もくじ
どんなクルマ?
ー 20年ぶりのモデルチェンジ
どんな感じ?
ー ジムニーらしさは変わらず
ー ラダーフレームに現代的な装備
ー オフロード走行へのシリアスさ
「買い」か?
ー 気持ちを掴んで離さない
スペック
ー スズキ・ジムニー・シエラのスペック
英国編集部、日本の軽スポーツに試乗 ホンダS660/ダイハツ・コペン 前編
どんなクルマ?
20年ぶりのモデルチェンジ
新しいスズキ・ジムニー/ジムニー・シエラが登場した。コンパクトで控えめな見た目に反する、実力車だ。もっとわたしの気持ちを伝えるために、エクスクラメーションマーク「!」を付けた方が良さそうだ。
新しいスズキ・ジムニーが登場した! この方が良い。
小さなオフローダーとして非常に稀な存在といえるジムニーの、フルモデルチェンジを触れない訳にはいかないだろう。今回のジムニーは、4代目となるが、初代が登場したのは1970年で、11年間販売された。1981年に2代目に置き換わり、17年後、3代目に生まれ変わったのは1998年となる。この年は、フォード・フォーカスが発売された年でもあり、フォーカスは現在既に4代目に進化している。
ただし、3代目が非常に長く製造されていたからといって、時代的な変化もあるから、必ずしも4代目が先代よりも大きく向上したという裏付けにはならないのが自動車。一方で、20年前の設計や技術と、現代とを比較することにも、やや無理があるかもしれない。
例えば、新しいジムニーにはアップル・カープレイが搭載されている。もちろん3代目にはない装備だけれど、iPhone自体、発売されたのは9年前だから当たり前。ほかにも多くの部分で刷新されているが、楽しみを与えてくれていた根幹部分は、馴染み深いもののまま。スズキの掲げる「唯一無二の、小型軽量な4輪駆動モデル」というコンセプトに変わりはないのだ。
ドイツの原野に足を踏み入れてみようじゃないか。
どんな感じ?
ジムニーらしさは変わらず
今回の試乗車は、普通車モデルのジムニー・シエラ。エクステリアデザインに関しては、3代目がやや古臭く見えるようになっていた中で、新しい4代目がレトロテイストなデザインをまとって登場したことが面白い。
新しいモデルはシャープでボクシーになりつつも、ジムニーらしい、丸いヘッドライトや独立したウインカー、フロントグリルなどは受け継がれている。小さな日本車でありながら、新しいメルセデス・ベンツGクラスの小型版のような雰囲気もある。
ジムニー・シエラは、先代譲りの小さなディメンションも維持している。全幅は45mm広く、全高は20mm高くなったが、新しいモデルはなんと30mmも全長が短くなっている。この小ささなのに。この全長の理由は、日本版ジムニーが該当する、660ccの排気量規制がされる軽自動車規格に合わせたことによる。
ボディサイズが小さいから、変わらず車内も狭い。運転席の足もとはやや窮屈で、テスト車両は左ハンドルだったため、アクセルペダルはトランスミッション・トンネルの横から立ち上がったように付いている。
後席はふたりがけのシートが備わるが、レッグルームは充分とはいえないし、ラゲッジスペースは後部座席が座れる状態だと、わずか85ℓ。後部座席を畳んでも337ℓにしかならないが、先代モデルから比較すれば53ℓも広くなっている。ちなみに、バックドアは横開き式となる。
ラダーフレームに現代的な装備
新しいボディの内側には、4代目となっても、ラダーフレーム・シャシーと3リンク・リジットアクスル・コイルサスペンション、4輪駆動システムが採用されている。さらにヒルディセント・コントロールや、運転支援システムとしてブレーキサポートなども搭載し、先代より遥かに優れたクルマに仕上がっているのは間違いなさそうだ。
エンジンは1.3ℓから1.5ℓユニットへ置き換えられた。ディーゼルエンジンのラインナップはなく、102psの最高出力を6000rpmで、13.1kg-mの最大トルクを4000rpmで発生。最高スピードは145km/hとなる。われわれの試乗車には5速マニュアルが搭載されていたが、4速ATも選択できる。
このスペックからも明らかなように、ジムニーは決して速いクルマではない。長めのシフトノブがつながった、やや荒々しい印象のあるマニュアルギアを駆使して、エンジンをしっかり回しながら速度を上げていく。
