基本的にはヴェイロンの大改良版
丁度1か月前、アンディ・ウォレス氏とドニントン・パーク・サーキットのピット裏ですれ違った。筆者が挨拶すると、笑顔でうなずいてくれた。だが、その時は名前がすぐに出てこなかった。
【画像】21世紀の最速モデル ブガッティ ヴェイロンとシロン 派生版のディーヴォも 全104枚
レーシングドライバーの彼は、ル・マン24時間レースでの優勝経験を持つ。そして、最速の量産モデルを運転した男でもある。
2019年8月、フォルクスワーゲンが保有するドイツ・エーラレッシエン・テストコースで、ウォレスは時速304.77マイル、490.5km/hまで加速した。ブガッティ・シロン・スーパースポーツ 300+で。
このシロン・スーパースポーツ 300+の量産版は30台の限定生産で、すべてが完売済み。ただし、その最高速度は速すぎるという理由で欧州では認証を得ていない。439km/hでリミッターが掛けられている。
とはいえピュアスポーツでも、量産版のスーパースポーツでも、ブガッティ・シロンが2010年代の最速量産モデルであることに違いはない。標準のシロンの最高速度が420.0km/hに制限されていたとしても、桁違いに速いことは明らかだ。
ブガッティ・シロンが発表されたのは、2016年3月のジュネーブ・モーターショー。基本的にはヴェイロンの大改良版といえ、W型16気筒エンジンの構成や排気量、トランスミッション、シャシー構造などに目立った違いはない。
0-400km/h加速32.6秒、400-0km/h減速9.4秒
しかし、より高い速度を追求し、エンジンは大幅にパワーアップ。1201psのヴェイロン・スーパースポーツ用ユニットをベースに、クランクとコンロッドを強化。4基のターボも大型のものに変更されている。
一般的に、ターボを大きくするとターボラグも増えてしまう。だが、3800rpm未満ではツインターボとして動かし、それ以上の回転域ではクワッドターボとすることで、最小限に抑えることを可能とした。
目指す速度域が高くなったことに合わせ、ブレーキも大径化。ヴェイロンから前後ともにブレーキディスクは20mm直径が大きくなり、フロントが420mm、リアが400mmとなった。キャリパーはフロントが8ポッド、リアが6ポッドだ。
スタイリングはイチから描き直され、Cのラインを模した大胆なボディサイドの造形が特長。その曲線に合わせて巨大なエアインテークが口を開き、エンジンを冷却させている。
ボディはカーボンファイバー製で、ねじり剛性は5万Nmの力で1度歪むという強靭さ。曲げ剛性も凄まじく、1tを加えて0.25mmしか変形しないという。
果たして、シロンの能力は圧倒されるものとなった。最高出力は1500ps/6700rpm、最大トルクは162.8kg-m/2000-6000rpmを達成。一般的な乗用車の10台分に当たる。
その能力を検証するために雇われたのが、元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤ氏。ブガッティのテストコースで、0-400km/h加速32.6秒、400-0km/h減速9.4秒という、驚愕の数字を残した。
リミッターカットで490.5km/h
ところが、ブガッティはこの数字へ満足しなかったらしい。更に能力を高めたシロン・スーパースポーツ 300+を発表する。
スタイリングを担当したのは、ブガッティのフランク・ヘイル氏。タイヤメーカーのミシュランと、自動車エンジニアリング企業のダラーラ社とも手を組んだ。
ボディは空力特性を改善するため、テール部分を約250mm延長。空気抵抗を減らす幅の細いリアウイングと、レーザー光で制御される車高調整システムも採用された。エンジンはチューニングを受け、1600psまで最高出力は引き上げられた。
そして、最高速度の更新に挑んだのがアンディ・ウォレス氏。リミッターは外され、ロールケージと複数の計測機器が搭載されたマシンで、時速304.77マイル(490.5km/h)を達成したのだ。
今回、トム・ハートリー・ジュニア社にお持ちいただいたのは、通常のブガッティ・シロン。狂気のすべてのパワーを解き放てる、2本目の鍵はお預けだった。とはいえ、試乗した小さなプレストウォールド・サーキットでは、その鍵があっても無意味だろう。
運転席に腰を下ろすと、筆者が見た中で最も豪華なステアリングホイールが迎えてくれた。フェラーリのマネッティーノ風コントローラーが、スポークの下に追加されている。エンジンのスタートスイッチは、レザーで仕立てられたセンターハブの下側にある。
センターコンソールは、ヴェイロンと同様にシンプル。エアコンの操作ノブが優雅に並び、デュアルクラッチATのシフトノブが手前側で存在を主張している。
ヴェイロンより4基のターボを召喚しやすい
シロンは間違いなく速いが、表現しようがない。既に息を呑むほど速いヴェイロンより500psもパワフルなのだから、それより上の言葉が見つからない。
3速に入れ、50km/hからローリングスタートでフルスロットルを与えてみる。リアタイヤが僅かにスピンしかける。シフトアップを数度こなすと、ストレートエンドまでに240km/hは超える。コースの距離に限りがあって良かった。
運転した印象としては、ヴェイロンより4基のターボを召喚しやすい。更に高まった最高速度に応じた、低回転域でのたくましさがある。
何より心が打たれたことは、シロンの突出した能力を匂わせるようなドラマチックさが、まったくないこと。容赦のない怒涛のパワーが、機械的な存在感が薄いまま、さらりと放たれるのだった。
1920年代からの100年間で、最高速度はヴォグゾール30-98 OEタイプの162.0km/hから3倍以上へ高められた。2020年代に名を残すのは、純EVなのだろうか。
内燃エンジンの頂点といえるW16気筒を積む、ブガッティ・シロン・スーパースポーツ 300+。2010年代の極められた自動車技術を象徴するものとして、これ以上ないスーパーカーだといえるだろう。
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ 300+(2019年/欧州仕様)のスペック
英国価格:310万ポンド(約4億9600円)
生産台数:30台
最高速度:490.5km/h
0-97km/h加速:2.3秒
車両重量:1138kg
パワートレイン:W型16気筒7993ccクワッド・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1600ps/4200rpm
最大トルク:162.8kg-m/2250-7000rpm(シロン・スーパースポーツ)
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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