もくじ
どんなクルマ?
ー リーフを名乗りつつも中身は純レーシングカー
どんな感じ?
ー 6台のみ生産された稀少車
ー 素直な操縦性と自然な操舵感
ー リニアなコントロール性は流石レーシングカー
未来はあるか?
ー スプリントレースには必要十分
どんなクルマ?
リーフを名乗りつつも中身は純レーシングカー
リーフの車名を冠しているが、カーボンモノコックを用いたシャシーにボディを被せたオリジナル開発の純粋な2座席レーシングカーである。そのリーフ・ニスモRCも市販リーフのFMCに応じて2代目となった。初代(RC01)同様にバッテリーやパワートレインを市販車から流用しているが、RC02への進化は市販仕様と比べものにならないほどだ。
注目は駆動方式である。RC01では2WD(MR)を採用していたが、RC02では4WDとなった。もっとも、4WDは主目的とは言い難い。4WD化の最大の要因はパワーアップ。簡単に言うと2WD用パワートレインを前後に配してツインモーター化したのだ。
元のパワートレインの性能向上もあり、最高出力はRC01の2.4倍となる約326ps、最大トルクは2.3倍の約65.3kg-m、バッテリー容量は2.6倍の62kWhとなった。なお、モーター駆動制御ユニットはツインモーターに対応してオリジナルで開発されている。
ツインモーターで気になる重量だが、RC01よりも300kg増。重量増を最小限に抑えるためにサブフレームのCFRPのボックス形状とし、前後を反転して用いている。また、センター部はRC01と基本設計を共用するが、バッテリー収納スペースの拡大等の変更が加えられた。
試乗コースは大磯ロングビーチ内の特設コース。ホテル等の施設も近隣にあるのに純レーシングカーを全開加速させられるのもEVならではだな……とさっそく乗り込んでみた。
どんな感じ?
6台のみ生産された稀少車
試乗コースはシケイン的クランクと定常Rのコーナーで構成。コース幅は高速道の1車線よりちょっと広い程度である。しかも運転できるのは2周。色々試すにはあまりに制限が多い。とはいえRC02は6台しか生産されず、日本と北米、欧州に各2台ずつ配車される。とても稀少なモデル。これでもかと安全率を上げたくなるのも納得できる。ちなみに車両に直接関わる生産コストは3000万円くらいとのこと。
ともあれ「全開加速!」。踏み込んだ瞬間から何の躊躇いもなく持てる最大トルクで加速する様はEV以外では有り得ない。ただ、少し「???」な感も。受け取ったデータでは0-100km/h加速は3.4秒。平均加速Gは0.8を超えるはず。モーターのトルク特性を考えるなら低速では1Gを超えてもおかしくない。実際には1Gを超える前にホイールスピンするわけだが、グリップに余裕がありすぎて、床までストンと踏めてしまう。
これについては試乗後に尋ねたのだが、安全を考慮して20%ダウンの出力制御にしているとのこと。全開モードでは不用意にアクセルを踏むと4輪ホイールスピンを起こすそうだ。ステアリングのD/N/R切り換えスイッチ下にあるセレクターでフルモードに切り換えることも可能と教えられたが、後の祭りである。まっ、知っていたとしても許可なく使うほど胡乱な人物ではないつもりだが。
素直な操縦性と自然な操舵感
このように事前にプログラムしておけばスイッチひとつでペダルストロークに対する特性を如何様にもできるのが電動の強味。今回の試乗では前述の20%ダウンの他に、前後輪の駆動トルク配分をコーナリング重視の Fr 45:Rr 55にセット。機械的な駆動力配分機構を持たないので駆動力配分はモーター出力の制限によって行われ、45:55の場合は前輪駆動モーターが20kWダウンの100kWに制限される。したがって、同トルク配分時の前後総合駆動出力は220kWととなり、この時点で50:50時よりも9%強パワーダウンしてしまう。
