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ウイリスMBからジープ・ラングラーへ 80年間の3世代を比較 自由のクルマ 後編

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ウイリスMBからジープ・ラングラーへ 80年間の3世代を比較 自由のクルマ 後編

大きな設計変更が施されたAMCのCJ-7

理由は定かではないが、第二次大戦中にウイリス・オーバーランド社のMBはジープというニックネームで呼ばれるようになった。ジープは戦争を通じて、欧州やアジア、アフリカにも広まった。

【画像】ウイリスMBとジープCJ-7、現行型ラングラー 最新のPHEV版コンパスも 全75枚

終戦までに、同社が生産したMBは36万8000台以上。フォードも、27万7000台をライセンス生産している。多くが戦闘で破壊されたが、生き残ったMBも無数に存在した。

その後、ウイリス・オーバーランド社はMBの民間向け車両を計画。1945年にジープCJ-2Aが発売される。基本的にはMBの設計に改良を加えたもので、スペアタイヤに大きなヘッドライトなど、使いやすさを高めていた。

同時にMBは陸軍向けの生産も継続しており、同社はオフロード・モデルでの成功を掴んでいた。好調を追い風に、SUVの原型といえるワゴニアや、ピックアップトラックのグラディエーターなど、モデルラインナップを拡大していった。

1950年、ウイリス・オーバーランド社は「ジープ」の商標登録を取得。ところが経営的には失敗し、カイザー・モーター社へ買収されてしまう。

1963年以降はカイザー・ジープへモデル名が改められるが、再び経営難に陥り、1969年にAMC(アメリカン・モーター・コーポレーション)社が買収。20年以上大きく変わらなかったジープへ大きな設計変更を施し、1976年にCJ-7型を発売した。

CJ-7型ではホイールベースが伸ばされ、車内空間を拡大。トランスミッションにオートマティックが追加されたほか、スチール製ドアとプラスティック製ルーフがオプションで用意されている。

ラングラーへ一新しクライスラー傘下へ

スタイリングやレイアウトなどはウイリスMBと重なる部分も多いが、軍用車両的なイメージはCJ-7型から消えていた。質実剛健さよりも、アウトドアの娯楽側にシフトしている。

運転席へ座ってみると、ダッシュボードに特大のメーターが並び、フォントが可愛らしい。シートは明るいブランのレザー張り。1970年代のアメリカを、あちこちから感じ取れる。

先に向けて細くなる、丸くカーブしたボンネットの眺めはウイリスMBに通じる。それでも、だいぶ乗用車ライクだ。写真栄えもするだろう。

発進させると、CJ-7型の気楽さにうれしくなる。ステアリングホイールの手応えは柔らかく、オフロードタイヤのおかげで感覚も薄い。乗り心地は落ち着きに欠け、舗装の小さな段差で跳ねるように揺れる。

オンロードでは、サスペンションは柔らかすぎる。ゴツゴツした岩が露出したような路面がジープのすみかだが、実際はアスファルト上で乗られることも多かった。

そんなユーザーの意見を聞いてか、1986年にAMC社はCJラインの生産終了を発表。YJ型のラングラーへモデルチェンジを図った。

コンパクトなボディに高いオフロード性能を備えつつ、乗用車に近い快適性と実用性が追加されていた。名前を変えるのに、充分な進化といえた。初期のラングラーはCJ-7型と基本設計は近かったが、メカニズムは全面的に一新されていた。

しかしラングラーの発表から間もない1987年、AMCをクライスラーが買収。オフロード・ブランドとして成功していたが、やはり経営は難しかったようだ。

望み通りの場所へ走れる大きな頼もしさ

一方でラングラーは順調に人気を伸ばし、バリエーションも拡大。クライスラーの成長もアシストするほど。同社は1998年にダイムラーと合併するが、10年も立たずに解消。2009年にクライスラーは倒産するものの、フィアットがジープ・ブランドを救った。

セルジオ・マルキオンネ氏がモデルラインナップを活性化させ、ラングラーを中心的な位置に据えた。走る場所を選ばない、ブランドの核として。

今はステランティス傘下にあるジープだが、いかにもアメリカ的なイメージは薄れていない。80年に及ぶ歴史を有する、ヘリテイジ的な佇まいすらある。

2021年、ジープはラングラーに80thアニバーサリー・エディションを設定。4代目のJL型へ進化したラングラーへ、源流のウイリスMBを彷彿とさせるボディカラーと細かな装飾が施された。

最新のラングラーは快適。座り心地の良いシートに、温風を勢いよく吐き出すエアコンも付いている。アルミニウム製のドアとルーフが、乗員を雨風から守ってくれる。

乗り心地も良い。サスペンションは洗練され、CJ-7型と比べても遥かに優れている。ラジオから流れる音楽を聞きながら運転していると、ウイリスMBとの共通点は殆ど感じない。目を細めて、記憶を重ねてみても。

しかし、通じる要素があることも間違いない。それは、クルマから伝わる自由な感覚。望み通りの場所へ向かえるという、大きな頼もしさだ。

これこそ、ジープが80年以上生き抜いてきた最大の強みでもある。これから先も、世代交代を重ねることだろう。

ウイリスMBとジープCJ-7、ラングラー 3台のスペック

ウイリスMB(1941~1945年/北米仕様)

英国価格:約987ポンド(新車時)
全長:3360mm
全幅:1575mm
全高:1771mm
最高速度:104km/h
0-97km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1655kg
パワートレイン:直列4気筒2199cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:60ps/4000rpm
最大トルク:14.5kg-m/2000rpm
ギアボックス:3速マニュアル+2速トランスファー

AMCジープ CJ-7(1976~1986年/英国仕様)

英国価格:約2633ポンド(新車時)
全長:3759mm
全幅:1740mm
全高:1720mm
最高速度:120km/h
0-97km/h加速:17.2秒
燃費:10.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1220kg
パワートレイン:直列4気筒2471cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:88ps/4020rpm
最大トルク:17.3kg-m/2400rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ジープ・ラングラー・アンリミテッド(JL型/英国仕様)

英国価格:5万7050ポンド(約884万円)
全長:4882mm
全幅:1894mm
全高:1848mm
最高速度:159km/h
0-97km/h加速:7.6秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:252g/km
車両重量:1822kg
パワートレイン:直列4気筒1995ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:272ps/5250rpm
最大トルク:40.7kg-m/3000-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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