチョイスした際の足まわりのハード化が、明確に抑えられていたこと。実際、「スポーツモードでもまずは高いコンフォート性能の確保を狙った」のがタルガ系のセッティングであるという。ここでも、ボディ形態の違いによるキャラクターの演出がしっかり図られているというわけだ。
タルガ。このモデルは、ピュアなスポーツカーとして認知される911というモデルの中にあっては、たしかに異端児と言える存在なのかも知れない。が、実はそれは同時に「ぜひともガラスハッチ式構造を実現させたい」という、かのフェリー・ポルシェの思いを実現させた「夢の911」でもあるのだ。(文:河村康彦)
■ポルシェ 911 タルガ4 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1852×1310mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3614cc
●最高出力:254kW(345ps)/6500rpm
●最大トルク:390Nm/4400rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●タイヤサイズ:前235/40ZR18、後295/35ZR18
●0→100km/h加速:5.0秒
●最高速度:282km/h
※欧州仕様
■ポルシェ 911 タルガ4S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1852×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3800cc
●最高出力:283kW(385ps)/6500rpm
●最大トルク:420Nm/4400rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●タイヤサイズ:前235/35ZR19、後305/30ZR19
●0→100km/h加速:4.7秒
●最高速度:295km/h
※欧州仕様
[ アルバム : ポルシェ911 タルガ4/タルガ4S はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
天井一面ガラスというアイデアは今でこそメルセデスのセダンやレンジローバーにも採用されているが、ガラスルーフによって雨でもオープンエアー感覚というのは下手な中途半端にロールバーを残したなんちゃってオープンよりもよほど面白かった。クーペの基本的なラインを残した上で(厳密にはルーフラインは微妙に違うけど)この機能を持つタルガは傑作だったと思う。
ポルシェってやはりオープントップのイノベーターなんだなと改めて認識した。