操縦性は素直の一言に尽きる。コーナリング能力の6~7割程度で走らせているのだから当然だが、ステアリングのキックバックや操舵感、操舵力等々がとても自然である。確かな接地感はレーシングカーらしいが、路面反力はそれほど大きくない。装着タイヤがミシュラン・パイロットスポーツというせいもあるのだろうが、ドライビングに必要な反応と感触を正確かつ適量に伝える。付け加えるなら、この試乗環境限定ながら加減速の駆動状態による操舵感の変化はあまり感じられなかった。
リニアなコントロール性は流石レーシングカー
ブレーキフィールもいい。フルブレーキング領域での踏力とストロークのバランス感が絶妙。じわっと制動を抜いてく時のリニアなコントロール性は流石にレーシングカーである。軽いタッチの制動ではそれほど大きな踏力を必要とせず、ここでも微妙なコントロールがしやすい。「操る」という点では街乗りでさえ難しくないだろう。
なお、この走行では回生ブレーキ制御はなされず、制動力は純粋に機械式のブレーキの力とのこと。電気任せでない「味付け」にもニスモのポテンシャルを感じられた。
グリップ限界付近のハンドリングは不明。コーナー半径とコース幅から加速しながらラインを拡げるような走り方はできない。定常円旋回と同様であり、加速すれば速度が上がった分だけラインは膨らむ。コーナリング限界内でも同じ。ただ、ステアを切り増せばラインを維持できるが、ドライブフィールではアンダーステアの部分だけが印象に残る。もっとも、舵角を若干深めに取った辺りでコントロールしやすいのが速さと性能安定では重要であり、そういったセオリーをきっちりと押さえているのは理解できた。
で、最終ラップの最終コーナーへ進入。コーナーの出口に向かってアクセルを踏み込む。「あれっ?反応が…」。まったく応答しない。ぱたぱたと全開全閉を何度も繰り返すが無反応。惰性でピットに向かったのだが。
未来はあるか?
スプリントレースには必要十分
突然の失速の原因は、通信系のトラブルによりフェールセーフが働いたためと。四つの監視系統のうちのひとつの信号が落ちたのではとのこと。データテレメトリー不調というわけ。上位カテゴリーのレースではテレメトリーを用いてエンジン特性の変更等も可能だが、この機能は電動と極めて相性がいい。
ペダルストロークや回転数(車速)に対するトルク特性を任意で設定できる。応答特性も同様である。もちろん、モーターの限界性能内に限定されるが、コースやドライバーに合わせて自由自在なのだ。この特性はピット側で設定し、車体側に送信される。ドライバーは設定されたモードの中から任意で選択が可能。前記した「20%カットの試乗モード」もそのように設定されたものである。ちなみに前輪駆動/後輪回生(制動)で収束性を、逆にして回頭性を高めるという特性も可能。ブレーキと機械式4WDでも可能だが、効率的にも制御精度的にも圧倒的に不利。RC02はそういったEVの運動性や高効率化を探るためのテストベッドでもある。
スーパーGTドライバーかつ同車の開発ドライバーでもある松田次生選手による袖ヶ浦フォレストレースウェイのラップタイムは1分10秒34。このペースで同サーキットや筑波サーキットの最大周回数を訊いたが、20周はいけるとのこと。ラップが遅くなればもっと伸びるとも。ならばスプリントレースには十分である。
高度な電子制御の塊。バッテリーの管理も含めればアマチュアには到底維持できないが、簡易型の廉価版でも出して、未来志向のザウルスカップでもやってくれないかな、などと勝手に妄想してしまった。
日産リーフ・ニスモRC02のスペック
日産リーフ・ニスモRC02
■価格 –
■全長×全幅×全高 4546×1942×1212mm
■最高速度 220km/h
■0-100km/h加速 3.4秒
■燃費(WLTCモード) –
■CO2排出量(WLTCモード) –
■車両重量 1220kg
■パワートレイン モーター
■最高出力 326ps
■最大トルク 65.3kg-m
■ギアボックス シングルスピード
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