この記事をまとめると
■フェラーリF40にはサーキット走行にフォーカスした「コンペティツィオーネ」が存在する
「F1ドライバーでも雨では乗りたくない」「日本の公道で300km/h走行」! 伝説のフェラーリF40とは何モノだったのか?
■大型スポイラーやワイドフェンダーなどその出で立ちはまさにレーシングカーそのもの
■3リッターV8ツインターボはタービン大型化で最高出力も302馬力アップの780馬力
過激で凶暴なF40をさらにスパルタンにしたレーシングF40
フェラーリが、同社の創立40周年を記念して、1987年に発表した「F40」は、現在でも多くのフェラーリスタにとって憧れの存在ともいえる一台だ。その直接の理由となっているのは、F40がフェラーリの創業者であるエンンツォ・フェラーリ自身が生前最後に開発を直接指示したモデルであること。そして、また過激・凶暴という言葉こそが常套句となるスパルタンな走りにこそある。
だが、F40にはそれ自身をも超えるさらなる進化型が存在していた。「F40LM・カスタマーバージョン」、あるいは「F40コンペティツィオーネ」とも呼ばれる、サーキット走行にフォーカスしたモンスターマシンがそれだ。
ちなみにこの両モデルは、フェラーリでは同一のモデルとして扱われる。ここではコンペティツィオーネの車名を使うことにしよう。
F40コンペティツィオーネがオフィシャルデビューを飾ったのは1991年、東京モーターショーでのことだった。すでにベースとなるF40の誕生からは約4年が経過していたが、新たにコンペティツィオーネのサブネームが付されたこのモデルの存在感は圧倒的で、それはもちろん世界のフェラーリスタの目を強く刺激した。
実際にフェラーリが何台のF40コンペティツィオーネを生産したのかは、15台や19台など諸説あるが、いずれにしてもそれはフェラーリによって選ばれた、特別ななかでも特別なカスタマーにのみ販売されたことは想像に難くない。
永遠で究極なスペチアーレ「F40コンペティツィオーネ」
F40コンペティツィオーネのエクステリア、そのアピアランスはまさにレーシングカーのそれだ。ボディの前後には大型のカーボン製追加スポイラーが与えられ、フロントカウルにはラジエター冷却を終えたあとのエアを効率的に排出するためのエアアウトレットを装備。ヘッドライトもリトラクタブル式から丸型4灯の固定式に変更され、さらにボディの各部には冷却用のエアインテークが多数新設されている。
フェンダーがワイド化されていることは、フロント側ではドアパネルとの間に設けられたスリットの幅でそれを認識することが可能。ウインドウがプレクシグラスに変更されていることや、OZ製17インチ径ホイールとスリックタイヤの組み合わせなども、F40コンペティツィオーネならではの独自のディテールだ。
ドライバーズシート側のサイドビームを跨ぎ、フルバケットシートに身を委ねると、周囲に広がるのはスタンダードなF40以上にスパルタンな景色だ。正面にはマルチディスプレイがレイアウトされ、その視認性は抜群。
5速のドグミッションを操作するためのシフトノブはこれも軽量なデルリン材を使用したもので、走りに関連する以外の要素は、およそこのF40コンペティツィオーネのキャビンのなかにはない。
ミッドに搭載されるエンジンは、F120B型と呼ばれるもので、2936ccのV型8気筒DOHC+ツインターボという構成に変更はない。
ただし、組み合わされるIHI製ターボのタービンやインタークーラーはさらに大型化され、最大過給圧も1.1バールから2.5バールへと引き上げられたため、最高出力はスタンダードモデル比でじつに302馬力アップの780馬力という数字になった。
さらに、車重も同様の比較で1114kgから1050kgにまで軽量化されたこともあり、その運動性能は大幅に向上している。参考までに最高速は、フェラーリの公称値によれば370km/hとされる。
フェラーリ、そしてスポーツカーレースにおいて、フェラーリのセミワークス的存在であったミケロットとの共同開発によって誕生したF40コンペティツィオーネ。それは永遠に究極のスペチアーレとして語られる一台であることは間違いないだろう。
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