ホイールは15インチで、肉厚な195/80タイヤを履いているし、ボールナット式の電動パワーステアリングの組み合わせもあって、ダイレクトなフィーリングや、路面からのフィードバックは殆ど感じられない。しかし、短いホイールベースが、極めてダイレクトで機敏なドライビングを味わわせてくれる。また、本気度の高いサスペンションの期待を裏切らず、大きなバンプからの衝撃も上手に吸収してくれる。
車高が高いうえ、四角いボディに大きな窓が穿たれているから、視界は素晴らしい。そのかわり、高速域では風切り音がかなり大きいけれど。
多くのひとはジムニーを選ばず、別の軽快なコンパクトカーや高速道路も快適なクルマを選ぶのが実情。それに、レトロテイストなスタイリングとは裏腹に、そもそもジムニーはスタイル重視の都会派SUVとも違う。まさに本気のミニ・オフローダーであって、オフロード走行を楽しむためのクルマなのだ。
オフロード走行へのシリアスさ
試乗では、深い轍に険しい起伏、泥水地などを含む林間のオフロードコースも試したが、ジムニーは決して前進を止めることはなかった。2輪駆動と4輪駆動、4輪駆動のローギアを切り替えるスイッチの効果は確実だし、リジットアクスル・サスペンションは、どんな起伏でも柔軟に脚を伸ばす。
これらの走破性を最大限活かすために、アプローチアングル(フロント)は37°、ランプ・ブレークオーバーアングル(ホイールベース間)は28°、デパーチャーアングル(リア)は49°も確保されている。
オフロード走行へのシリアスさは、スズキが機能的とする、インテリアデザインに現れている。殆どが黒い部品で覆われたダッシュボードとスイッチ類は、大部分がプラスティック製で、ほかのモデルと共有する部分も少なくない。シートは見かけによらず快適。プレミアムな感覚はないが、優れた実用性は間違いなく、オフローダーとしてあるべき姿なのだと思う。
今回の試乗車、トップグレードのSZ5には、エアコンにスズキ製の7インチ・インフォテインメント・モニター、リア・プライバシーガラス、フロント・シートヒーターなどが装備されていた。ラグジュアリーとまではいかなくとも、現代的な機能もインテリアに備わっていることも、付け加えておこう。
英国での価格はまだ決まっていないが、先代モデルよりも上がるはず。しかし、1万6000ポンド(230万円)前後には収まるだろう。
「買い」か?
気持ちを掴んで離さない
ジムニーのレトロでクールなデザインは、とても魅力的だと思う。ただ、メルセデス・ベンツGクラスのような、都会派SUVの小型版を期待するのは間違い。エンジンはパワー不足だし洗練されているとはいいにくい。シフトチェンジは忙しいし、ステアリングフィールやハンドリングはリアリティに欠ける。インテリアも安っぽいし、リアシートは狭くラゲッジスペースも小さい。
確かにカッティング・エッジな、最先端なクルマではない。むしろ、それを目指してはいないのだ。上記に上げた至らない点は、翻って、ジムニーが目指した本物の実用的な小型オフローダーとして、理にかなったものだと思う。
このクラスにはほとんどライバルがいない、ニッチなモデルであることは明確ながら、ポケットサイズなオフローダーを求め、年間、英国では1300台ほどが売れてきた。新型ジムニーも、高い実用性と信頼性を兼ね備えており、決して数は多くはないにしろ、興味のあるひとにとっては、気持ちをしっかり掴んで離さないクルマだと思う。
この4代目ジムニーが21世紀にもたらしたもの。この低価格で、極めて高い走破性を持つ、小さな本格オフローダーが手に入ること。その魅力にどっぷり浸るのも悪くない。
スズキ・ジムニー・シエラのスペック
■価格 1万6000ポンド(230万円・予想)
■全長×全幅×全高 3550×1645×1730mm
■最高速度 145km/h
■0-100km/h加速 –
■燃費 14.6km/ℓ
■CO2排出量 164g/km
■乾燥重量 1090kg
■パワートレイン 直列4気筒1462cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 102ps/6000rpm
■最大トルク 13.2kg-m/4000rpm
■ギアボックス 5速マニュアル
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